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電気使いは今日もノリで生きる  作者: 歩海
第9章 みらいへ
307/317

脱獄開始

本日二話目の投稿になります

???


「わかったよ。それで?時間稼ぎといっても具体的に何をすればいいんだ?」


一口に時間稼ぎだとしても、そのやり方は沢山ある。例えば人々のヘイトを僕に集めるとか。他には…思いつかないな。クレアを一時的に倒して隠れるように言うとかはさすがにダメだろうし


「今、火の魔王を倒そうと出発した集団がいる…主に学生たちだが、そのものたちを止めて欲しい」

「ああ、文字通り時間稼ぎってことか」


でもそれって稼げる時間はほとんどないに等しくないか?僕が稼げる時間とかせいぜい1日だぞ?それも昼過ぎに戦って夕方になったからその日はやめておこう的な。それから後はまあ魔力を消費したから休もうとかそういう感じの奴


「それは違う…今、火の魔王は育った孤児院にいる…もう廃れてしまった孤児院だがな」

「助太刀すればいいのか?」

「そういうわけでもない」


なら…僕に何をして欲しいって言うんだろうか。助太刀でもなく、邪魔でもなく


「おぬしには…そこで代わりに義勇軍と戦って欲しい」

「…まじかよ」


それってもはや時間稼ぎというよりは身代わりに等しいと思うんですけど…でもまあそれしかないよな。向こうも魔王が誰かなんてわかんないだろうし僕が身代わりになればその分クレアはしっかりと強くなることができる。イフリートがいるんだ。そこらへんのことはなんとかできるだろう。


「辛い道になる…当然断ってもいい。火の魔王が敗北を感じて逃げてくれるのならそれでも構わないのだがな」

「それはないだろうな」

「…まあ、だろうな」


クレアの性格からして素直に引いてくれるようにも思えないんよな。あいつに「ここは僕に任せてお前は逃げろ!」って言ったらは?って言われてそれでおしまいのような気がするな。


「まあ、当初に思い描いていたようにあいつを止めればいいだけか」

「…そうか」

「そういえばあの先はどうなっている?」

「ああ、あの扉の先か。確かここの番犬がいるだけでそれを超えることができれば問題ない」

「わかった」


気になっていた扉の先のことを聞けたらこれで充分だ。こんなので大丈夫かと思うが僕は今魔力封じの手錠をはめられている。だから問題ないのだろう。一方でこれで話は終わりとばかりに白虎も少し離れた位置に戻る。タイミング良くあの王様が戻ってきた。あぶねぇギリギリかよ。


「おい、貴様の死刑執行が決まったぞ」

「ああ、そう」

「は?貴様…少しは恐怖しないのか?」

「しないね」


だって…僕元々ここから脱走する予定だったし。どんな刑になろうとも気にする必要なんてないし


「どういうつもりだ?貴様その腕にはめている魔道具の存在を忘れてないか?貴様は魔法を使うことができないのだぞ」

「本当に?」

「え?」


確かに僕の両手には魔力封じの腕輪がはめられている。これをつけられているから僕たち囚人は鉄格子だけの牢屋に入れられているんだろうな。魔法が使えなければ逃げられることなんてない。それは当たり前の話だろう。


「貴様、何を企んでいる?」

「いや…そんなわかりきったことを聴いちゃう?」


脱走以外何もないでしょうに。それ以外を考える囚人っているのか?というかそもそもこいつらは知らないんだろうな。魔法は魔法でも…お前らが考えていない魔法があるなんて


「『電気の世界(world)』」

「なに!?」

「ああ」


やっぱり発動した。『世界』ってちょっと特別な魔法だから使えるかもって思ったら使えたな


「まあ我ら…引いてはこの『世界』と契約した魔法だからな…魔力封じなど効かん」


そもそも『世界』自体に魔法封じの効果があるからね。だから打ち消しあって…ただの枷となったら僕は他の魔法を発動させることで普通にこの枷を壊すことができる。てか今お前平気で喋ってたけどいいのか?聞こえていなかったみたいだからいいけどさ


