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電気使いは今日もノリで生きる  作者: 歩海
第6章 風の国の戦い
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足りない力

葉月二週目風曜日


「熱に弱いってことは…クレアを中心にして攻撃すればいいってことか?」

『そうなるわね…あんたサポートとかできる?』

「できるっつーの」


なんで人を攻撃することしか能のない人みたいな感じで扱うかな。僕だってちゃんと頭を使いながら戦っているんですよ。それにいつも誰かに合わせてもらうばかりじゃなくて誰かに合わせて戦うとかも当然できる話なわけで…あれ?そういえば


僕はふとこれまでの戦いを思い返してみる。いつもいつもクレアにサポートをしてもらっているような気がする。クレアがいない時もメイさんとかイフリートとかがそばにいてなんらかのサポートをしてくれているような気がする。つまり僕は、誰かの補助をしたことがない?


「え、まってどうしよ」

『今さら気がついたの?まあいいわ。とにかく邪魔にならないようにしなさい』

「は、はい」

『ほら、きたわよ!』


スライムから謎の触手が山ほどこちらに向かってくる。でもあれに直で触れたらダメなんだよな


「『放電(thunder)』」


ならばとばかりに電撃を放ってみるもまったく効いていないようでこちらに向かってくる。いやほんとなんでちょっとでもひるむとかそういうことあってもいいんじゃない?


『お前話聞いていなかっただろ。あれは炎系の魔法以外全く効かないから』

「そうだったな」


いや全く忘れていたとかそういうわけじゃなくてですね、こうなんていうかまだ自分の頭の中で精霊ができていないような状態なわけですよ。だって今まで最弱だと思っていた存在がまさかここまでチートな存在に成り果てているわけですよ。あ、これ異世界系のキャラ達の気持ちが少しわかったかも。どうして圧倒的な差を見せつけられても立ち向かっていくのか。本人達の中ではまだ整理できていないんだね。周りからいくら強いぞ、やめておけって言われても実際に自分の目で確かめない限りは認めることができないとかそういう感じなのね。


でもここからが分かれめだ。自分が勝てないのはいいとしてその現実を受け止めないでそのまま突っかかってしまってはいけない。冷静に相手の実力をきちんと認めて、その上で戦わなくてはいけない。


「『創造(creat)』」


砂鉄を操ってそして『一応言っておくけれど斬撃も効かないわよ』なんども言われなくたってわかっているって。


「『解除』そして…『爆発(dynamite)』」


爆発だって火が発生するわけだしこれも炎系統の魔法にはいるよね!スライムを見てみれば少しばかりひるんでいるようだった。やっぱり火が苦手なのか。


『無茶やるわね…』

「それよりもクレア!」

「わかってるって『炎の舞』」


スライムを覆うように炎が形成される。これであいつは動くことができなくなったわけか。てかクレアそのそもあいつを一気に丸焼きにすればいいのに


「すまん、魔力がほぼないんだ…」

(精霊)の力を使いすぎたもんね…初めてでここまで使えたのなら大したものだけど』

「なるほどね」


強い力を使うためにはそれ相応の魔力が消費されるということなのだろうね。まあそこまでおかしな話でもないし。あと慣れていないから燃費が悪いのもうなづける。つまりはクレアの火魔法にあんまり期待できないってことか


「いや、時間をかければ魔法は発動できる。だから時間をかせぐサポートをしてくれ」

「ああ、サポートってそういう」


改めてスライムの方を見る。今は炎の渦で囲まれているけどあのふにゃふにゃした形状を考える。あれって液体なのか?それとも固体なのか?液体なら全部燃やし尽くせば蒸発しそうなんだけど


「それをするには火力が足りなすぎる」

『スライムの再生能力もなめちゃいけないわよ』


だから核を探すんでしょ?『つねに移動しているに?』あ、それはかなり無理ゲーですね。結局は全部まとめて焼き払うしか方法がないってことなんですね


『また来たわよ!』


また来たって言われても聞く感じでは僕が何もできそうにないんですけど。とりあえず『爆発(dynamite)』を小刻みに発動させて誤魔化しているけどこれがどれくらい続けられるかって言ったら自信がないんだけど。


「『(fire)』…はぁ…はぁ」

「本当にギリギリなんだな」


これ先輩たちに協力を要請した方がいいんじゃないか?僕らだけでは手に負えないんだけど


『まあ、そうなんだけどさ、けど試してみたい魔法があるのよね』

「?…危ない」


突然頭上に謎の液体が生まれたかと思うとそれが炎の渦にさらに覆いかぶさる。すると液体と触れたことにより炎は消火されてしまった


「あれってなに?」

『多分消化液ね』

「火が効いていない?」

「まあ弱点とはいっても対応できるってことか」

「それやばくないか?」


なんでこんな化け物を作り出しているんだよあの王様は。あいつは僕らを殺したいのかそれとも殺したくないのか


『まあこの程度乗り越えなくては意味ないって考えなんでしょうね』

「何その自然界の掟みたいなやつは」


獅子は生まれたての我が子を谷底に突き落とし這い上がってきたものだけを育てるという。よく聞く有名な言い回しだけれどもまさかここでも同じようなことが起きるとは思ってもみなかったよ。というか相手って魔族の王様だよね?なんで僕あんなのに目つけられているんだよ


「『爆発(dynamite)』…ってもそろそろこっちも厳しくなってきたんだけど」

「『火の玉』、動かないだけマシだけどこちらからも有効打がないからね」

「お前の魔法で全部焼き払えないの?」

「今の魔力じゃ『魂の火剣(fire・soul)』の火力が足りない『命を燃やせ(LIFE)』で補えば間に合うんだろうけど」

『それはオススメできないわ。そんなことしたら寿命が縮むもの…まだここで命を削るわけにはいかないわ』「くっ」


あれってそこまで追い込むのかよ。そういえば自分自身の魔力を炎に変換する魔法だったっけ。それならまあ乱発はしたらいけないだろうし


「『放電(thunder)』…やっぱり無傷か」


電気抵抗で少しぐらいは熱エネルギーが発生するかもしれないと思って電撃を放ってみたけれどまだまだみたいだ。いっその事、雷ぐらいの電気を叩き込む事ができればなんとかなるのかもしれないけど


「火力が足りない…」

『そうなのよねー。二人とも高火力魔法を使えるけどそれ全魔力と引き換えだし手頃な魔法がないのよ』

「なら」

『だから』


イフリートの言い方に思わず反論しようとした矢先に向こうからさらに言葉を重ねられる。


『一つ、試してみたい魔法があるの。クレアは私を使う事で実質的な火力アップ、そしてミライにはまた新しい魔法を発動してもらうわ』

「ここにきて!?」


いや確かによくある展開だけどさ、どうするっていうんだよ。これから新しい魔法とか無理にもほどがある。おまけにそれがこのスライムに有効かもわからないんだし


『大丈夫よ。サイクロトロンって覚えてる?』

「え、あうん」


蓄積(charge)』を習得する際に一度聞いた事がある。確かフレミングの法則とかを利用してエネルギーをどんどん貯めていくって感じの科学技術だっけ?


『そうよ…そしてその系譜には、とある化学兵器があるの、それをミライには表現してもらうわ』

「化学兵器って…それできるのかよ」

『ええ、というかやってもらうわ』

「どんな?」


イフリートに対して強く詰問するとイフリートは答えてくれる


『あなたも聞いた事あるはずよ電磁砲…通称「rail gun」』

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