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電気使いは今日もノリで生きる  作者: 歩海
第9章 みらいへ
309/317

『世界』の固有能力

???


「ふぅ…」


『世界』が発動する。そしてそれと同時に僕に大量の情報が流れ込んでくる。新しく『感知』魔法を使う必要なんて全くない。


「これが…僕の『世界』の固有能力」


効果としては『感知』というよりは『予知』に近い。仕組みは簡単で自分の『世界』の範囲内にいる存在の頭に流れる電気回路を読み取って相手がどんな行動をしようとしているのかを知ることができる。電気が流れるのはほんのわずかな瞬間なので相手が動こうと感じたらその次の瞬間には僕の頭にも…いや、ほぼ同時に流れ込んでくる。情報の量に押し流されそうになるけどそれはまあ『電気鎧(armor)第三形態(third)』とかを駆使していけばなんとでもなる。相手の動きの先を読む力、それが僕の『世界』


「さあ、お前に僕の予知を超えられるかな『針金(needle)』」


さっきは野生の勘とやらで避けられてしまったけれどももう、避ける先を読んでしまえば当てることは簡単だ。ケルベロスの後ろの足に砂鉄を突き刺す。苦しげな悲鳴をあげるが…それを無視して追撃。


「『放電(thunder)』『地雷(trap)』」


電撃を当てて押しきろうかと思ったけれどそれよりも動きを止めた方がいいだろうと思ったので魔法を切り替える。ああ、全部の魔法が避けられることなく当てることができるとか…なんか気持ちいいな


「ギャン」

「動きが止まったのなら…今度こそ『解除』」


そして爆発させる。あとはこいつがどこまで生命力があるのかが問題なわけだけど…ひとまず上から攻撃しよう。地面を強く蹴って爆発させて高く飛ぶ。そのまま生み出した砂鉄の剣でケルベロスの首を叩っ斬る。


「ひとつだけじゃダメってことか」


でも、まだ普通に生きている。首を切られても生きていられる犬なんて見たことないから多分三つの首を全て斬り落とさないといけないのだろうな。返す力でもう一つ切ることに成功したが最後の顔を切る前に麻痺から回復してしまい、そのまま吹き飛ばされる


「麻痺からの回復はえー」

「ギャンギャン」

「はいはい、吠えるな」


頭を二つ切られて頭にきたのか直線的にこちらに襲いかかってくる。どうやら相当頭に血が上っているみたいだ。それならそれで好都合


「『電磁砲(レールガン)』」


砂鉄の塊を正面から突き出せばそれを頭から受ける。それが致命傷となったのかケルベロスはそのまま地に落ちた。死んだケルベロスの死体には大きな穴が一つ空いていた。思ったよりも苦戦してしまったけれども…まあ誤差の範囲だろう。これからクレアのところに向かうのに『(metamo)(rphose)』が使えないっていうのは…まあ僕の命を気にしないで使えば問題ないか。


「おおおおお」


上から歓声が聞こえてきたので見てみれば囚人たちが声をあげていた。はぁ、むしむし。それよりもこの崖を登らないといけないわけだけど。


「『創造(creat)』」


崖の中にある砂鉄をつき出さしてそれを足場にする。最初だけ助走をつければいけそうだな。もう一度地面を強く蹴って飛び上がる。そしてそのまま砂鉄をどんどん踏んで崖を登っていく。最後の方、危なかったな。『世界』が切れたら砂鉄が力を失ったように霧散していった。ま、でもこれで崖を登ることには成功した


「あんたすげえな」

「これからの計画とかも考えているのか?」

「…」

「おい!」


全部無視して僕は海岸の方へと向かう。こういう輩は無視するに限る。僕が勝ったから良かったもののあのままケルベロスに負けていたらこいつらも死んでいたかもしれないっていうのに呑気な奴らだ。