「ま、まじか。おい、お前こいつをなんとかしろ」

「はっ!」


こちらをちょっと不安そうに見なくても大丈夫ですよ…顔は見えないけどさ。


「『(metamo)(rphose)』」

「!?」

「そんな魔法も使えたのか」


鉄格子も、白虎が攻撃してくる剣も全て自分の体を電気に変換させることで僕はその場を乗り切る。


「ひいいい、お前なんとかしろ」

「仰せのままに」

「誰がそっちに逃げるかよ…ついでだ『放電(thunder)』」


陛下と白虎は入り口の方を固めているけど…誰がそっちにいくかよ。僕は反対の方に向かって走りだす。あの怪しげな扉の向こうに行く。ここがどこなのかはよくわかっていないけどそれでも進むしかない。そのついでに僕は他の鉄格子を全て壊す。そうすることで他の囚人たちが自由に出入りすることができる


「おお!鉄格子が」

「あいつが壊したのか」

「でも俺たちは魔法が使えねぇ」

「ああもう、うるさい『針金(needle)』」

「手錠が…」

「あ、あの野郎は一体何を」

「落ち着いてください。私がすべて抑えてみせましょう」


後ろから騒音と…時々悲鳴が聞こえてくる。ちらっと振り返ってみれば白虎が他の囚人たちをことごとく返り討ちにしているのが見えた。うわぁ。あまりの強さにこっち方向に逃げてくる囚人たちもいるぐらいだ


そして僕はついに扉へとたどり着く。だって白虎となんて戦いたくない。さすがにわかる。あれがどれだけ化け物なのか。麒麟をぶっとばしたいけど…それはしばらく無理そうだ。


「おい、お前らも協力してくれ…向こうには」

「構うかよ」


何か止めるような声が聞こえてきたけどそれをすべて無視して僕は突っ込む。番犬って言ったって大したことないだろ。せいぜい大型犬ぐらいの大きさの犬が何匹か…いや何十匹かいるんだろうな。それくらいで足踏みするような僕じゃないって


僕は扉を開けて飛び込んでいく。扉の先は闘技場のようになっていて…少し開けた空間になっている。闘技場みたいなのは少し不穏だな


「うわああああああ」


後ろを振り返ってみれば囚人たちがこちらに向かって飛んできていた。は?あの野郎僕の脱出を邪魔するつもりかよ。慌ててその場を飛び退けば囚人たちがどんどん投げ込まれてくる。そして向こうから…扉が閉められる。え?あいつ…もしかして逃げしてくれたのか


「ひいいいい」

「何怯えているんだよ?」

「お、お前はここに何がいるかわかっていないから落ち着いていられるんだよ…お、俺は知っているんだよ。ここにいる番犬っていうのはな…」

「!」


後ろから殺気を感じて僕はその場を飛び退く。僕がいた場所に炎が揺らめいているのが見えた。そして振り返ってみれば…


「なるほどねぇケルベロスか」


そこにいるのは首が三つの犬がいた。いわゆる地獄の番犬、ケルベロスだ。なるほど、こいつがここにいるから囚人たちは怖がっていたんだな


「あいつの強さはおかしいんだ…それにこっちはこの先は行き止まりなんだよ」

「どうしてだ?」

「ここは…一つの大きな島なんだよ。仮にここから出れたとして海を渡らないといけない」

「渡ればいいじゃん」

「…」


海だろ?それぐらい平気で渡れよ。泳げばいい。海なら食糧事情もなんとかなるだろう。それぐらいのことを渡れないで、どうして命の橋を渡れるっているんだよ


「お前正気か」

「戦わないのなら、下がってろ」


僕はケロベロスに向きなおる。それじゃあ、楽しい躾の時間かな?


「かかってこいよ!番犬!『電気鎧(armor)第三形態(third)』」

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