3階層決着
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???
ミライが横で倒れるので支える。こいつ・・・あんなにすごい動きをしているからどれだけ鍛えているのかと思えば僕よりも筋肉少ないじゃないか。それだけあの魔法がやばいってことなんだろうけど。
「死んだのか?」
「いえ、意識を失っているだけです」
「そっか。それだけこいつは命を賭けていたってことなんだな」
ヤマトさんの言葉に僕もうなづく。こいつは巻き込まれただけ。イフリートに連れ去られた僕を追ってこのダンジョンにやってきただけ。それなのに、ここまで命を賭してくれている。その思いを僕は無下にしない
「頑張らないといけないな」
「そうですね」
ツキさんの言葉に返すのは短い意思表示のみ。ミライは自分の行動で自分の価値を示した。ヤマトさんもツキさんもユリさんもみんなミライのことを認めている。だから、負けられない。ミライは僕のライバルだ。良き戦友だ。だから、あいつにできたことを僕はできませんじゃ、話にならない。
「お!やる気だなルーキー」
「当たり前ですよ。僕は、負けるわけにはいかない」
ミライは意識しているのかわからないが、僕はイフリートと契約することを狙っている。自分の弱さによって知り合いが危険な目に会うのはもうこりごりだ。もちろん『朱雀』を殺すのに力がいるってのもあるけど、今はそれよりも、身近な人間を自分の力で守れるようになりたい
「『火の領域』!『流星』の軌道を正確に把握します!」
「頼むぞ!ミライのおかげで少し逸れそうだが、それを台無しにするなよ」
直前のミライの攻撃によってドラゴンはかすかに上を向いた。そのまま『流星』放出したので僕らの方向に真っ直ぐに向かってきているわけではない。だから前もって予測していた逸らしやすいポイントは変化している。ヤマトさんとツキさんは自分の魔法で精一杯だしユリさんも僕らにずっと『強化』をかけてくれている。だから僕がやるしかない。
「・・・!」
『領域』を最大限にまで広げ、できる限り早く正確なポイントを探す。・・・捉えた!
「『全力・魂の火剣』このポイント目掛けて全力で魔法を撃ち込んでください」
魔法を発動して位置を知らせる。ぶつかるまでに僅かながらズレが生じるから、それも合わせて計算しておく。このタイミングならば問題ない。あとは、二人の魔法が届くまで耐えることが僕の役目だ。
「うぐ・・・うぐぐ、」
なんて力だ気を抜けば一気に押し負ける。少しづつだが押されてきているのがわかる。でもできる限り同じ位置で押しとどめなければならない
・・・いや、本当にそうか?
ミライはあそこまで命をかけてくれた。最高の結果を出してくれた。それなのに僕は妥協で許されようとしているのか?確かに難易度の違いがあるかもしれない。でもどちらが難しいかなんてわからない。相性の問題やその時ののこり魔力などで変わる。ミライはたりない分を己の命で賄った・・・僕は?
