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電気使いは今日もノリで生きる  作者: 歩海
第4章契約
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異世界定番もの、その名もダンジョン

文月一週目火曜日


歓声で埋め尽くされているなか僕の声が静かに響いた


「おいミライ・・・わからないのはわかるが後で言ってくれ注目されてるぞ」

「あ、すまない」


そろそろ自分でも気をつけないといけなくなってきたな。さすがにいつまでもお客さん気分でいるわけにもいかないし。自分が無知であることは当たり前であると相手に思わせるのではなく、自分が無知であることは恥であると思うようにならないといけないな。


「ごめん」

「さすがに注目されすぎだ。一旦落ち着ける場所に行こう」


というわけで冒険者たちの視線を一身に集めてしまったので近くにある喫茶店に移ることにした。これ以上僕だって無知を晒したくなかったしちょうどいいよね。


「さてと、さっきの件があるからここはミライが奢れよ」

「わかったよ」


あれ、僕って手持ちどれくらい持ってきていたっけ?まあそれなりにこなしてきたから多少あるけどほとんどないに等しいかなら「いやどっちだよ」えっとね、今の手持ちが銀貨4枚とどうか7枚ね。日本円にしておよそ4700円まあ妥当かちなみに家にはあと銀貨が16枚ほどある・・・やっぱりお金ないな


「なんでそんなにお金ないの?」

「依頼を受けていないから収入がないってことが刺さっているんだよね」

「あー」


そう、僕がずっと寝込んでいることによる弊害がここでも発揮されてしまった。寝たきりのために依頼を受けないということは当然依頼を受けたことによる報酬のお金を一切得ることがないということになる。まあ先輩たちと一緒に受けた依頼の報酬はもらっているけどあれほとんどギルドのお金に回っているし人数多いしで(まあもともとの報酬多いかあ割り当ても当然多い)手元にくるお金ってそこまで多くないんだよね。おまけにこっちの生活基盤を整える(細かな生活用品とか)ために結構使ってしまったんだよね。


「なるほどね。まあここそんなに高くないし大丈夫だろ」

「そうだね・・・っていうかそろそろダンジョンについて教えてくれよ」

「わかったわかったって」


クレアからダンジョンと呼ばれるものについて簡単に説明を受ける。地球にいた頃色々な小説を読み込んでいるからどんなものなのかのイメージはついている。でも違う可能性があるし一応聞いておこうか。


まあ聞いてみたけどほとんど同じだった。どんなものなのかというと、ダンジョンは世の中が不安定な時に出現するとされる神秘の一つらしい。不安定といってもその時はわからないけど歴史を振り返ってみれば『そういえばあの時のあの事件の前にダンジョン出現したよね』って話題になるとか。いやどんなだよ。


ダンジョンの中には数多の財宝が眠っているとか。珍しい魔道具とか金貨や銀貨など。魔道具ってあれだよな。魔法を封じたりするやつ


「あーダンジョンで見つかるのってだいたい宝石みたいなもので持っているだけで簡単な魔法を使えることができるんだとさ」

「そういうものなんだ」


だから珍しいのもうなづける。つまりは魔法内蔵型の道具というわけだ。これあさえあれば多少属性が振りでもなんとかなる可能性があるからね。例えば僕と鳴村が戦った時に僕の魔法は基本的に全く通用しなかった。電撃以外の攻撃である爆発を使うことで勝つことができたけど次に同じようなことができるとは限らない。そういう時に魔道具を使って別属性の魔法を使えることができたらどんなにいいだろうか。だからみんなダンジョン探索に乗り込むんだな。


「まあそれが基本だね。使えないってわかったら売ればそれで一財産築けるからね」


だいたいそういう魔道具の相場はどんなに安く見積もっても金貨100枚はくだらないのだとか。それだけのお金があればしばらくの間お金に困ることがなくなるみたい。もし珍しい光魔法とかになれば金貨1万枚とか普通に超えるみたいだ。


「それで目玉はなんといっても最奥部にあるお宝だよね」

「最深部にはお宝があるのか」

「うん、まあだいたいダンジョンに出てくる敵が強すぎるからたどり着いた人はまずいないみたいだけどね。普通にキング個体もいるみたいだし」

「それは無理だな」


キング個体って先輩たちが何人も集まってやっと余裕で勝てるぐらいだし・・・あれ?あんまり参考にならない。


「ふーんなんていうか。夢が詰まった場所なんだな」

「そうだね。だいたい階層になっていることが多くてある程度進むたびにボスみたいなのがいてそれを倒せばかなりのお金が落ちるという使用になっていてたくさんの人が挑むね」

「最初らへんはそこまで強くないとかそんな感じなのか?」

「基本的にね」


でもダンジョンごとに強さが大きく違っているらしくて最初っから他のダンジョンでそこそこ潜ったところと同じくらいの強さであるとか普通にあるみたいだ。だから今回のダンジョンの強さがどれくらいなのか全くわからないらしい。


「でもすぐにわかるんじゃないかな?過去の資料とか残っているらしいし」

「へえ、どれくらいぶりなんだ?」

「うーん、確か17年前に一度出現したらしいんだよね」

「結構最近だね」


だが、そのダンジョンはすぐに攻略されてしまったのかダンジョン出現の報告を受けた冒険者たちがその場所に行ったときにはすでに消えてしまっていた。だから見間違いだろうって言われている。


「そんなもんなんだ」

「まあねー」


これがだいたい全てらしい。特に僕が知っているのと違いはなかったな。せいぜいこの世界におけるダンジョンの頻度とそれによる魔道具の価値が大きくことなっているくらいかな。


「それでどうするんだ?」

「え?」


クレアが唐突にいいだした。どうするってそれこそどういう意味だ?


