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電気使いは今日もノリで生きる  作者: 歩海
第6章 風の国の戦い
253/317

最弱じゃない存在

葉月二週目風曜日


「ぎゃあああああああ」

「え?ちょ、なに!?」


僕は目の前で起きている現象に対して傍観することしかできなかった。ていうかこれどうなっているんだよ。人間だと思っていたものが魔物になってしまうっていうことだろ?え?もしかしてハーフ的な何かですか?


『混乱しているみたいだけど落ち着きなさい、あれは王の能力よ。どの魔族もできるわけじゃないわ』

「でも乱発されたら」

『そこまでの力は残っていないでしょう。それにあいつらも無闇矢鱈に魔物にすることを望まないし』

「それを信じるけどさ」


それでも僕はまだ混乱している。人間の姿はとうになくなってそして…今は一つのそこそこの大きさの玉になっている。うわーこれがあの王様の末路かよ。ちょっと気の毒になってきたな。


「あれは卵か何かなのか?」

『いいえ、あれで終わりよ…そうね。あれはきっと「スライム」ね』

「「「スライム!?」」」


みんなが一斉に叫んだ。え?でもちょっと待って。スライムってあのスライムだよね。とあるゲームで最初の街に出現する雑魚モンスター。縛りプレイとかで最初の草むらでスライムだけ狩ってレベルをカンストさせてから挑もうとかありがちな。主人公が最初に戦う感じの。異世界的なものならゴブリンがそれに当てはまる。スライムだとどうしても少し場かり可愛さってものが出てしまうから少女を襲うのならばやっぱりガラの悪いゴブリンとかのほうが都合がいいんだよねきっと


『さすがに今の言葉が訂正しなさい。ゴブリンに対しての侮辱もいいところよ。それに少女漫画とかでよく主人公に絡むのも大抵ブサイクな男性が多いし、そもそも主人公クラスに絡んでくるのって大抵美形じゃないわよね。あんたもどうせこれからクスノキとかに絡むことになるだから』

「すみませんでした。自分が悪かったです…まあ僕の顔がよくないのはわかってるけどさ」

『そうね…慰めないわよ』

「この状況で慰められたほうが余計に虚しいわ!」


だって周りにいるのってイケメンなシオン先輩、サリア先輩にクレア、美少女なセリア先輩とシズク先輩それから可愛い系のシェミン先輩だぞ。ここだけみたら顔面偏差値40割ってるわ。あ、でもさすがにあのスライムよりかはマシか?


『さっきスライムは可愛いって自分で言っていなかったかしら?』

「それはやめてくれええええええ」


ちょっと前の言葉を撤回したくなる。なんで僕はこうも簡単に黒歴史を生成してしまうのだろうか。やめてくれ。穴があったら入りたい。だれか僕の頭をアースしてくれ。って言ったら格好いいかな?


『ダサい』

『さすがにダサいよ』

『心配になるな』

「心を読むなぁ、それからなにシレッと会話に加わってんの?」


イフリートだけでなくウィンディーネやフェンリルにまで言われてしまう僕って一体…虚しすぎて悲しくなってくる


「いつまで漫才してるんだ。それよりもどうする?」

「リル、ミライをからかうのは後にして大変だから」

『それもそうだな』

「え?」


なんで先輩たちってそんなに警戒しているんですか?だって相手はあのスライムですよ?最弱として有名なスライムですよ。


『あーそっかあんたの世界ではそんな風に印象操作されているんだっけ』

「え?」

「ミライの世界ではあいつは弱いのか?」

「まあそうなるね」


なぜだろう。さっきから周りの人たちとの会話がどこか噛み合っていないようにも感じる。えっと…これはどこが食い違っているんだ?


「いいかミライ、スライムってのはな」

「シオン!危ないです」

「うおっ『(ice)』」


シオン先輩に向かって触手のようなものが飛び出てくる。おお、でもしっかり避けることができている。そして氷魔法に当たったスライムは…ん?無傷?攻撃が外れたのかな?あんなに大きいのにシオン先輩疲れているのかな?