昔聞いた一つの言葉を思い出すー『命を燃やせ』
この言葉の真意はわからない。でもこの言葉があるのなら、命は燃やすことができるのではないのだろうか。言葉には力がある。それだけ強い意味が意思がある。
「・・・『命を・・・』」
「クレアさん?」
どんな魔法にしよう・・・ああ、そうだ。この際だ苦手な近接魔法にすれば一石二鳥だな。『全力・魂の火剣』はそのままに腰に差していた剣を構える。魔力がないけれど関係ない。僕がこれから使うエネルギーは、魔力ではなく、生命力だから
「『浮遊』」
その場から高く飛び上がる。思いついたのは単純な魔法。特にひねりがあるわけでもないものすごく単純な魔法
「『命を燃やせ』」
僕の全身を青いな炎が包む。ああ、これが僕の命の灯火か。火をイメージするとほとんどの人間が赤い炎をイメージするがそれは間違いだ。それは正しく燃えていない悲しみの炎。美しく燃えた時、炎の色は青くなる。ああ、僕はきちんと命を燃やしているんだな
「クレアさん!いったいなにを」
「あああああああああああ!」
そのまま『流星』に向けて突っ込む。自分が放った魔法『全力・魂の火剣』目掛けて一直線に突っ込む。『全力・魂の火剣』と僕の命、合わせればきっと、予定の位置で止めることができる。
「なんて無謀な・・・『暴風・柳時雨』」
「あんの馬鹿野郎がぁ・・・お前も当然認めているに決まってんだろうがよぉ『風纏い・一閃』」
ツキさんとヤマトさんの魔法が飛んでくる。あ、よかった僕もなんだ。でも、それがわかっただけで満足だ。どうせ先にわかっていたところで僕の覚悟は変わらなかっただろうし
二人の魔法も激突し、『流星』をさらに上空へと軌道を変えていく。どうやらちゃんと押しとどめることができたみたいだ。あとは・・・思いっきり上へと跳ね上げる
「うおおおおおあああ!」
バキンっ
圧に耐えることができなかったのだろう、剣が折れてしまった。だが、それでもかなり軌道を変化させることに成功した。これならきっと・・・大丈夫だろう。落下しながら僕は真上を通り過ぎていく『流星』を見ながら僕は、意識を手放した
「本当に馬鹿だよお前らは」
手放す直前に自分ではない誰かの声を聞いた気がした。
意識を失ったクレアが落下していく。それをどこか呆然としながら眺めることしかできないツキ、ヤマト、ユリの三人。
「あいつも、命を賭けてたのか」
「イフリートに選ばれただけはありますね」
「そうだな、さて、どうなるか・・・」
『流星』はヤマトたちの方へむかう勢いが失われ、そして落下していった。ここまでは順調にことが進んでいる。あとはどれだけ爆風に巻き込まれるかだ。もうここまで来た以上天に任せるしかない・・・はずだった
「おい!あの黒い円は!」
「あれは隊長の魔法・・・?」
「やっぱり、国よりも戦友を俺はとるよ」
転移してどこか別の場所に移動したはずのユンとユキがいた。今ユンの魔法で連れてきたのだろうクレアもいる。
「これくらいなら大丈夫さ『四方結界』」
「私も手助けする『壁』」
『流星』が落下したのだろう。その爆風が彼らに向かって押し寄せるが、それをユンとユキ二人の魔法によって防ぐ。
「残り二人は・・・」
「あそこにいるだろ?」
ユンの指差した先、ドラゴンの真上にケイとハルはいた。
「『突撃』」
「『雷』」
それぞれが魔法を放ち、ドラゴンに叩き込む。『流星』にほとんどの魔力を込めていたのかこれに耐え得ることができず、静かにその身を地に伏せていった
「勝ったのか・・・」
「勝ったな」
「終わりましたね」
勝利宣言をつぶやいたあと倒れこむツキ、ヤマト、ユリの三人。三人ともミライとクレアに触発されて命をかけて魔法を発動したのだ。その反動で気を失ってしまった。同様にユキも倒れている。彼女は今まで魔力をセーブしていた分を一気に一つの魔法に集約させたのだ。疲労は他の人と変わりない
「向こうにいるケイとハルも魔力切れ・・・やれやれ、これだけの敵を9人で倒せたってのは大きいな。途中同士討ちさせたのがよかったが」
キメラアントの群れを雌のドラゴンの『流星』で一掃する。それは人数が少なかったからできた荒技でもある。人数が少なかったからこそ、最後に命を賭けた者たちの思いを汲み取り、一人、また一人と命をかけた魔法を使った。なんらかの後遺症が出るかもしれない危険を冒したからこそ薄氷の勝利をつかむことができたのだ。
「ここから立ち直れるかはそれぞれの生命力次第だな・・・ああ、そっか。ここがダンジョンで魔力にあふれているから大丈夫かな」
ダンジョンに存在する密度の高い魔力により、魔力の回復が早くそれで連続で高威力広範囲の魔法を使えたのもある。しかしそれに委ねることは危険であるー本来よりもペースが早くなる分肉体への反動が大きいためである。それでも、と、ユンは思う。
(ここまで一緒に戦ったんだわかるよ。誰も死にはしないってさ)
自らも意識が失い掛ける中そう、願った
ダンジョン3階層ボス、二匹の龍戦、決着
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