最後の階層
おかげさまでpv30000達成しました
ありがとうございます
一部矛盾点がありましたので訂正しました
???
やった。クイーンの巨体が完全に崩れ落ちる。僕たちの勝利だ。それを証明するかのように塔の扉が開いた
「まだだミライ!今こっちに大量の蟻が」
「そうだ・・・」
はやくここから脱出しないと蟻の大群に潰されてしまう。塔に逃げ込めないかな。くっ、魔力を全て注ぎ込んでしまったから・・・あ、普通に体は動くか。むしろ『電気鎧・第三形態』の反動で動けないほうが正しいな
「クレア、動ける?」
「あ、ああ」
お互いに肩を支え合って歩く。塔までそこまで距離はない。僕と違ってクレアは短期間で魔力の全消費を二回と全再生を1回。僕は詳しくはないけど多分体にかなり負担がかかることはわかる。回復も自然なものではなく薬による強制的なもの。そっちの副作用が起きてもおかしく・・・あ、それ僕にも副作用がくるんじゃないか。それがなにかわからないけど多分いいものじゃないな。
「間に合うか?」
「さあ?向こうの居場所がわからないからなんともいえないよ。感知したくとも感知するだけの魔力すらないし」
「だね」
ゆっくり、ゆっくりと足を進めていく。途中、何度か振り返ろうかと思ったけど、やめた。どうせ追いつかれたら勝負にならない。生き延びるためにはやつらが来るよりも先に塔にたどり着くしかない。あと目測・・・何メートルだ?
「今そんなこと数えて何の意味があるの?」
「気休め?」
こういったことで意識をそらしておかないとふらついてうまく歩けないんだよ。意識も微妙にフラフラするし。
「つまり何か考えておかないと倒れると」
「そういうこと」
ま、といってもそこまで距離があるわけではなかったので無事にたどり着くことができた。ふと、出来心で振り返ってみると蟻がうじゃうじゃこっちに迫っていた。え、まってこれ塔の中にまで侵入してくるんじゃないのか?
「ミライここに謎のスイッチがある」
確かにみるからに押してくださいといわんばかりのスイッチがある。多分あれが塔の扉を動かすんだろうな。とりあえずさっさとスイッチを押す。目の前で扉が閉じる。ガンガンと音がするけど壊れる気配がない。よし、これで完全に逃げることができたな
「やったな」
「ああ」
ゆっくりすることができるので塔の中をみてみる。目の前に大きな螺旋階段があるくらいで特に何かがあるとかそういうわけではない。まあ階段の下に袋が置かれているがそれを考えなければなにもない。
「どうする?」
「ゆっくり休もう。魔力も回復させたいし」
おそらくここは安全地帯。だからこそゆっくりする。食べ物はないけどまあなんとかなるだろ
「いや、大丈夫。食べ物も沢山あるしね」
「え?」
「ほら」
クレアが袋の中身を確認してこっちに持ってくる。一体どうしたっていうんだ?
「あ」
なかに入っていたのは二人分の食事。こんなものをイフリートが準備しているとはいやそもそもダンジョンにこんなものがあるとは思えない。つまりこれは先に来たものが置いているということ。僕より先にここにきた人物といえばそれはユンさんたちだ。ユンさんたちがここに食べ物を置いていったに違いない。やっぱり僕たちのことを考えてくれていたんだ
「すごいなユンさん」
「ああ、僕たちがここに来ることを予測していたんだ。だからこうして食べ物を置いていた」
「最後の最後まで僕らのこと、考えてくれていたんだな」
それに一緒に入れられていたのは鍵。それを使うことで僕らは腕輪から完全に解放された。ユンさんたちの優しさを噛み締めながら僕らは食事をする。そして充分に休息を取り、塔の階段を上っていく。登っていきながら僕らは言葉を何も発しなかった。ずっと考えていた。僕がこのダンジョンに入ってからの出来事を、そしてその時に感じた思いを。
どれだけ上ったのだろう。一番上までたどり着いた。そこは、一つの大きな広間があった。何かがおかれているわけでもないただっ広い空間。
「ここは・・」
「広間?」
『よく来たわね。あーもー遅い!』
「「イフリート!」」
声がしたかと思うと目の前の空間が揺らぎ、そこから一人の小さな女の子が現れた。まさしく絵本で見る妖精のような姿をした少女。おそらくこの女の子が『火の精霊』イフリートなのだろう
『あんたたち本当に遅いわね。空間使いたちはとっくにここから脱出したっていうのに』
「もう?」
つまりはこの階層のボスを倒したということなのだろうか。つまりは僕らはもう倒す必要がないということなのだろうか?