「まあ直接殴ればいいか」

「ちょっと待て!」

「サリア!」

「わかってる『氷』」

「うわっ、なにするんですか!サリア先輩!」

「それはこちらのセリフです。なにスライムに向かって物理攻撃を仕掛けようとしているんですか」

「え?」

『いい、ミライ、この世界のスライムは…いいえ、あなたの世界でも本来の(・・・)スライムはかなり大変な魔物なのよ』


そう言ってイフリートは色々と教えてくれた。まず、物理攻撃は完全に無効。さらに魔法も聞くのは基本的には炎系の魔法のみ。しかし個体によっては炎魔法ではなく他の系統の魔法の場合がある。倒す方法は相手の弱点属性を当てて倒しきるのみ。おまけに高度の再生能力持ちなので一撃で消し飛ばさなくてはすぐに回復してしまう。一応核のようなものは存在しているのでそれさえ潰せればいいらしい。…って


「スライム強すぎないか?」

『まああの国民的ゲームの影響が大きいのは否めないわ。でもちゃんと元ネタを知らないでゲームだけの知識を持っていたらどうなるかこれで少しは実感できたんじゃないかしら?あ、むしろなにも教えずにそのまま突っ込ませたらよかったかしら?』

「それはさすがにミライが死んじゃうから」

「否定できない…」


スライムの攻撃方法は体当たりといった可愛いものではなくて触手での攻撃が主になるらしい。ただし、その触手にちょっとでも触れればなんでも溶かされてしまうのだとか。『ちなみに服とかだけっていう展開はほぼありえないからね…期待してるとこ申し訳ないけど』誰がんなもん期待するか。


『え?あんたって思春期真っ盛りの男子高校生よね?女の子のちょっとエッチな姿気にならないの!?』

「そりゃ気にはなるけどいまはそれどころじゃ…ってなに言わせてんだお前」

「変態です」

「変態ですわね」

「ミライ君…エッチ」

「ここぞとばかりに集中砲火しないでくれませんかね!?それから、クレアに先輩たちも!助けてくださいよ」

「「「ごめん、自分の身が第一」」」

「お前らああああ」


揃いも揃ってなんて状だ。くっ、こいつらに助けを期待した僕が馬鹿だったというのか。さっきまであんなに頼り甲斐のあった背中が今はとてつもなく小さく見えてしまう。


『ま、ミライのおかげで少しはリラックスできたことだし、作戦に移るわよ』

「僕の被害大きすぎませんかね」

『いいから』

「はいっ」


うう、僕のガラスのハートが粉々に砕け散りましたよ。こんなにも純情な『それ以上言うよまた恥ずかしくなるよ?』そうですね。ありがとうございます、ウィンディーネ


『ま、みんな思うところあるけどさ、ここはミライとクレアに任せてくれないかしら?』

「イフリート…」


イフリートが言おうとしていることは少しだけわかる。ここで僕らに戦闘経験を積ませてあげて欲しいってところだろ。相手がかなり強いのはわかりきっているけどそれでも


『まあさっきの反応を見るに、このスライム炎系に弱いみたいだし適任じゃない?』

「結構現実的だった!!」

「よし、じゃあ僕達はこの周りの人たちの避難かな?ミライクレア、危なくなったらいつでも呼べよ」

「シオンが役にたつとは思えませんけどね」

「それは言わないでくれよ」


そう言いながら踵を返すシオン先輩とシズク先輩。どうやら本当にここを僕達に任せてくれるみたいだ


「ま、がんばれ」

「二人とも…気をつけて」

「最後ぐらい助けてあげたいですが…二人の成長を見守ることにします」


そして先輩達は全員周りの人間を運び出した。そして僕らの前には


「こいつを倒して、ここでの戦いが終わりか」

「なんか今回は結構早く片付いたね」

「先輩達のおかげかな」


うねうねと大量の触手を出して僕らに対して敵対行動を見せる緑色のスライムの姿があった。

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