「無視することないだろ」

「俺たちは同じ囚人…脱獄犯…仲間だろ?」

「そう」

「お前そんなに強いのになんで捕まっちまったんだ?」

「…魔力切れ」

「そうか」


魔力が切れてなかったら…いや、むしろ捕まって良かったのかもしれない。白虎が僕に接触してきたのはおそらく僕が捕まってしまったからだろう。そういう意味でも早くこの世界の真実を知ることができて良かったかもしれない。…それがいいことなのか悪いことなのかは置いておいて


「どうするんだ?」

「…いるんだろ?『玄武』」

『せめて人払いはして欲しかったがな』

「緊急事態だ…別にいいだろ?」

「うわあああああ」

「亀が…飛んでる」


やっぱり来てくれたか。てかちょっと期待してた。お前僕に借りができたって言っていたもんな。世界の危機でもあるわけだし協力してくれよな?


『別に構わないが…他の奴らもか?正直いやなんだが』

「…お前の好きにしろよ。僕は知らない」


僕の言葉に後ろからブーイングが飛んでくる。なんで僕がこいつらの面倒を見なければいけないんだよ。というか忘れていたけどこいつら囚人だよな?悪いことをして捕まった奴らだよな?別に助ける必要がないと思うな


「お前…俺たちを助けてくれるんじゃないのかよ」

「僕が一度でもそんなこと言った?」

「俺たちの牢屋を壊しておいて!?」

「囮役として」

「ふざけんなよ」


はいはい。こいつらもここで縛っておくか?いや、こいつらにそんな価値はない。ただ、問題があるとすればこいつらも『玄武』に乗りたいとか言い出したことだよな。面倒くさい


『罪人を我の背に乗せるわけにはいかない』

「この辺りの海に危険な生き物は?」

『特にいない…はずだ。この先をずっと泳いでいけばそのうち陸に辿り着こう』

「なら、問題ないね」

「はあ?」

「これから僕が向かう先で…君たちの安全は保障できない」

「…」


脅しを含んだ僕の言葉に誰も何も言い返してこない。こいつら僕が安全なところに逃げるとでも思っていたのだろうか


「と、途中で」

『悪いがそれはできない…時間がない』

「だね」


そして僕は『玄武』の背中に飛び乗る。うわっ、思ったよりも安定しないな。そこまで大きくもないし


『一応聞く、貴様ら付いてくるか?命の保障は出来んぞ』

「ど、どこに向かうっていうんだ?」

『魔王のところだ』

「…」

『そして今その魔王の討伐隊が編成されておる。そんなところに向かう』

「マジかよ」


騒ぎ出す。まあ、確かに僕もこの囚人たちの立場だったら付いて来たくなる気持ちもわからなくもないし、攻めるのも筋違いなのかもしれないかもね


『さあ、どうする?…今なら安全に海に落としてやるぞ』

「じゃ、じゃあ…それで頼む」

『ああ』

「うわあああああああ」


囚人たちがうなづいた瞬間に玄武は全て叩き落とした。うわぁ、容赦ないな。


『何を言っている…さっさと向かうぞ』

「だな」


玄武に乗ったまま、僕たちはクレアのところへと向かっていく。てか玄武って空を飛ぶことができたんだな…


『少しだけなら飛べるが…すぐに水にはいるがな』

「そっか」

『…』

「『白虎』から聞いた」

『そうか…それで、お主はどうする?』


玄武が聞いてくるが、僕の答えはもう、決まっている




「火」の国、とある孤児院にて…今はもう廃れて…廃墟となってしまった。その横、崖の前にある一つの墓、そこに一人の少年が花を添えていた


「…意外と早かったね」

「全部…聞いた」

「そっか」


クレアは僕の方をむいて笑う。全部わかった上で見ればわかるクレアの覚悟を


「それで…どうしてここに?」

「決まってるだろ…お前を、止める!」


玄武にも聞かれた質問、その答えをまた、クレアにも伝える。僕は、お前を絶対に…止めてやるよ!

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