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電気使いは今日もノリで生きる  作者: 歩海
第6章 風の国の戦い
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第6章エピローグ

これにて第6章は終わりです

葉月三週目風曜日


あれから一週間が経った。僕とクレアはシズク先輩の家でお世話になっている。僕の足はシェミン先輩のおかげで再起不能になることはなく、しっかりと休養をとればほぼ、元通りになるみたいだ。聞けば僕は自力で立ち上がることができなくなるところだったらしい。それをほぼ元に戻すなんてシェミン先輩はやっぱりただものじゃない。精霊たちからも「姫」って呼ばれているし…本当に彼女は何者なのだろうか。


「起きたか、ミライ」

「なんとかな。あー暇だな動きたい」

「動いたらシェミン先輩に殺されるぞ」

「だよなぁ」


ここにはサリア先輩、セリア先輩、シェミン先輩はいない。この三人は…いや、この三人の行動を説明する前にきちんと整理しておいたほうがいいだろう。僕は何回も聞いたことをクレアに確認する


「それで、サリア先輩とシオン先輩の婚約は解消されたんだよな」

「まあ…そうだな。魔族に支配されかけていたし」


あの戦いの後、先輩たちは風の国の腐敗について大大的に報告した。風の国は蟲の王の傀儡になりかけていたこと、そしてそれを防ぐために先輩たちが戦ったこと、そしてその戦いの中で風の国の王が死んだこと。それらをあの日、集まっていた重役たちに説明し、各国に伝えるように依頼した


『まあ、ちょっと脅したけどね』

「脅したって…」

『あんたらの処遇のこともあるし』


そう、世間的にはあの日、風の国のために戦ったのは「陽」の国の王子であるセリア先輩とシオン先輩の婚約者候補の一人のシズク先輩の二人ということになっている。そこには僕の名前はおろか、クレアも、シェミン先輩の名前もない


『姫に救われたとか言いたくないだろうし、そのことを黙秘する代わりに早くこの国から去るように言ったのよね』

「それ、こちらが大分不利じゃないか?」

『いいえ?こちらには精霊がついているのよ?おまけに複数。戦いになったらこちらが勝つに決まってるわ』

「ああ、そういう…」


つまり命を脅したとかそういうことなのだろうか。確かに先輩たちが戦ったら勝つのは目に見えているしな。それにあそこまで罪を犯している以上、今更あの人たちを殺したところで問題ないか。罪を重ねるということを意識しなければ


『セリアが契約をしてくれたからねー報告する際に嘘を述べたら死ぬっていう』

「よくそんな契約をできたな」

「どうやら避難させている時にちょっとやっておいたらしい」

「うわぁ」


まさかそこまで考えていたとか。でもそこまでしたたかじゃないとこの世界の王様っていうのは生きていくことができないのだろうな。


「あれ?それだと討伐人数を嘘つくけど大丈夫なのか?」

『大丈夫よ。サリアとシズク”だけ”といえばダメだけどサリアとシズク”がいました”とでも言っておけば嘘ついたことにならないもの』

「なるほど…」


ずるい、なんかずるい。でも、そこまでして僕らを守ってくれたんだな


「僕とミライの処遇だが、シェミン先輩と同じみたいだ」

「シェミン先輩と?」

『姫はね、あの学校にいるまではどの国もほぼ手を出せないみたいなの「星」の方針でもあるのだけど』

「じゃあ僕達も」

『ええ、姫が卒業するまでは無事に過ごせるわ』

「え?」


思わず聞き返してしまう。えっと、今、イフリートはなんて言ったんだ?シェミン先輩が卒業するまで僕とクレアは安全が保障されている。つまり言い換えたら


「来年は無理ってこと?」

「ああ、そうみたいだ」


そういうクレアの顔もかなり苦々しい。この結果に満足していないことがよくわかる。それは僕も同じだ。つまり僕らが学校で学ぶことができる期間というのはおおよそ7ヶ月、つまり約半年だ。


『さすがに今回のことはあなたたちが解決したことにはなっていないからダンジョンの件について突っ込まれた時に何も言い返せない。だから姫と同じにしたのよね』

「そんな…」


でも、それならどうして僕達のことを隠したんだ?いっその事言ってくれたら晴れて僕達は


「あの時、宣言したのも大きいらしい」

「あー…」


あれか、最初に式場に殴り込みに行った時に僕とクレアで宣言したやつ。僕達はこの国とは何の関係もないから的なやつね


『それに、これはサリアから言い出したことよ…シオンはやめるように言ったのだけど』

「あっ」


その言葉で僕は理解した。そっか。これからシオン先輩はこの国を立て直さなければいけない。でもその時に国を救ったもの達の中に僕達みたいなはぐれものがいたのでは周りに与える印象は大きく違う。それに、下手にクレアの存在が知れ渡ってしまうとそれもまずい。亡国の王子と異世界からの人間がともに行動してあちこち動き回っているだなんて知られるのは避けたほうがいいな。


「シオン先輩のため、か」

「まあ僕達の今後のこともあるのだけど、やっぱりそこだろうね」

『完全に外部の人間に助けてもらったことがバレたらこの国は信用を一気に失う。それだけは避けたいもの』

「なら…仕方がないね」

『まあ…私もこっちのほうがよかったけど』

「え?」

『なんでもないわ…あとはクスノキの影響もあるとだけ言っておくわ』

「は?」


なんでそこであいつの名前が出て来るんだ?いやなんかあちこちの国に行ってハーレムを作っているってことは以前聞いた気がするけど


『まあクスノキやテンイと、あんまりこの国じゃない人間にでかい顔をされたくないってことね』

「ああ」

「くだらない嫉妬か」


まああいつに期待する声が大きくなるのもわかるし、よそ者にばっかり集まってしまうと国の重役としても面白くないもんな。つまりそんな諸々の事情があって僕達のことは秘匿されたということなんだな


『まあ、そういうことね』

「それで…先輩達は?」

『サリアとセリアはそれぞれ自分の国に戻ったわ。姫は…どこかぶらぶらしているのでしょう』

「そっか…」


僕が起きた時にはもう、先輩達はこの国を発っていた。先輩たち…特にシェミン先輩にはちゃんとお礼を言いたかった。僕の命の恩人になるわけだし


『シオンはこの国の新王となった兄を支えているわ。シズクも同様』

「なるほど」


そして僕はここで休養してて…クレアは?


「僕も似たようなものかな。あ、でもシズク先輩に頼んでこっそり国の執務の様子を観察させてもらったいる」

「…そっか」

「必要ないとは思うけど…念のために、ね?」

「ははっ」


将来こいつはもしかしたらどこかの国の王様になっているかもしれない。でもそれはわからない。それは未来のことだからだ


「それで…これからどうするんだ?というか僕の怪我はあとどれくらいで治る?」

「え?ああ、そうだな」

『あと二日ぐらいで立てるようになるわ…そこで「自己活性」を使って治癒をはやめましょう』

「え?」


僕は今イフリートの言っている言葉の意味がいまいちわからなかった。イフリートが言ったことを実行しようとすればきっと『電気鎧(armor)第三形態(third)』を使うような感じになりかねないからだ


『もう無駄よ…どうせ今更止めたところで寿命は変わらないし』

「どういう…こと?」


でもその理由は僕が考えていることよりもかなり深刻だった。まさか、ここまでとは僕は全く思っていなかった


『度重なるダメージの蓄積であなたの細胞自身が限界を迎えつつある…あなたはこれから良くて1年しか生きられないわ』

次は第6章のキャラたちのまとめです

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