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電気使いは今日もノリで生きる  作者: 歩海
第9章 みらいへ
306/317

世界の真実

???


「この世界の仕組み…」

「ああ、そうだ。さて…どこから話せばいいものやら」

「時間は」

「あまりないと思え…あのクズ王が帰ってきたら終わりだ」

「なら手短に頼む」


というかお前、主人が見ていないことろでは結構容赦ない性格なんだな。クズ王とか普通に言っているんだけど


「まずは、そうだな精霊と魔王の関係性について話そう」

「あいつらが共に元は人間だということは聞いている」


どちらも全員なのかはわからないが、おそらく全員というのは間違っていないだろう。それを肯定するように白虎はうなづく。


「そうだ。元々は人間だった…なぜ彼らが人を捨てたのかそこから話そう」

「ああ」

「かなり昔の話だが…世界は今よりも荒れていた。争いの絶えない世界だった」

「戦争が盛んだったのか」

「そうだな…それは国というものができて間もない頃だ。互いに領土の拡大を狙い戦争をして相手の領土を略奪していた」


不安定だったのか。そして国同士が戦えば当然国は疲弊していく。…ん?待てよ。でも魔王とかがいないから別に問題ないんじゃないか?


「いや、それでも魔物は存在していた…そして疲弊した国々は魔物に蹂躙されていった」

「まじかよ」


それじゃあ…まずいじゃないか。どんどん人が死んでいく。しかも争いの原因が互いの利益を優先しているからだなんて


「一丸となって魔物と戦おうってことにはならなかったのか?」

「無理だな。確かに魔物も脅威だが…人々を団結させるには力不足だった」

「それでみんなバラバラに動いていたのか」


でも…その話だとなんとなく結末が見えている気がする。なぜ魔王が生まれたのか。でも精霊も同時に生まれているのかはわからない。白虎はそれを見て僕が理解したと悟ったのか一気に話を進めてくれた


「そうだ。人々を纏めるためには強大な悪が必要だった」

「必要悪…」


漫画とかアニメとかで時々耳にする言葉。正義のためにあえて悪になる、そんな人たちの存在。今回の場合は人々を纏めるために世界の敵になる必要があったということなのだろう。いつの時代も人間って愚かなんだろうね


「そこに転移者がどうして絡むんだ?」

「イワナガに出会ったのだな…そうだ。魔王が生まれた原因はそれだが、きっかけとしてとある国が異世界召喚を行った…厳密には強い兵器が欲しくて禁断の魔術を使ったら異世界召喚が起きた、といったほうが正確だがな」

「そしてこの世界に転移者が来たと」

「ああ、召喚されたのは全部で8人。そのうち魔王になったのは一人、イワナガだけだ」

「他の人は」

「死んだよ」


そうか。まあこの世界…今よりもきっと激しい世界ならば死んでいたとしてもおかしくはない。おかしくはないけれど…ちょっと虚しいな


「他の人間と同じように戦いに身を乗り出す者もいた。だが、イワナガのように戦いを終わらせたいと願う者もいた。イワナガは転移者だからかあちこち世界を周り同じ志を持つ者を集めた。そしてついに」

「魔王になった」

「いや、違う」


違うのかよ。でもまあ早すぎだとは思うけどさ。あーそっか。まずは『領域』か。『世界』が使えるようになる前にまずは『領域』


「そうだ。『領域』を使えるようになって彼は他の人間よりも強くなった。また彼に合わせて他の志に共感する者たちも『領域』を使えるようになっていった…そして圧倒的な力を手に入れた彼らは我々と出会う」

「お前ら神獣と…」

「ああ、そして我々は彼らに頼んだ…この世界をより良い方向に進むために絶対的な善と絶対的な悪になってくれと」

「…まさか」


絶対的な悪は魔王。それは間違いない。じゃあ絶対的な善というのは?考えられるのはもう一つしかない


「それが精霊と魔王だ。それに納得した彼らは自ら人間であることを捨てた…そして魔王の脅威を感じた人間たちは団結して立ち向かった…精霊とともに」

「…」

「これが魔王と精霊のこの世界のシステムについての全てだ…理解してくれたか?」

「…」


理解した。理解できたけど、納得できたのかと言われたらそれは違う。ああ、そっか。それでクレアはあんなことをしたのか。


「そして今、またしても世界が混乱してきている。風の国が魔族と手を組み、人の国が世界征服を企み、命の国で禁忌の研究が行われ…あちこちでも不穏な動きが見られる」

「蟲の王はなにがしたかったんだ?」


世界の敵になるという意味では行動は間違っていないんだけどそれにしては少しやりすぎな気がしないでもない。まるで自分から平和を乱しているような気がしないでもない


「…彼女なりの考えがあるのだろう。だが、君たちの手によって結局未遂に終わったがな」

「それはそうだけど」

「まあそれはそうと、この世界は危ない。だから我々はこの世界に危機を伝えるべく魔王の予言を出した」

「…」


そうだな。予言されていたもんな。魔王となれば一致団結しないわけにはいかないもんな


「そして同時に我々は魔王に関してそれぞれ動き出した。一番動いたのは朱雀だな。魔王候補になりそうな少年の両親を殺し、自分に恨みを持つように仕向けた」

「…」

「ああ、あいつの遊び(・・)であることは否定しない。あいつが殺したのは100%自分が殺したかったにすぎない。だからやり過ぎだと言ったのだ」


そうだよな。それじゃなきゃ…あまりにもクレアが報われなさすぎる。そんなのって…あまりにも理不尽すぎないか。この世界のためにお前の両親を殺したんだよって言われたら…間違いなく恨む。


「お前のように我々に不信感を抱いたイワナガは玄武を封印した。一方で我は…姫を生贄にと考えた。だから光の王に吸血鬼の存在を告げた」

「だからシェミン先輩が襲われたのか」

「そうなるな」


それぞれがこの世界のために動いていたというわけか。なら麒麟は?それから青龍も


「麒麟はわかっているだろう。異世界召喚を行うように動かした」

「ならどうして僕たちは別の場所に?」


麒麟は手違いだって言っていたけどここまでのことをする奴らが手違いだなんて起こすはずがない。


「それは…おそらく青龍が少し弄ったのだろうな」

「は?」

「人の国で喚ばれる予定だった人間たちの中から朱雀が用意した魔王候補に関わりの可能性がある奴を別の場所に移した…人の国の人間によって染まることを避けたかったのだろう」

「ああ」


あそこの国って胡散臭かったものな。あそこに残っていたら間違いなく洗脳とかされてロクな異世界生活を送ることができなかったんだろうな。そう考えるとあの時ミラさんが来てくれて助かったな


「そうだな。精霊の何人かが危険を促してくれたおかげで貴様らは学園で生活をすることになった。そしていつの日か」

「クレアが魔王になって、それを誰かが倒す、と」

「そうなるな」

「なら問題ないんじゃないのか?実際そのとうりになっているし」

「いや、それは違う。言ったであろう?時期尚早だと。火の魔王はまだ弱い…大分強くなってはいるが他の魔王と比べるとまだ弱い。だから人々が纏まる前にその役目を終えてしまう」

「役目とか言うんじゃねえ」

「…すまない」


それでも僕の怒りは収まらない。ふざけんなよ、クレアを…道具扱いしやがって。ふざけんじゃねえよ


「失言だったな…だが、なぜ我がこれを話したのはわかるだろう?」

「クレアの時間稼ぎをしてくれっていうことだよな」

「そうだ」


…息を吐く。僕の…この異世界生活の終わりが近づこうとしていた。

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