ダンジョン出現
今回より第4章に突入します
文月一週目火曜日
「あれ?ミライ今日は授業ないっけ?」
「休む」
「は?」
なんでそんなに驚くんだよ。ついに初めてのズル休みです。てかしょうがないだろ、今日の授業内容ってあれだぞ各自自分のスキルを高めましょうってやつだから。魔法を全く使えない僕が行ったとしても全く意味のない時間になるだけだから
「へえ、まあ大変だね」
「そういうクレアはどうなんだよ」
「んー僕も休む」
「おい」
なんだよお前も同じじゃないかそれでよく僕に注意できたな「そこでドヤ顔するなよ」わかってるよ同じ穴のムジナだろ?そんな風にお互いに言葉の刃を突き刺していたらたまたま寮に来ていたサリア先輩に見つかってしまった
「クレアどうしたのですか?あなたが休むなんて珍しい」
その言い方だとまるで僕が休むことが珍しくないみたいなのですが、ちょっと反論してもいいですか?僕だって地球にいた頃はほとんど欠席なんてしない普通の生徒でしたよ
「でも今は違うよね」
「それはそうだけどさ・・・」
大学生になってから堕落したパターンみたいに言わないでくれよ・・・かなり心にグサッときたからさ
「まあそれでさ、休む理由なんだけどさ、サリア先輩に聞きたいことがあったんですよ」
「私にですか?」
「はい」
なんのことかわからないような顔をするサリア先輩。いやここでわかったらある意味読心の使い手だと思いますよ。
「えっと、急に頭に声が響くことってありますか?」
「すぐに病院に言えばいいんじゃない?」
「ミライには聞いていないよ」
「そうだね」
でもそれこそサリア先輩でも不可能じゃないのか?頭の中に声が聞こえてくるなんてそんなの幻聴か空耳は違うかとにかく精神的に問題があるとしか考えられないし、確か精神的な問題って専門家の判断が必要なんじゃなかったっけ?
「それはどういう声ですか?」
え、心当たりあるのかよ。過去にそんな経験があるとか?いやそんな都合よく・・・まあ先輩たちなら色々な経験してそうだしありえなくもないか
「ただ一言だけ『待ってる』と」
「ふむ」
考え込むサリア先輩。でも『待ってる』か男子が女子から言われたい言葉ランキングの上位に入りそうで入らない言葉だな。シチュエーションによるとしか言えないか。
「確かに私には心当たりがあります」
「本当ですか!では」
「ですが、それがなにかを教えることはできません」
「え・・・」
なんて酷なことを・・・餌を目の前にぶら下げたと思ったらそのまま放置するような諸行を平然と行いなんて・・・そんな人でなしの行動をする人はシオン先輩ぐらいしかいないと思っていましたよ。「だからなんで僕の評価ってそんなにひどいの?」なんか声が聞こえた気がしたけどそれこそ幻聴だ
「大丈夫ですよ。悪いことにはなりません」
そういうと、静かに微笑んだ。でもその一方でクレアの顔はかなり厳しい。そりゃ僕はまだ第三者だから落ち着いて聞いていられるけどこれがいざ自分のこととなると安心できるはずがないよね
「ですが・・・」
「すぐにわかりますよ・・・そうですね。では一つヒントを私の時はすぐにわかりました」
「・・・」
「だから大丈夫ですよ」
強調するように言ってくる。まあサリア先輩がここまでいうんだし多分大丈夫なことなんだろう。
「でもクレア、なんでサリア先輩が知っているってわかったんだ?」
「それはシズク先輩が教えてくれたんだよ」
「なるほど」
なぜここでシオン先輩の名前が上がらなかったのかはあえて触れないでおく。これができる後輩の優しさってやつさ。「声に出してる時点で隠す気ないよね」それをわざわざ追求するクレアもクレアじゃないですかー。
「それで気になって休むことにしたんだけど・・・時間余ったな」
「まだ昼すぎだしね」
「うーん」
二人して今日の予定について考える。冷静に考えればこうしてゆっくりできるのっていつぶりかなぁ。そりゃちょっと前までなんやかんやで安静を義務付けられていたからゆっくりできたのだろうけどその時はなにか考え事ややらなければならないことでいっぱいいっぱいだったからね。空いた時間の使い方ってものがいまいちうまく使えないんだよね
「暇だしちょっと町でなにか依頼を物色しないか?サクヤやミロンさんにお詫びも兼ねて僕たちで探しておかないか?」
「それもそうだな」
迷惑をかけてしまったのは事実だしなにか埋め合わせはしなければいけないとは考えていたんだ。こういう時ってサクヤはともかくミロンさんは女性だしなにかしらのプレゼントとかの方がいいのかなって思っていたけど確かにクレアの案ならそれらが一気に解消されるな。よし、探しに行くとするか
「あ、クレア。僕道わかんないから案内してくれ」
「・・・そういえばそうか、了解。案内するよ」
そのままクレアに案内される形で町を色々と探索する。そしてギルド会館的なところにたどり着いた。正式名称は忘れたけどまあ依頼を受けたり依頼を頼んだりできる場所だ。ギルド会館で問題ないだろう。
「ここでどんな依頼が来ているのか確認できるんだ」
「へえー」
言われてみれば色々な依頼があるな。例えばゴブリンの討伐だとか、えrい人の護衛とか「そこぼかすなよ」いやこれ高度なギャグだから。かなりベタだけど超メジャーなギャグだから。これくらいの笑いを理解しないとモテないぞ
「僕ミライよりは人気あると思うんだけどなぁ」
「悲しいくらいど正論を言わないでくれよ」
自分でも思っていましたよ。いちいちイケメンアピールなんてしなくてもわかりきっているからいいですよーだ。さっきからこっちの方向をチラチラ見ている女性の方がいるけどよくよく見れば視線は全部クレアの方を向いているからね。
「それで?どんな依頼にする?」
「そうだなぁ」
色々と見てみるけど面白そう・・・サクヤたちのお気に召しそうな依頼が全くないんだけどどうしようか。まあどちらかっていえば棚ぼた的なかんじでいたしこればっかしはしょうがないか。別のものを考えないと
「クレア、ここには特になにもないみたいだし他当たらないか?」
「そうだね。まあここに定期的にくるからいいのがあったら教えるよ」
「助かるよ」
こういって細かいことができるのってすごいなぁ。僕も皆らわ・・・なくていいや。僕にそんな甲斐性を期待するなって話ですね
「お前それくらいしなよ」
「なんかめんどくさそう」
「それくらいしろよ」
そんな風に僕とクレアがいつもと同じような会話をしている時に、急に扉を強く開ける音がした。そして一人の冒険者ーここは冒険者といったら伝わるだろうからそう表現させてもらうーが中に入ってきた。かなり焦っていたのだろう。汗がだくだくで息も絶え絶えな状態で入ってきた。
僕を含めその場にいた人たちが何事かと注目する。そしてその冒険者はみんなの視線が自分に集まっているのを確認するとただ一言、大声で叫んだ。
「ダンジョンが出現したぞー!」
その冒険者の声が響いた瞬間、この場所にいた人たちの大きな歓声で埋め尽くされた。みんながみんな、歓喜している。
「まじかよ!いつぶりだ?」
「これで一山当てれば一生食っていけるぜ」
そんななか冷静な声が一つ
「ダンジョンってなに?」
そう、僕の声です