ドラゴンじゃないやつ襲来
???
さあ、とりあえずの方針が決まった。次に細かい戦闘の打ち合わせだ。
「まあミライは俺たちのことを気にせずにひたすら生き延びることに集中してくれ俺たちは俺たちでなんとかするから」
はい、作戦なんてありませんでした。この四人だけで連携をとったほうが動きやすいですもんねそうですよね。
「まあまあ、一応私の支援魔法の説明をしておきますね。反応速度が上昇する『加速』と身体能力増加の『強化』があります」
「なるほど」
と、うなづいてみているものの全く分かっていない。
「あの、ユリさんのスキルってなんなのですか?そんなにたくさんの支援魔法を使えるってことは、『聖』ですか?」
僕の脳裏には数々の付与魔法を用いて森脱出の貢献をしてくれた四万十さんの姿がちらつく。あの人もこういう魔法得意だったからなぁ。多分1パーティーに1『聖』使いとか言われても納得できるんだけど
「おや、すごいですね。私のスキルを見抜くなんて・・・もしかしてお知り合いにいるのですか?」
「はい、元クラスメート・・・つまり転移者のなかにいます」
「なるほど。さすが、というべきでしょうかね」
「お前ら話は済んだか?じゃあ討伐に向かうぞ。探索はそのあとだ・・・ここにいるので全員っていうのなら焦る必要もない」
ユンさんの言葉にうなづいてドラゴンの捜索を開始する。あんだけでかいんだしある程度近くに行けばすぐにわかると思うんだけどな
「でもまあ・・・念のため『感知《feel》』」
「僕も手伝うよ『熱探知』」
いつものように感知魔法を発動させ居場所を探る。あ、確かにユリさんの支援魔法がかかっているな。いつもよりかなり広範囲を探ることができる。
「!近くに敵の小隊が数は・・・13」
「は?クレアのほうもかよこっちにもおおよそ・・・10?多すぎてわからん」
クレアのほうと僕のほうでそれぞれそれなりの数がいる。それが意味するものはつまり・・・
「いつの間にか囲まれていたってことか」
「まずは数を減らす。クレア詳しい場所を教えてくれ」
「あ、あそこです・・・『火』」
クレアの攻撃魔法が放たれる。あ、これ僕も居場所を教えたほうがいいやつかな。
「こっち側は・・・って展開されてる!?はえぇ」
もういいや。こうなってしまえばやけだやけ。とりあえずあの辺りだってことがわかればなんとかしてくれるだろう
「『放電』」
「ハル!ミライが攻撃した付近に敵がいる。まとめてなぎ払え」
「了解!遠距離なら僕の武器が最大限に活かせる」
ほら、ちゃんと行動してくれた。やっぱりできる人ってこういう細かいことをきちんとしているんだね。ハルさんは手を天に掲げつぶやく。
「『雷の槍・五月雨式』」
上空に数多の槍の形をした雷が形成される。まじか。鳴村の比じゃないんだけど。
「降り注げ」
その言葉を合図にして一斉に雷が大地に降り注いでいく。なにがそこにいたのかはわからないが確実に殲滅されて行っていることはわかる。・・・でも、これは?
