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電気使いは今日もノリで生きる  作者: 歩海
第6章 風の国の戦い
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託されたモノ

ちょっとずつ更新頻度を戻していければなと思っています

葉月二週目風曜日


『そういえば、ミライ、「(metamo)(rphose)」についてなんだけど』


「命」の国から立ち去った時にイフリートから言われた言葉。僕の記憶の一部を消してしまった魔法、『(metamo)(rphose)』。それについてイフリートから言われた言葉がある


「それはもう、二度と使わないよ…みんなの記憶を失いたくないから」

『そのことなら大丈夫よ』

「え?」


記憶を失う、そんなリスクがあると知ったのでそれをどんどん利用しようとは思えなかった。『電気鎧(armor)第三形態(third)』でも同じようなことはあったけれどあれとはなんか違う。『電気鎧(armor)第三形態(third)』はリスク自体は僕しか関係ないのでそこまで意識したことがない。早く死ぬかもしれないとはいえ、それはこの世界に来た以上どうしようもない。でも、みんなの記憶を失うことだけはできればやめておきたい。そんな僕に対してイフリートは優しく言葉をかける


『大丈夫よ、あなたの魔力の中に、あなたが本来持っていなかった魔力があるわね』

「え?」


そんなことを言われてもまったくわからない。そもそも魔力ってなんだよ。知らないんだけど。人より量が多いとは言われてもさ。てか自分じゃない魔力があることって普通あり得るのか?


『普通はありえないわね…でも特別なことが起こればあり得るわ』

「何が起きたんだよ」

『イヨさんのことよ』

「…」


イヨさん。「命」の国で出会い、別れた少女の事を思い出す。彼女の最後なんて特に今でも鮮明に思い出すことができる。それだけ忘れる事ができない最期だった。年頃の思春期の男子ならば感じるものがあるのかもしれないが、僕としてはそんな低俗な事にしたくなかった。あの時の彼女の感情をちゃんと尊重してあげたかった。ああ、悔やむのならばきちんと返事をしてあげればよかった。彼女もわかっていただろうけど、僕が彼女に対して恋愛感情をまったく抱いていない事に


「それが今更どうしたんだよ」

『あなたの中に、イヨさんの魔力が残っているわ』

「?でもアルトリアを倒した時に」

『ええ、他の人の分は全部消えたわ。でも彼女だけ少しだけ残っているのよ』

「そっか…でもそれが何の関係があるんだ?」

『イヨさんの魔力がね、いわゆるバックアップみたいになってるのよ。だからこれからどんだけ「(metamo)(rphose)」を使ったとしても記憶を失う事はないわ』

「…」

『クレアにとっての私みたいなものよ…ああ、でも一つだけ違う事があるわね』


それがずっと、僕の心に残っていた。その次の言葉がそれだけ印象的だったから


…それだけあなたを想っているのでしょうね


想っていたという過去形ではなく、想っているそう、現在形で話していたから


だから僕は、この魔法を大切に使う!


「なぜ、魔法を受けても傷一つ負っていないんだ?」

「誰かみたものはいないのか?」

「それをペラペラ話すわけないでしょうに『放電(thunder)』」


電撃を放つ。僕のほぼ自爆特攻を含む攻撃を受けて兵士たちは約4割が地に伏している。まだまだ先は長いな


「『創造(creat)』」

「うおおおおお」

「待て!早まるな」


突っ込んできた兵士が一人。それを冷静に砂鉄の剣で斬りつける。


「むっ」


持っていた剣で防がれたか。でもさ、この砂鉄たちって僕の魔法で操っているわけだからさ、この距離なら多分いける


「がはっ」


砂鉄を伸ばして相手の背中を取り、そのまま後ろから腹を貫く。さすがに急所は避けていると思うから死ぬ事はないはずだ。急所を避けたって言っても要は心臓を貫いていないってことなんだけどさ


「おい、しっかりしろ!」


そのまま砂鉄を回収するように引き戻す。うん、やっぱりこのくらいの距離ならばある程度の操作が可能だ。ムチのようにしならさえながら相手の方を見る。今の僕の攻撃を見て警戒をさらに強めたのか距離を取っている。あ、さっき刺した人の救急治療が行われている。まあ死なせる気はないから邪魔しないけどね


「相手の攻撃範囲を見失うな!少し遠距離に対応できていると言っても遠距離はそこまで怖くない!」

「ミライについて研究するのはいいけど、僕を忘れないでね『炎の剣』」


後ろでクレアが無数に剣を生み出してそれを兵士たちに降り注がせる。はぁ、無意識にやっているのだろうけどこう、なんていうか実力の差を見せつけられているようでちょっと複雑だな


「水属性のスキルを持つものが中心となって防御陣を敷くんだ!」

「了解!『水の壁』」


おお、あちこちで水の柱が立つように大きな水の壁が出現して炎の剣を受け止めている。まあ確かに炎にとって水は天敵だもんな。火は水で消える。当たり前の知識だ。でも、


「どうする?今僕の電気を当てれば全部まとめて感電させられるけど」

「悪いけど、邪魔しないでね」


だよね。ここはやっぱり自分の力を試したくなるよね。てかさっきから僕だけが戦っていたからウズウズしていたんだろ?式場に突入してからは僕らは脇役になるわけだし、ここで思いっきり発散したいよね


「…力を貸して、イフリート」

『ええ、もちろんよ』


クレアのそばにイフリートが浮かぶ。ただそれだけのこと。そしてクレアは少しだけ深呼吸をし、そして


「水を全て吹き飛ばせ!『精霊の炎』」


今までのように無数に出現させるのではなく、一つだけ、一つだけクレアの前に出現する。そして、クレアはそれを水の壁めがけて突き出した


「おお」

『ま、初めてだしこんなもんか。向こうもかなりの使い手みたいだし』


炎と水が相殺されて、そして水が全て消えた。正確には全て蒸発した。あれだけの水を相殺するだけの熱量を持った炎、それが『精霊の炎』か。


「ばかな!我々の水魔法を」

「消すのがクレアの本気だよ!クレア、もう一度!」

「おう!」

「また、今の魔法が」


そんなことするかよ。後ろに手を突き出せばクレアがまた僕に向かって手を突き出してくれている。もう一度お互いの魔力をリンクさせる。


「『電気の玉』」


電気の玉を大量に生み出しそれを相手めがけて飛ばしていく。そして水蒸気でかなり視界が悪くなっているところにたどり着いた瞬間、


「『遠隔起動(remote)』」


それらを全て一気に爆発させる。それによってあたり一面に広がっていた水蒸気が全て電気分解され、水素と酸素に分解される。さらに


「『発火』」


電気の玉に纏わせていたクレアの魔力によって小さな炎の爆発を発生させる。そう、この世界に来てなんど使ったかわからない初見殺しの大技


『まあこれはどちらかっていうと水素爆発だけどねー。みんな爆発に注意しなさい。あ、「領域」を使っても無駄よ?あれ自然現象の一種だから』

「『電気鎧(armor)第三形態(third)』」

「『炎の鎧』」


僕とクレアはリンクを解除するとお互いに自分の魔力の鎧を身にまとって爆発に備える。先輩たちもできれば防御してくれているとありがたいんだけど…まあ先輩たちだし大丈夫か


僕らの目の前でかなり大規模な爆発が発生し、備えていたにもかかわらず、僕は爆風で吹き飛ばされそうになった。

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