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電気使いは今日もノリで生きる  作者: 歩海
第6章 風の国の戦い
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『領域』の変化(予感)

葉月二週目風曜日


「お前は…」

「誰だ貴様は!」


突然の乱入者にざわめきが増していく。僕らが扉を蹴破った時以上にざわめいているような気がする。まあ確かに扉は一応正規の潜入ルートだからね。いや、潜入ってどういうことだよ


「な、なぜここにきた」

「『ん?別に私の行動を制限することは陛下でもできませんよ』」

「それはそうだが…」

「貴様、魔族の王なのか?」

「『そうね…私もかつては魔族を率いていた長よ』」


あいつは周りを気にすることなく自分の正体を語る。それだけ自分の洗脳に自信があるということなのだろうか。確かに今のサリア先輩やシオン先輩を見る限りその力はかなり強そうだ


「つまり風の国と結託していたのだを認めるのだな?」

「『まあ互いの利害関係が一致したのもあるわね』」

「つまりあの少年たちの主張は正しかったわけか」

「『あら?私の言葉を信じるのね?』」

「そんな不思議な力を見せられたらな」

「『そうね…みんな私の力の前に平伏すから』」

『二人とも!』


イフリートに言われなくてもあいつの構えを見てみればわかるよ。こちらに攻撃が来る!


「『電気の領域(field)』」

「『火の領域(fire・field)』」


僕とクレアは『領域』を発動させてあいつの『世界』に備える


「『ふふふ、まだ別にいいわよ…この力を使うのはもう少し後。どうせここから出られないんだし』」

『確かに結界が貼られているわね』

「なんてことを…」

「『私を倒せば結界は解けるわ』」

「そうか。では少年たちよ。今回の襲撃の件に関して不問にしてやるからあいつを倒せ。セリアもそれでいいな?」


尊大な口調で僕らに命令するセリア先輩の父親。でもさ、そんな上から言われて僕らがハイと言うと思うのかっての


「「断る」」

「なっ!」

「貴様ら!そんな態度でいいのか?せっかく不問にしてやるというのに。このままだと貴様らの国に迷惑がかかるのだぞ」

「「そんなの関係ないね!」」


国のことを脅されたって別に僕らは関係ない。そもそもそんなことで脅しになると思っているのは笑うしかない。なんで僕らがここにいるのかもう少し頭を回してほしいよ


「自分の国がどうなってもいいのか?」

「僕は『転移者』だ。この世界の人間じゃない…だからお前らにどうこうできるわけないんだよ」

「僕は『冥』の国の者だ。今はもう滅びた国の。だからそんな脅しに屈しるわけないね」


お互いに宣言する。言う必要なんてまったくなかったかもしれないけれど僕らは宣言する。宣言した瞬間に、『領域』の力が強くなったように感じた。いや具体的に何がどうなったって言われてもまったくわからないんだけどさ、なんとなくそう思ったんだ


「『イフリート』」

『私は彼らについていくと決めた。その邪魔はさせない』

「『そうか』」

「…貴様ら!そんなことを言ったらどうなるのかわからないのか!」

「正直わかりたくないね!」


最初の国しかり、風の国しかり、どこの国の王様も考えることがなーんか小物臭いというか情けないんだよな。陰険で。ならもう自分で決めるしかないっていうのに。


「そっちがその気ならそれでいい。僕は戦い続ける!」


ダンジョンの時のクレアや今回みたいに先輩のために戦うことだけをしていたいけどそうもいかないみたいだな。誰かのために戦うために世界を敵に回すことになってしまっても僕はそれを受け入れてやる。それが僕がこの世界でしたいことだ。誰かに認めてもらうために、その『誰か』を守る。どんだけバカなことと言われようが、僕はこの道を突き進んでやる


「『まあでも、今は眠っていてもらおうかしら?「蟲の世界」』」


あいつが『世界』を発動する。すると国の重役たちは揃いも揃ってみんなその場に倒れてしまう。意識を失っていないのは僕とクレア、セリア先輩にシェミン先輩、それから風の国の人たち数名


「『さて、これで状況はわかったわね?私たちを倒せばこの二人は解放される。でも逆に倒されれば』」

「死ぬのはわかっているよ」

「『そう…』」


向こうの人数を確認する、あいつに王様、それから重役らしき人が全部で5人つまり4対7の戦いか。イフリートも数に入れることができるので実質5対7と。数の上では不利だけどまあこれくらい問題ないね…ってあれ?


「いいえ、私がそちらに加わりますので同じになります」

「シズク…」

「お父様、私もシオンのためにお父様と戦います」

『まあ私もいるからこっちの方が数増えちゃうんだけどね〜』

「シズク先輩」


うっかりシズク先輩も数に入れていたから数え間違えてしまったよ。それにウィンディーネもこちら側についてくれるみたいだ。でも、人数が同じなら間違いなく勝てる、あいつ以外には。あいつだけは絶対に油断してはいけない。僕とクレアの二人がかりでも勝てなかったから


『それじゃあシンプルにしてもらったことだし、ちゃっちゃと済ませちゃおっか』

「そうだな」

「基本的に一対一の戦いになる…シズク」

「私はお父様と戦います」

『ならあいつはセリアがしなさい。おそらく一番まともに戦えるはずよ』

「それじゃあ王様は…ミライとクレアどちらがいく?」

「僕はイフリートとセットだからミライよろしく」

「了解!まあ一番適任だろうし」

「私が…二人と…戦うからクレアくんは…一人で十分」

『おそらく私たちが一番楽だしさっさと終わらせて他の援護に向かうわよ!』


素早くみんなで意識のすり合わせを行う。それじゃあさっさと、戦うとしますか!


「『放電(thunder)』」


電撃を王様に向かって放つ。そして同時に距離を詰める。正確には他の人たちと引き離すためにあえて突っ込んでいく


「まったく、我が戦うと思うのか?おい」

「『ええ、任せて「傀儡」』」

「!」


電撃の進路に急に水の壁が生まれて打ち消された。水の魔法、それが意味するのはつまり


「シオンと戦うが良い」

「逃げるとは卑怯な」

「逃げる?なぜ王が戦わなければならぬ」

「…」

『ウィンディはこちらについているし、相手も洗脳されているから本来の力は出しにくい…だからあなたでも勝てるわよ』

「…わかったよ。待っててください。必ず助けます」


それでも向かっていく勢いはそのままに、向かう先を王様からシオン先輩に変えて進む


「待て」

「お父様の相手は私がします」

「あなたたちの相手は…私」

「僕と戦ってもらうよ」

「お前の相手は俺だ」

「『ええ、あなたは他と少しばかり違うようね…なるほど抑止力ね』」

「俺のスキルはこの際関係ない」

「『ええ、今はどちらが勝つかの戦い、それだけよ』」


あちこちで戦いが始まる。風の国のそれから僕らのこれからをかけた戦いが始まる

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