「気をつけてください・・・敵の数が増えました。その数不明!」
ハルさんが攻撃した瞬間一気に減ったんだけどその次の瞬間には倒された数の倍増えたんだけど
「お前ら気をつけろこれは、キメラアントだ。しかもこれは近くに巣がある感じだな個体の強さを見るに優に万は越えるぞ」
は?ユンさんなんてこというんですか。まあでも上空はドラゴンの領域だしそういう場所で生き残るのは地中に生きる蟻とかしか無理だったんだろうな。蟻であってるよね?アントって蟻だよね?まさかの叔母さんってオチはないよね。それもアリか。いや寒い。
「なにをブツブツ言っているんだ。ドラゴンもやべえがこいつらも同じくらいやばい。作戦を伝える。ハルが遠距離射撃で敵を粉砕。クレアはそれの援護、居場所を教えてくれ。ケイはハルの護衛兼接近した敵を倒してくれ。ユリは適宜味方の援護。ツキとユキはいまは待機。だが前線が破られた時にすぐ出られるようにしておけ。俺、ヤマト、ミライの三名はハルの範囲外の敵の殲滅。いくぞ!」
さすがユンさんだ。すぐに作戦を組み立てるなんて。待機を命じたのはおそらくドラゴンの襲来に備えてのことだろうか。先のことまで見通しているなんて・・・これが王族なのか
「『電気鎧・第三形態』」
なら僕も与えられた役割を確実にこなそう。ユリさんの援護があるから多少は反動を受けても怖くない。さっき感知していた時の敵の動きを見る限り、こちらもそれなりの早さが求められているだろうし。そのままクレアと入れ替わるように位置を変わる。
「来たぞ」
そしてキメラアントと呼ばれる生き物が姿をあらわす。・・・蟻じゃん。まごうかたなき蟻がそこにいた。ただし地球でみたやつとは遥かに大きさが違う。よく小さいものをありんこのようだとか表現するけどこれは間違ってもそんなことを言えない。でかい。あの口の大きさからして喰われたら一口で頭をちぎられそうだな。つまり捕まったらおしまいと。でもそれ以外はまったく変わらない。色も黒だし。足は・・・カサカサ動いてて確認できないけど多分地球のと一緒。地球の蟻の足の本数なんてそれこそ知らないけど。
「ミライ、ヤマト敵の中心にお前らを転送する。転移したらすぐに広範囲の魔法を放ってくれ『転移』」
ユンさんの魔法によって僕とヤマトさんはキメラアントの中心に移動する。最大級の魔法っていっても『全力放電』なんて使ったらそれこそ馬鹿だ。広範囲魔法なんて僕修得していないし『放電』を出しながら回転でもしようかな。こう、自分の周りに電気を放出!みたいな感じで・・・あ。
そういえば最初にシオン先輩と戦った時、いやそもそも最初に『麒麟』に出会った時、似たような魔法を使っていなかったか?あの時はやけになっていたけれど確かに僕の全身から電気を放出していた。『全力・電気鎧』と似たようなものか。でも全部の力を出す必要がない。イメージは『領域』を扱う感じで『電気鎧』の電気を拡張させるような感じで、それを意識的に行おう。
「『電気鎧』」
一旦魔法を切りかえる。そして体にまとっている電気を放出するイメージで・・・
「『閃光』」
「!おお、ミライお前なにした?」
「広範囲魔法ですよ・・・くっ」
あ、これ魔法を発動させたら『電気鎧』が解除される感じか。おまけにさっき『電気鎧・第三形態』を使っちゃっていたから反動で体痛いし
「へえ、聞けばお前はまだ一年生っていうじゃねえか。そいつに負けるわけにはいかないな『五月雨斬り』」
ヤマトさんは剣を構えるとそのまま一回転をした。すると、ある一定距離の間にいた敵が全員真っ二つに斬られていた。
「すげえ・・・」
「何言ってるんだよ。お前の魔法でダメージ受けてたからな。っと、まだまだ数がいるな。で?再使用はできるか?」
「もちろんですよ」
ヤマトさんもやっぱり精鋭に選ばれただけはある。おそらく気がつかないであろうこの魔法の弱点をすぐに見抜いてきた。多分だけど『閃光』は発動させた距離が長いほど『電気鎧』が使えなくなるんじゃないかな。さっきの距離と今の時間を考えると、余裕がある時にはつかってもいいかもな
「ユンの転移はもう使えねえ。ここからは近接戦闘だ。やれるか?」
「もちろんですよ『電気の領域』『創造』『電気鎧・第三形態』」
砂鉄で創り出した剣を手にヤマトさんに並ぶ。『電気鎧・第三形態』で筋力が強化されているからそこまで足手まといにならないはずだ。
「よっしゃ!いくぞ」
ヤマトさんの声を聞いて、僕らはキメラアントの大群に突っ込んでいった。
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