知りすぎるとこうなるよね
葉月一週目月曜日
「うわっと」
きゅ、急にまた電撃を放ってこないでよ。反応できなくて少しばかり傷を負っちゃったじゃないか。
『いやあなた最低よ?自分の言った言葉を見返してみなさい』
僕が言った言葉?えっと確か、クローンなんて本来生まれてきてはいけない命・・・あ!
『こんの考えなし!』
そうだ、そうだよ。僕の発言って目の前にいるイヨさんの命を否定することに等しいじゃないか。そりゃ攻撃したくもなるよ。おまえは生まれてきたことが間違っているって言われたんだもの。よくこの手の話は聞くけどさ、聞いた時に大抵怒りとか覚えるけどでも僕はそれと全く同じことをしてしまったんだよね。もちろん・・いや人を傷つけてしまったことは間違いないんだし何も言わないでおこう。僕が間違っていた。それだけでいい。
「私は・・・私は、生まれてきてはいけないの?」
「そういうつもりじゃ」
「じゃあどういう意味で言ったのよ!命を生み出すのが間違っているって」
「それは・・・」
イヨさんに問い詰められて僕は何も言えなかった。僕の感情はどうなっているんだろう。だめだ考えがまとまらない。ただ、激しい自己嫌悪に苛まれているのだけはわかる。僕はどうしようもないことを言ってしまったのだと。
『・・・やっぱりあなた』
イフリート?なにもしかして僕が言った理由とかあるの?・・・ごめん今の言葉も忘れて。僕は自分で言った言葉をきちんと受け止めなければならない。
『そうね。ちゃんと時期がきたら教えるわ。でも今はこの状況をなんとかしなさい』
「ほら!なにも言えないじゃない、図星を衝かれたから言い返せないのよ」
「そういうわけじゃ「『電撃』」うおっと」
またしても電撃が飛んでくる。落ち着いて対処したいけど頭が混乱しているので『領域』を使って弾き飛ばす。
「くっ・・・」
「ねえ、攻撃するのをやめてくれないかな?」
「あなたが死ねばやめてあげるわよ」
困ったな。ここまで激昂されるとは思いもよらなかったんだけど。というかキャラもとい性格が変わりすぎじゃないか?女子ってみんなこうなのか?
『いや普通だれもこうなるでしょ・・・あなたは違うの?』
僕?うーん、そもそも僕に注目してくれる人がいなかったからそんなこと言われたこともないからね。イジメとかも楠に対して行われていたけど僕に対してはなにもなかったし・・・そもそもなにも関わりに来る人がいなかったからね!最低限の会話しかなかったよ。
『ん?普通に会話していたでしょ?』
なんていうのかなー僕のことを見てくれてる人がいなかったってことかな?会話はあるんだけどなんていうかこう、感じるんだよね。
『被害妄想じゃなくて?』
まあそれもあるのかもしれないけど。今にして思えばね。僕も周りの人に対して壁を作っていた自覚があるし。最初に角先と話してから他の人にまで絡みに行かなかったから・・・って原因僕自身じゃねえか
『そうよ大抵誰かがなんとかしてくれるとかそんなバカみたいな妄想はやめて動きなさい。そうすれば見てくれる人がいるわよ・・・きっといや、立ち上がろうとしたときに誰にも言われなかったら凹むけどさ』
現実はそう甘くないって話だよね。てかそんなことはどうでもよくはないけど今は置いといて、この状況どうしよっか。さっきから何発も電撃を打ってきているけど僕の方が魔力は上なのかな?全部防げる
「なんで・・・『電撃』」
「だから落ち着きましょう?『電撃』」
向かってくる電撃に合わせてこちらも電撃を当てていく。『領域』発動中で感知能力が上がっているから合わせることが容易い。いや、これはどちらかといえば向こうの電撃に反応して勝手に向かって行っている感じなのかな?
「・・・どうして私に攻撃してこないのよ」
「いや、その僕はあなたに攻撃する気は全くありません」
「・・・」
だから攻撃を止めてくれるとありがたいんだけど。あーこうなったらもう押さえつけた方がいいのかな?
