表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電気使いは今日もノリで生きる  作者: 歩海
第5章 バックアップ
200/317

やっぱりすんなりとはいかないよね

今回で200話に到達しました!

これからも頑張っていこうと思います

葉月一週目火曜日


イヨさんとひたすら通路を走る。なんとなく見たことがある景色になってきた。そういえば昨日もここを走ったっけ。ということはもうすぐ出口になるっていうことだな。


「目の前に誰もいる感じがしない・・・もう脱出できる」

「そうなん・・・ですね」


息が上がってきているな。無理もない今までこんなに運動することなんてほとんどなかったんだろうし。それにミイさんと違って戦闘用の魔法を扱っているわけでもないしな。


「ここから出てから・・・そういえば道大丈夫かな」

「え?」


だってここに二回来たけどどちらも気がついたらきていたって感じだし昨日も帰りは確かにここからメイさんの家に歩いたけどさ、疲労困憊でまともに道なんて覚えていないよ・・・。それに夜でよく周りが見えなかったししょうがないよね


「まあ外に出ることができればこっちのもんだし大丈夫だよ」

「それならいいんですけど」


外に出れれば向こうもこっちのことを探知することがほとんどできなくなるだから追いつかれるとかそういうことが全くなくなるといってもいい。それに感知能力が高いのはフタバさんだしそれに最強のイフリートだっている。ここが問題なのは相手の陣地であるということにすぎないからな


「あとはここを突っ切るだけだ・・・今日はそこまでなにごともなく終われそうだな」

「そうですね」

「『それは困る』」

「「!」」


目の前に・・・ミイさんがいた。いや、ミイさんなのか?見た目はそのままなんだけどなんていうか雰囲気が違う?でもまあ女性って結構色々な顔を持っているっていうしそこまで不自然じゃないのかな


「ミイ?どうしたの?」

「やっぱりおかしいの?」

「はい。見た目はミイですけど・・・でも、ミイじゃない」

「『ふむ、この器と同じ顔をしているということはクローンのどれかか。そして・・・』」

「僕はミライ・・・お前は魔族の王だな?」


イヨさんのこの反応とそしてそれに対する相手の反応からみるにもうすでに中身が入れ替わっているのか。というかいつの間に乗っ取ったんだよ。それにしてはイフリートは何も言っていなかったけど


「『まあ我はまだこの器に囚われているからな』」

「お前、こっちの思考を読めるのかよ」


だとしたらかなりまずいぞ。思考が読めるっていうことはつまり作戦とかが全て無駄になる可能性が高い。基本的に僕の魔法は初見殺しの色が強いのでそれができないとなるとかなり厳しい戦いになる。まあどう考えても向こうのほうが格上なんだけどね


「『今の状況で人間が思うことなど基本同じよ』」

「あ、はい」


積み重ねた経験というやつですか。つまり昔にも同じように誰かしらの肉体を使って転生したとでも言うのだろうか。てかこいつ一体誰なんだよ


「『そういえば質問に答えてやろう。我の名はそうだな・・・ヴァンパイア・ロードとでも呼ぶがよい』」

「つまりは吸血鬼の王ということだな」

「『ふむ?』」

「ん?ヴァンパイアって要は吸血鬼のことだろ?」

「『そうなんだが・・・まあよい』」


まあよいって言われたら気になるだろうが。でも今はそれを議論しても始まらない。今大切なのはここからどうやって逃げ出すのかってことだ。こいつは出口の前の壁に寄りかかっていた。つまりこっちの存在を認知していたということになる。・・・?そういえば


「なるほどね。吸血鬼だからお前の存在に気がつかなかったのか?いやでもミイさんの体だから人間の電波をまとっているはずなんだが」

「『ほお?人間専用の感知魔法とな。だがすまないな。我にはその程度の魔法は効かない』」

「素でステルス能力を持っているのか」


まあ吸血鬼って鏡に映らないとかそういう逸話があるしな。それがこの世界では探知不可っていう形で現れているんだろうな。そうなれば他の例えば・・・太陽が苦手とかニンニクが苦手とか十字架に弱いとかそういうのはどうなるんだろう


「ミイは・・・どうなってるの?」

「『ん?この器か?まあ貴様らに希望を持たせるのも酷な話だし端的に伝えるが・・・死んだ、と思ってくれ』」

「そんな・・・」

「・・・」


改めて突きつけられると気が滅入るけれども、それもまあ当然といえば当然だよな。乗っ取られるわけだから当然中の人が死んでしまうとかそういうこともあり得るだろう。でも、もしかしたら


「お前をすぐに倒せば、解放されたりしないのか?」

「『・・・そうだな。希望を持たせたくはないがそれは正しい。我を今殺せばこの器は救われる』」

「よかった・・・!」


嬉しそうな表情をするイヨさんとは対照的に僕の心境は穏やかではない。こいつがことあるごとに言っている『希望を持たせたくはない』という言葉、その裏にある意味をとればそれはつまり


「僕たちでは倒せないということか?」

「『まあ、そうだな。たかだか人間が二人。我を倒せるとは思えん』」

「悔しいけど真実かもな」


悔やんでもしょうがないけれどももし僕がイフリートと正式に契約をしていたのなら可能性があったかもしれない。また、楠みたいにかなり珍しいスキルを手に入れていたのなら、いやそもそもサリア先輩みたいに強いスキルならば・・・と思わずにはいられない。だが現実は非情だ。僕は契約をしていないし僕のスキルは平凡で普通なスキルだ。アドバンテージがあるとすれば『領域』や粉塵爆発などユニークな魔法・・・これが珍しいのかな?ま、でもそれを駆使すれば・・・って思いたいが


「『貴様らの実力はなんとなくわかるが、無理だな。それに特にお前、ここに来るまでにかなり疲弊しておる。全快の状態ならわからないでもないが、手負いの状態ではな』」


そう、今もずっと『電気鎧(armor)第三形態(third)』を発動させているし今までの戦闘で疲労が蓄積している。そんな状態で相手は古の王。自称だからそこだけが救いだけどそんなことに期待したくない


「なるほどね。お互いに僕らが負けるということは理解しているわけだ。そこで聞くんだけど僕らを見逃す気はあるのか?」

「『残念ながらない。本当ならば貴様だけでも見逃してあげたいのだがな』」

「へえ?」

「『貴重な使い手だ。だが貴様はこの研究を潰そうとしているらしいし・・・まあ我もここの者にかける思いぐらいはあるものよな』」

「なるほどね」


言葉を紡ぎながら構えを取る。こいつはどうやら根っからのクズとか完全に利用していて復活したからあとは知らないとか言って切り捨てるやつではないことはわかった。もしかしたら他の王様もって考えているのかもしれないけどそれでも思うことがあるって声に出せるのはすごいことだよな


「『さて、できれば抵抗して欲しくはないが』」

「はいそうですかって言って死んでいくやつなんて誰もいないだろ」

「『それもそうだな』」

「イヨさん、下がってて」

「『二人掛かりでこないのか?』」

「訂正、お前やっぱり性格悪いわ」


さっき研究者に見せた優しさを考えるに今でもきっとミイさんに拳を向けるのをためらうかもしれない。というかそもそもつい最近まで共に過ごした仲間を倒すことなんてなかなか難しいしな。というわけでいざという時にためらってしまわれるとこっちも困るので一歩引いていてもらう。


「でも安心して今日は殺さないから」

「『殺せない。の間違いであろう?』」

「ああ、そうだよ!」


この世界に来てから初めての王との戦いが始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