「いやダンジョンに挑むのかなって」

「今の僕の状況的に無理だろ」

「それもそうか」


僕今まったく魔法使えないからね。なんかしょっちゅう忘れがちだけど。僕がそんな魔物の巣窟にいってしまったらどんなことが起こるのかもう火を見るよりも明らかだ。明らかなんだよ、クレアが火の魔法を使って火をだしたのを見るよりも明らかなんだよ「今まで以上におかしなことを言っているしミライが相当弱っているのは間違いないな」いやうるせえよ


「まあ仮に魔法が使えても行かないけどね」

「どうしてだ?」


どうしてもなにも行く意味がないだろうに。そんなところに行ったってどんな意味があるっていうんだろうか


「みんなから認められるぞ?ダンジョンの初攻略者って」

「え?まじか」


なら行こうかなぁ。認められる簡単な手段なら挑戦してみる価値はあるかもしれない。それに強い敵と手軽に戦えるのも魅力的かもしれない。自分の実力と相談しながら少しずつ強い敵と戦えるのってなかなか環境を整えるの難しいし。どう転んでも『麒麟』のほうが弱いなんてことはありえないし。どれだけ実力差があるのか少しだけ理解できるとなれば無駄なことをしなくてもすむ。


「逆にクレアはどうするんだ?」

「僕?僕はまあ名誉には興味ないけどキングクラスと手軽にノーリスクで戦えるってのは魅力的だからね」

「お前も戦闘狂だな」

「それミライにだけは言われたくないなぁ」


それもそうか。お互い様ってやつだな。そんなことを言い合ってはいるものの別に本気で挑むなんて考えてもいなかった。そしてそのままクレアと仲良く帰る。結局なにも見つからなかったなぁ


「まあ最悪ダンジョンのことを話せばサクヤも食いつくと思うよ?情報なんてすぐに出回ると思うけど」

「あーそうなるのか」


となると僕らは巻き込まれることになるのかな。はあ、まともに魔法使えないっていうのに


「あ、ミライが魔法使えないことって誰かに言った?」

「いや?誰にも話してないよ」


こういう話って誰にも言わないのが普通でしょ。クレアやシェミン先輩は信頼できるから話しただけにすぎないし。ましてやクラスメートたちに話すだなんて考えただけでも恐ろしい。てか僕みたいなちょっと特殊な人は魔法が使えないことがばれたら学校を追い出されたししないだろうか。


「ミライはこの世界の住民じゃないもんね」


特殊な事情だとこういうときにかなり辛いよな。僕は小説に出てくる主人公と違ってなんかやばい能力を秘めていたりとかすごいスキルを持っていたりとかまったくないもんな。


「サクヤのことだし俺たちでダンジョン攻略しようぜ!って言いそうだな」

「確かにいいそう」


そしてそれを拒否することはほとんどできない。これまでの迷惑のかけ具合を考えたらね。はあ、かなり運悪いんだけど。なんで僕こんなに学校を休んでいるんだか。あ、ほとんど自業自得でした。すみません


「でもミライどうする気だ?」

「休むからクレアお願い」

「お前何もする気ないな」


いやいやもちろん自分でも色々と努力はしますって。これなんとかしないといけないなって思っていますから。このままでいいとは全く思っていないし。このままだと誰かに養ってもらわないといけなくなるし


「それだと僕は無理っていうかあ、ミライはもう就職先決まっているか」

「誰がすでに見つけてるだ。まだ僕は頑張るからな」


人をヒモ確定みたいな言い方しやがって。見てろよ。絶対にこのスランプから立ち直ってクレアを始めとするみんなをぎゃふんと言わせるような魔法を使ってみせるからな


「いやもう『電気鎧(armor)第三形態(third)』で十分に度肝を抜かれているからな」

「そんなにインパクトあったか?見かけも変化なくて地味だし」

「地味とかそういう問題じゃないんだよミライのアレは」


じゃあどういう問題なんだよ。クレアに問い詰めてみてもきちんとした答えが得られなかった。あいつただ笑うだけで受け流しやがって。僕にも少しぐらいそのコミュニケーション能力を分けてくれ「いやチョイスするところそこ?」だって人の追求を笑うだけで受け流せるとかどんだけコミュニケーション能力が高いんだよ。間違いなくクラスにいたら人気者というか陽のあたる人間だよな。僕みたいな隠のものとは全く真逆の存在


「そこまで言わなくても」

「くそ」

「ねえなんで悪態吐かれるんだよ」


人の皮肉を軽々と受け流しやがって。だからおまえはモテるんだよ。こんの色男が


そんな風にいつもと同じような会話をしながら僕とクレアは寮まで戻った。今の会話の中で特に不自然な点は見当たらない。思い返してみてもなにもおかしな点は見つからなかった。


ならば別の要因があったのだろうか。それすらも全くわからない。でもそれでも一つだけ確かなことがある。


次の日に、クレアがいなくなったという知らせが来た

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