『どちらにしても早く収集させた方がいいわ。この騒ぎだものいつ誰がくるかわかったもんじゃない』
「それもそうだね『電気鎧・第三形態』」
肉体を強制的に強化して押さえつけることにしよう。まずはこの向かってくる電撃をなんとかする必要があるんだけど・・そうだな
「『電気の領域』」
「全部弾き飛ばした・・・え?」
消しとばした後すぐに足に電気を集中させて高く飛ぶ。一瞬のことだから見逃してくれていると助かる。そして周りの建物の壁にぶつかりながら回り込みイヨさんの後ろを取る
「後ろですね」
「捕まえ・・・てない!」
さすがに壁を蹴る音で気がつかれたのか躱されてしまった。あ、でも今の攻防で少しだけ電撃がやんだ。次の魔法を放ってくる前になんとかして止めないと
「落ち着いてください!」
「どうしてよ!じゃあいっそ私を殺してよ!もう・・・嫌だから。そんなことを言うなら、ねえ!」
「・・・それはできない」
「なら私にどうしろって言うのよ!」
「それは同感だね」
「「!」」
『騒ぎすぎ・・・いや違うわね』
いつの間にか僕とイヨさんの近くに白衣をきた男が一人近づいてきていた。あのスルトさんが着ていた白衣と同じものだな。同じ研究室から来たのだろうか。『いやさすがにどこでも同じでしょ』あ、バッチとか見ればわかるか
「ルドーさん」
「やあ14。何をしているんだい?それにそちらの君も、なんてことを言ってくれたんだよ。私たちの可愛い子に」
「・・・」
この男はルドーっていうのか。というか今イヨさんの言い方明らかにおかしかったんだけど・・・だから嫌いなんだよ。クローンだなんて。
「さてと、もう戻りなさい。本来ならもう少し外に出ててもいいんだけどさすがにね。ああ、そこに迎えが来ているから一緒に帰るといい」
「どうして・・・」
「帰りなさい」
「はい」
明らかにしょんぼりしながらイヨさんはどこかへ歩いていく。いや、迎えに来ているからってそれで帰るのかよ。
「イヨさ」
「君には私から話があるんだが」
「・・・」
慌てて止めようとしたけれど逆にこの男に止められてしまった。
「君は・・・どこまで知ったのかな?」
「別に、イヨさんとナナさんがメイさんのクローン人間だということだけです。それであなたたちが何を実験しているかなんて知りませんよ」
「なるほどね。でもどうして気がついたんだい?」
「同じ顔の人間がそうそう何人もいるわけないでしょうに」
「ふむ」
僕の返答を聞いて考え込んでしまう。あのーじゃあ僕もう行っていいですかね
「どこに行こうとしているんだい?まだ話は終わっていないよ?」
「どんな話があるっていうんですか」
「そうだね。君の目的を聞こうか」
「・・・」
『言っちゃダメよ絶対にあなたの目的を言ってはダメだからね。これはフリじゃないわよ。そんなことを言ってしまったらどうなるのかわかっているわよね』
ああ、もう、大丈夫だよ。いや、ありがとう。イフリートが言ってくれなかったら多分脳死で答えていたと思う。そうだよね。相手の戦力とかが全くわかっていないから研究を潰しますとかそんなこと言えるわけはないよね。
「何か目的があったからこうして接近したんだろう?」
「たまたまですよメイさんとは偶然知り合って、ナナさんもイヨさんもなんか襲われそうになっていたから助けただけです」
「そう、だがそれだけでよく気がついたね」
「そういう話を聞いたことがあるので」
「ほぉ?」
あ、これ答え方間違えたかも。多分秘密裏に研究していたことだよね。でも僕の口ぶりだとまるでそのような研究が行われているという情報が入ってきたのでその真偽を確かめに来ました的な風に捉えられてもしょうがないよね。
「なるほどね。君にはきちんと話を聞く必要がありそうだ」
「お断りします」
「やはり、断るか。だが、悪いけど君を拘束させてもらう」
なんでこうなるんだよー。一つ間違えただけで終了とかこの世界はむずすぎる。これは一度クレアと話をしておく必要が『それはダメ』なんでだよ
『いいから・・・くるわよ。構えて!』
ああもうわかったよ。この場をなんとかしてからゆっくりと聞きますよ!