魔獣退治
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神無月一週目水曜日
「で、魔獣ってどんなやつなんだ?」
『私が説明してもいいけど実際に見た方がいいと思う…それに遠目からで確証はないし』
「なるほど」
『イフ、案内できる?』
『まあ、なんとか…それにある程度近づいたらこいつらでも感知できるようになるし大丈夫よ』
『お願いね』
というわけで僕らは村から出て近くの森にいるという魔獣のところに向かう。イフリートが場所を知っているようで迷うことなく進むことができた
『まあガイアから教えてもらっているんだけどね』
「どうやって?」
『精霊間のテレパス的なやつよ』
「…」
テレパシーねぇ。てかそれがあるのなら最初っからすべての精霊に協力を要請することができたんじゃないだろうか。その方が絶対に効率いいし
『無理よ。クレアの魔力が持たないってのももちろんだけど、私たちは契約者から離れて魔法を行使することは基本的に無理なの…契約者が「姫」を嫌っていたらおしまいよ?』
「それはそうだけどさ…」
『ガイアに言われたのは大体この辺りよ』
まだ言いたいことは残っていたけれど目的の場所に近づいたということで僕らは一旦話し合いを中断する。さっさと討伐して続きをしようかな、覚えていたらの話だけど
「『感知』」
「『熱探知』」
えっと…向こうにたくさんの電気を発生させている生命体がいるな。でも複数ってことは目的の魔獣じゃないのか?『いいえ、たぶんそれであっているわ』
「クレアは?何か見つけた?」
「いや…向こうに少しだけ反応があるんだけど…ほとんどわからない」
「え?」
いや…確かに向こうに生命体を感知しているんだけどなんで僕だけなんだ?
『ああ、そういうこと…』
「イフリート、何か知っているのか?」
『ええ…まったく面倒なやつがいたもんね…二人とも、行きましょう』
よくわからないけど僕らはイフリートについていくことにした。でもまだ謎は解決していない。どうしてクレアにはあの生命体を感知することができなかったのか。
『おそらくあれね』
「…」
「…ああ、それで」
イフリートにわざわざ教えてもらわなくてもそれがなんなのかよくわかった。森の中で少し開けたところに、そいつはとぐろを巻いて存在していた。ああ、だからクレアの魔法では見つけることができなかったんだな
「変温動物かよぉ」
「変温動物?」
「蛇とか…とにかく周囲の温度によって体温を変化させる生き物のことだよ」
「なるほどね」
クレアの魔法は熱源を感知することができる魔法。人間の体温はおおよそ36〜37度で気温は暑かったとしても34とか35とかでギリギリ区別できる。まあ恒温動物といっても多少は影響を受けるし普通に使用する分には問題なかったのだろう。でも、今回は少しまずかったな。もう神無月…つまり地球でいうところの10月。少しづつ気温が下がってきている
「ミライの言うことはわかったけど…」
僕の簡単な説明を聞いてクレアは納得する。でも、と言葉を続ける
「あれって本当に蛇?」
「…」
まあ、それは確かに僕も思っていた。だって明らかにおかしいし。
『あれは蛇というか…ヒュドラ種というか…』
「明らかに顔の数が多いんだけど」
「ていうか幾つもの胴体が見えるんだけど」
まるで数多の蛇が絡み合っているかのようだった。一つの大きな蛇のように見えなくもないが、その実、頭がたくさんあってそれぞれが別々の意思を持っているかのようにうねうねと動いている。なにが起きているというんだ?
『あれはね…互いの尻尾を一つに丸めているのよ…そして一つの生命体として活動している…一匹の蛇が死んだところですぐに別の蛇を吸収する。そうして生きながらえている種、それがヒュドラ種よ』
「「…」」
つまりあの蛇のたくさんの胴体の中に互いの尻尾を接続している場所があるということなんだな。ああ、だからたくさんの反応があったわけだ。だって一つ一つの頭にはそれぞれ別の蛇なんだもん。ただ、言いたいことがあるとすれば
「にしても大きすぎない…」
『ずいぶん長生きなのよ、きっと』
スケールの問題だ。地球に…いや日本にいた時に動物園やテレビで見かけていた巨大な蛇よりもさらに大きい。僕ら人間を一口で飲み込むことができるぐらいの大きさがある。あれを…討伐しなきゃいけないんだよね
『そうね…日が暮れてしまったら最悪よ、向こうは視界なんてあんまり関係ないんだから』
「はぁ、さっさと終わらせるか」
「終わらせてシェミンさんの情報をもらおっか」
僕たちは戦闘態勢をとる。幸い、向こうは気がついていないみたいなので、初動をどうするかが問題だな。まあ蛇だし火が苦手だろうからクレアを主軸にして戦うのがいいのかな
「危ない!」
そう思い、クレアに声をかけた時だった。急にクレアが僕に警告を発する。慌ててその場から飛び退く…ここら辺の動作はかなり慣れてきた。
「!」
僕らがちょっと前にいたところに何か太い棒みたいなのが突き刺さっていた。なにが突き刺さっていたのかなんて考えるまでもない。どうやら見つかっていたようだ
「これが…蛇の感知能力」
『まずいわね…隠れるのは無理みたいよ』
らしいね。周囲を警戒しながら僕はクレアを探す…いた。無事だ。でもいくつかの蛇の頭に囲まれている。助けに行けたらいいけど…いや、ここは本体を直接叩くか
「『放電』」
大抵こういう奴は尻尾をたたっ切って分断させてしまえばパニックになるんだよ。なのでまずはその結合部分を見つける。
「!」
一つの頭が体を守るように電撃上に立ちふさがり、電撃を受け止める。まじかよ、こんな連携のしかたもあるのか
「『電気鎧・第三形態』」
感心してばかりもいられない。僕のところに蛇の頭たちが次々と襲い掛かってきた。巨体っていうのはそれだけで巨大なエネルギーを有している。頭突きを受けただけでもかなりのダメージを負ってしまうことは想像に難くない
「ちっ」
巨大なくせに動きもそれなりにある。なにより連携がきちんと取れている。僕が避けようとした方向には別に蛇の胴体があって思うように動くことができない。気がついたら周囲を蛇の胴体で囲まれてしまっていた
「まじかよ」
そして頭上には蛇の頭が幾つか見える。そしてその蛇たちが一斉に口を開くと…ってあれは間違いなく毒だよな。
「『電気の領域』」
あれを被ったらやばい予感がしたので僕は『領域』を使って吹き飛ばす。よし、これで…
「『火』」
「!」
僕の真正面に火が飛んでくる。あぶなかった。クレアが魔法を放ってくれなかったら影に潜んでいた別の頭に腕を食いちぎられていたよ。一旦蛇たちが距離をとったので僕はクレアと合流する
「こいつら…『領域』のことを知っているのか?」
「わからない…でも切った頭が再生していた」
「まじで!?」
死んだら別の蛇を吸収するんじゃなかったのかよ。それに見てみればさっき僕が電撃で倒した蛇も復活している
『どうやらかなり古い個体見たいね…厄介なことに不死性を持っているわ』
「まじかよ…」
うねうねとこちらを睨みつけている無数の蛇たち、数えられる範囲だけでその数はゆうに10は超える。まじかよ八岐大蛇もびっくりだ
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