乙女の秘密を探るのは良くない
葉月一週目月曜日
「おいしーい、これミライくんが作ったの?」
「メイさんと一緒にね」
「そうなんだ!メイもありがとうね」
「うん」
僕らは僕とメイさんが作ったサンドイッチを昼食で食べていた。クレアとメイさんの初顔合わせも無事に何事もなく進んだ。解せぬ。なぜ僕の時はというか僕はこんなに一悶着あったというのにクレアだけこんなにスムーズなんだ。イケメンだからか?そうなのか?
『まああんたは出会い頭にゴロツキ三人に電撃をぶち当ててたし印象は悪いよね』
そこは普通助けてくれたからってことで警戒心が低くなるはずじゃないの?どうして逆に警戒を強められなければならないんだよ。『さあ?本人にしかわからないことでしょ?』あの時にメイさんが何を感じたのかなんてメイさん以外にはわかるはずもないし、あの状況でどんな風に僕を感じるかなんて人それぞれだからわからによね。僕の妄想・・・自分で言って辛いけど、それみたく助けてくれて素敵な人だなって思う人もいればなにこいつって思う人もいるわけで
『あんたの妄想気持ち悪いんだけど』
ねえ、ひどくない?もう少しオブラートに包むことできないの?『吐き気を耐えることができないわね』それ包めてないから。むしろ具体的な分、ひどくなっているんだけど。
「いやぁ、ありがとね、メイご馳走様」
「うん、美味しかったよメイちゃん」
「お粗末様でした」
「・・・」
ねえ、イフリート、クレアもフランさんもどちらも僕に感謝の言葉をかけてくれないんだけど。男女差別なのか?
『怒らないの。いいじゃない同級生のむさい男か年下のかわいい女の子かって言われたらそりゃみんな女の子の方を選ぶでしょ?』
そう言われてしまえば納得するしかないんだけど。てかクレアのやつナチュラルにメイさんのことをちゃん付けで呼んでいるんだけど。こ、これがコミュニケーション能力が高いもののやり方なのか。確かにもうクレアに対してかなり警戒を解いているんだけど。僕とは雲泥の差だ。
『私が帰ってきてからずっとそうなんだけどミライ何かした?変なことしようとしてない?』
なにも使てないんだけど。強いて言うなら相手のスキルを探ろうとしたくらいかな?あの子僕と同じ『電気』スキルの持ち主みたいだから
「ありがと、じゃあ片付けは私がするね」
「それなら僕も」
「クレアはいいわ。あなたも確か火属性の使い手よね?なら釜戸に火をつけたりとかしてほしいわ」
「え、それくらいいいけど・・他にも何かできないかな?二日も泊めてもらうっていうのにそれだけじゃさすがに割りに合わないよ」
「え?別にいいけど・・・そうね、じゃあメイの魔法を手伝ってもらおうかしら?あなたと同じ『火』スキルを持っているの」
「へえ、そうなんだ」
あれ、あの子確かに『電気』スキルだと思ったんだけどな。僕の見間違えか?そう思ってメイさんの方を向いてみるとビクッと肩が上がった。・・・これはどういうことだ?
「ミライくんがどうしたの?」
「え、いや・・・」
「あーどうやら僕が最初にゴロツキを飛ばした時に少しだけやり過ぎてしまってね。それで怯えられているんだ」
「そうなの、大丈夫よメイ、ミライくんはあなたを襲うことができるはずがないわ、ほんとヘタレだもの」
「・・・」
大変反論したい内容が語られているんだけどいま反論したらきっと色々と台無しになりそうなので自重しよう。
『そうね、それがいいわ』
イフリートも何か感じたのですか?『無理に敬語にしなくてもいいわめんどくさいし』それなら遠慮なく。確かにあのこのスキルは『電気』だった。再三言って申し訳ないけど
『いいわ。辿り着いているから教えてもいいけどあの子のスキルは「火」じゃないわ。だからミライの言っていることで間違いないでしょうね・・・あとこれ一応言っておくけどクレアには秘密ね?』
それは構わないけどいまイフリートが話していること全部筒抜けじゃないのか?それは大丈夫?てかやっぱり火の精霊というだけあって火属性のスキルを持っているか否かはわかるんだな。
『大丈夫よ。あなたにしか話しかけてないし普通契約者としか話さないけどまあ私の場合は特別だしね』
そういうものなのか。いわゆるテレパシーとかそういう感じなのかな。それはそうと、秘密ねぇ。それ以外にはなにも違和感を感じないけどさ
『・・・私は違和感感じまくりだけどね。でもそれが確定しない以上下手に動かない方がいいわ』
イフリートは何か感じているのか。でも下手に動かないってのは賛成。動きたくもないし
「それでさ、どうかな?クレアくん頼める?来年学校に来ることが決まっているからさーそれに火属性の魔法ほとんど使えないみたいでちょっとものを発火させることしかできないんだって」
「へえ、じゃあ後輩になるのかな?」
「は、はい」
「そっか、僕は構わないけどメイちゃんはどう?何かきっかけがあればいろんな魔法を使うことができるようになるかもしれないし」
「わ、私は・・・」
『あの子、嘘が下手みたいね。ミライ、さすがに助けてあげて』
まあ、その方がいいだろうな。何か事情があって隠しているのかもしれないしこういうのは表に出さない方がいいって相場が決まっているからな。こういうのを探ろうとするから変なところに飛びして大惨事になってしまうんだよ。
「おいおい、クレア、メイさんにも予定とかあるだろうしそんなグイグイいっても困らせるだけだろ?」
「!」
「ああ、それもそうか。フランさん、さすがに急すぎたみたいだ。メイちゃんもごめんね」
「い、いえ」
ねえ、僕が助けたことがそんなに意外?かなり目を見開かれて驚かれてしまったんだけど。そんなに驚いてしまったら何か隠していますよって感づかれてしまうんじゃない?大丈夫?
「そっか、今日確か予定があるんだっけ?」
「う、うん」
「そっかぁ。まあ時間の空いている時とかクレアくんの魔法を見るのもいいかもねそれくらいなら大丈夫でしょ?」
「それくらいなら・・・」
「よし、決まり!クレアくんもそれでいいかな?」
「構わないよ」
なんとかしのぎ切ったな。まあ対して強く追求されていたわけじゃないんだけど。
「あのミライさん」
「ん?僕?」
「あの、また襲われるかわからないのでついてきてもらえますか?」
「いいよ」
これは多分あれかな。どうして助けたのか聞きたいとかあとはまあ僕が余計なことをフランさんに言わないようにという牽制を込めてってところだろうな。波風立てたいわけじゃないしここはおとなしく従っておくか。別に話すつもりはないんだけどね。
「そっかー。ミライくんも悪いね」
「いいよ、お世話になるんだしそれに確かに一度襲って失敗したけど二回目があるかもだしね。もし襲われたら次はもう・・・ね?」
とりあえずどうしよっかな。命はできれば奪いたくないから・・・そうだな足を少しだけ痛めつけるか。いや普通に電撃をまたぶつければ問題ないか。加減せずにやればそれなりのダメージになるだろうし。
『あんた・・・まあいいわ』
イフリートが何か言いかけていたみたいだけど僕は気にせずにメイさんと一緒に出発した。さて、予定があるって話だけど一体どこに向かうのかな?フランさんが知っていたってことは前々から決まっていたっぽいけどさ。