『別にクリアでもいいわ。ここをまっすぐ進めば出れるし』
「?他に選択肢が?」
『ええ、最後の階層は選択制。このままクリアかボスを倒すか・・・まあ基本的に後者はないわ。あなたたちみたいなのしか提示しないもの』
「どういう・・意味ですか?」
聞いてはみたものの、なんとなくわかった。直感とでもいうべきだろうか。ここにいるのは僕、クレア、イフリート。特別な人にしか選べないというのならそれはおそらくイフリートとの契約。つまり、最後のボスは
「イフリート、あなたですね?」
「え?」
「ん?」
あれ?なにか間違えた?そういう流れかと思ったんだけど
「ミライ、さすがに戦力差をわかろう?多分僕らじゃ・・・いやユンさんたちを合わせても普通に負けるよ?」
「あーそれもそうか」
じゃあ誰になるんだ?いやそりゃ僕だってイフリートに勝てるとは思っていないよ。でもさ、ほら戦うことで力を示す的な?そういう展開かと思ったんですよ
『まーそれでもいいけどそれは一人の場合ね〜』
「!・・・まさ、か」
『そう、その通り。最後のボスは・・・あなたの戦友よ』
クレアと?ここにきてクレアと戦わなければならないのか。
『二人の実力はともかく将来性はどちらも申し分ないわ。契約して楽しそう。だから〜二人のうち強いほうと契約するわ』
「イフリート」
『なに?クレア』
「話し合いで決めてもいいのか?」
『え?まあーつまらないけどそれでもいいわ。決まるのなら、ね?』
クレアが僕のほうを向いてくる。僕もクレアに向き合う。話し合いで決まれば、それはそれでいいかもな・・・でも
「ミライ、僕から話すよ」
「ああ、その後で僕の話も聞いてくれ」
イフリートも言ったけど多分話し合いじゃ無理だな
「僕は・・・弱い。三階層のドラゴンとの戦いの時、ミライはドラゴン相手にユンさんたちに食らいついて戦い抜いた。僕は・・・なにもできなかった。ケイさんの援護、それも大したことはできていない。最終局面だって・・・ミライがあそこまで戦い抜かきゃ僕は戦えなかった。だから、僕は自分の力で戦えるようになりたい。それに。そもそも僕が強ければミライがここまで危険な目にあうことだって・・・サリア先輩たちが社会的地位を失うことだってなかったはずだ!だから僕は、力が欲しい。自分一人で切り拓く力を・・・それに」
そっか。それが、クレアの思いか・・・よかった。だいたい同じことを思っていて
「そうだよクレア。僕は・・・僕らは弱い。だから最初にユンさんたちに会った時にあそこまで弱者として成り下がるしかなかった。力がないから僕は選択肢を与えられることしかできなかった。特に4階層の時に自分の力のなさを感じたよ。片腕を失ったのは僕が弱いから。僕だって力が欲しいよ。それに僕は知ってる。クレアの能力が優れていることを・・・だから」
だから・・・そう。クレアだって最後の締めはそれに、だ
「「お前にだけは絶対に負けたくない」」
半年間だけどずっと一緒にいた。イフリートがどうとかそんなこと関係ない。僕は、いやクレアもか、僕らは互いに互いをずっと意識していた。だからどのみち僕らはここで戦っただろう。前口上なんざただの言い訳だ。自己弁護だ。お互いにそれはわかっている。強くなりたいでも、それ以前に、僕らは互いに負けるわけにはいかないんだ
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