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電気使いは今日もノリで生きる  作者: 歩海
第7章 第32ギルド
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七つの大罪

ブクマありがとうございます

これからも頑張ります

長月三週目月曜日


『「七つの大罪」それは人間だけが使うことができるスキル…でも同時に、それはかつての人間(・・・・・・)が犯してしまった罪でもあるの』

「かつての人間…」

『でもそれはこの際どうでもいいわ。今言えることは、このスキルは人間の…人類の希望であるということよ』

「なんで犯した罪が希望に変わるんだよ」

『パンドラの匣、そういえば伝わるかしら?』

「…」


ああ、とても有名な話だしね。かつて神様から大切な匣をもらった少女、パンドラ。決して開けてはいけないと言われていたけれどパンドラは自分の好奇心を抑え切ることができずに開けてしまい、魑魅魍魎がこの世界に解き放たれてしまった。絶望するパンドラの前に現れたのは、最後に匣に残っていたのは一握りの『希望』、僕が知っているのはこれくらいかな


『そういうこと…パンドラの罪は開けた(・・・)こと。それによって神罰が下された。でもそれと同時に人類には希望が与えられた。セリアの持つ「暴食」も似たようなものよ』

「どんな希望なんだ?」

『もうわかっているでしょ?いつ、その言葉を言われたか考えたら』


確認のために聞いているんだよ。意地が悪いな。ああ、わかっている。セリア先輩が『人類の希望』と言われたのは一度だけ、それを言ったのはあの『蟲の王』。つまり、魔族の王様たちへの最後の希望となるわけだ。彼らと戦うための


『ま、そういうこと』

「待ってください。それでは…他の大罪の持ち主は」

『今の所いないはずよ…一人、成り掛け(・・・・)はいるけど』

「それがミライですか」

『いいえ、それは違うわ…むしろミライは最初から進んでいるわよ』

「え?」


僕が?そんな大層なスキルじゃないと思うんだけどな。「電気」スキルなんて普通のありふれたスキルだろうに


『ええ、ありふれたスキルよ。この世界にもそのスキルを持っている人間はたくさんいる…でもね、あなたの世界では「電気」は特別な存在でしょ』

「は?」


地球で電気が特別?まあ確かに今の文明がここまで進んだのは電気が発明されてからだっけ?確かに大事だと言わざるを得ないけど


『そうじゃないわ…「電気」はね、唯一、人が己の力で見つけた力だからよ』

「…」

『「火」は神から与えられた…「水」や「土」、「風」は自然界に数多となく存在している。でも電気だけは違う…ヒントとして「神鳴」や「静電気」などは存在するけど』


人が唯一見つけた力…だから唯一、諦めないで進むことができる力、そういう意味でこの「電気」はとても特別で、大切な力である。そう、イフリートは言っていた。


『もちろんクスノキの力がおかしいことは認めるわ…あれもおそらく世界の影響を受けている…人を前に進ませる力「夢」。彼もまたこの世界が産み出した希望なのかもしれない』

「待ってください…それではまるで、ミライたちが使命を持ってこの世界に来たみたいじゃないですか」

「それは来るべき魔王を倒すためだって」


てか魔王って何人いるんだよ。確認されているだけでも二人いたぞ。うち一人はすでに倒したけどさ。


『これから産まれる魔王を、止めるため(・・・・・)

「…?」


まただ。言い方が少しだけおかしい。止めるって止められるかのような言い回しだな。それを感じ取ったのは僕だけじゃない


「つまり、その魔王はまだ産まれていないと」

「まさかとは思いますがミライじゃないですよね」

『違う…と思うわ』

「え?確証ないの!?」


誕生するかもしれない魔王って僕のこと!?ま、まあ確かに『世界』を使えるようになったけどさ。僕特にこの世界をどうこうしたいとは…うん、思ってるね


「えぇ!?」

『まあそうでなきゃ「世界」を発動できないわよ』

「それならこれまでの王たちも、何か変えたいと思っていたというわけか」

『…そういうことになるわね』


あいつらが…何を変えたいと思っていたのだろうか。あいつらの行いを許したわけではないけれど少し、ほんの少しだけ話をしてみたいと思った。多分だけど僕のなかで何かが変わったからだろう


『少し話しすぎたわ…「大罪」スキルの話はこれくらいでいいかしら?』

「…私は大丈夫です」

「俺も…このスキルがそんなものだとは知らなかったが、知れてよかった」

「僕もいいよ」


やや強引ではあったけれどもイフリートは話を切り上げた。本音をいえば僕はまだききたいことが山ほどあった。今のイフリートの言葉で思い出したことがある。かつて『麒麟』が言っていた僕がこの世界で「しなければいけないこと」きっと、イフリートは知っている。そんなきがする。そして、イフリートと王たちの関係。過去にまだ語っていないところのなかに、なにかある。精霊と王は対立しているようには見えなかった。敵対関係にはあるようだったけれども本室的に対立していないように見えた。そこらへんのことを聞きたかった


『ミライ、そのうちわかるわ…今も一つわかったじゃない』

「それは…そうだけど」

『それに、今あなたがやらなければいけないことはそんなことじゃないでしょ?』

「…」


そうだ。そうだった。話のスケールが大きすぎて忘れかけていたけれど僕がしなければいけないことは決まっている。


「イフリート…お前言ったよな。シェミン先輩を探すのを手伝ってくれるって」

『ええ、そう言ったわ』

「今、先輩はどこにいるんだ?」

『知らないわ』

「え?」


え?知らないの?てっきり知っているものだと思っていたけれど『逆にどうやって知るって言うのよ』えっとそれは…精霊の特別な力的な?


『無理よ…私が手伝えるのは他の精霊(・・・・)の居場所とそれから…彼女の故郷の場所を教えることだけ』

「シェミン先輩の故郷…」


確かにありがちだな。誰しも一度は帰りたくなる場所、それが故郷だ。僕だって…考えないようにしていたけどそりゃ、地球に帰りたい…帰らなくちゃいけない、そう思っている。


「まって、イフリート。他の精霊ってことは…みんな契約を」

『いいえ、もちろん契約をしている精霊もいるけど普通にこの世界を漂っている精霊もいるわ…でも彼ら彼女らなら何か知っているかもしれない』

「そういうことか」

「待ってください」


僕とクレア、それからイフリートが話をしている時に急にサリア先輩が割って入ってきた。


「ミライ…探しに行くのを止める気はありませんが…あなたはその意味をわかっていますか?クレアも」

「…」

「お前らの先輩として…友としては問題ないが、生徒会長としては許可できない…下手をすれば世界中がお前らの敵となる」

「それは…」


まあ今更そんなこと関係ないんだけどねって笑い飛ばしたいところだけど、先輩たちの本気の顔を見て何も言えなくなった。ん?てかちょっとまって


「クレアも来るのか?」

「え?置いてくつもりだったのか?」

『そこから?!』


いやだってこれはさすがにクレア関係ないだろ。だからイフリートから居場所を聞いてそこに僕一人で行こうって考えていたんだけど…違うのか?


「はぁ…各々落ち着いて考えてくれ。ミライ、はっきり言うが、お前がシェミンを追ってこの学校から出た瞬間、ここにお前の居場所はなくなる」

「…」

「ここ第32ギルドは事実上、なくなる。お前らの上の学年の奴らは…もう別のギルドに移ってる。だからお前はもうここに戻ってくることができない」


その上で考えてくれと。シェミン先輩を追いかけに行くのかどうかを。今日1日考えて…明日の朝、もう一度先輩たちと話をすることになった。…そっか。ここが無くなってしまうのか

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