なんで喉に魚の骨刺さるんだろう
四万十さんの口調を若干変えました
「さて、まあ改まって話すことでもないけど、一応説明しておくか」
魚を焼きながらみんなで火を囲んで話し合う。あれから特に問題もなく夕飯にありつくことができた。煮沸された水もすぐには飲むことが難しかったが、天衣が絶妙な小さい風を起こすことによってある程度まで冷ますことができた。まだまだ細かいコントロールはできないけれど、器くらいの大きさがあればその上で水がこぼれない程度に風を起こすくらいの作業ならできるようになったみたいだ。川の水とは違ってぬるい水だが安全面から考慮すればまあ我慢できる。できれば冷たい水をゴクゴク飲みたかったけれどもそこまで贅沢は言っていられないし。それに真夏でも熱い緑茶を飲むことなんてよくあることだしね。
むしろ問題なのが魚の方だ。包丁なんて便利なもの当然あるわけがないから捌くことができない。見た目は地球の鮎に近い感じかな。だから毒はないと判断してーもしフグに近かったら危なかったよなー調理方法だけど丸焼きかな。最初は器に水と一緒に入れてスープ的なのを作ろうとしたんだけど箸がないので却下された。
そのため魚を木に串刺しにして、火にあてている。でも誰もこういったサバイバル的な経験がないからどこまで焼けばいいのかわからない。直前まで生きていたから生でも問題はないのだけど、これも安全面から難しい。それに無事に焼けたとしても食べるためには丸かじりするしかない。実は白状するけど僕魚苦手なんだよね。別に嫌いじゃないんだけど、魚にはさ、骨があるよね。昔その骨が喉に刺さっちゃってさ。取るのにかなり苦労したんだよなー。それがあって魚に苦手意識を持っちゃうことになったんだよね。でも今はそんなことを言ってられないし。
「話すことは俺の技能と四万十さんの技能でいいよな?他に聞いておきたいことあるか?どうせこれから一緒に生活していくんだ。隠し事はできるかもしれないが、今は特に隠すことなんてないだろ」
あ、説明が始まるしきちんと聞いておこう。こいつ僕が記念すべき一発目に放った魔法を完膚なきまでに叩き潰しやがったんだよな。普通そんなことあるか?基本的に新技は一発目には綺麗に決まるのがお約束だろうに。どんなアニメだってそこのとこは守ってるぞ。あ、でも僕がモブで角先が主人公ならありえる展開か。納得。
「さて、俺が使える技能は二つあるんだ。一つは紅が魔法を放ったときに使った『避雷針』。その名のとうり放たれた電気を俺に向けて、その力を吸収する感じだ。そしてもう一つが『放出』。これは『避雷針』によって俺のうちに吸収された電気を一気に解き放つ。その際に吸収した電気よりも強い電気が放たれるようになっているらしい。これはなんか手に入れたときに急に説明されたことだから原理は知らないんで説明は無理だな。ま、というわけで俺は吸収した電気を使って雷に近い電気を放つことができたってわけ。なんか質問あるか?」
気になる点がないわけではない。が、どうしても聞くようなものでもないし僕はないかな。それにしても角先も技能取得のさいに簡単な説明を受けていたのか。これは全員共通なのかな。だとすると声の主、つまりはスキルを管理している管理者の存在がいる、その可能性が示唆されたわけか。
「吸収できる電気量に限界はあるの?」
「それもわからない・・・というかこれは全員に言えることだが、スキルは無尽蔵に使えるのかわからない。試してみてもいいが、回復するのかもわからないためにスッカラカンのときに動物とかに襲われたとなると悲惨だ。だから辛いけども、これは実践で試していくしかない。もちろん、知らないのが一番だが」
そうだな。強さにムラが起きることはわかったけどもこれをいつまで使えることができるのかは検証してないな。みんなには悪いけどこっそり研究させてもらおう。なんとなくだけど、どんなスキルでも無限の可能性を秘めている気がする。
「次は四万十さんだな。『付加』について話せる範囲で話してもらってもいいか?」
「そうだね。それは僕も気になっていたんだ」
かけるだけで木が燃えなくなる。それってかなり強い力なのではないのだろうか。
「わかりました。説明します。『付加』は簡単に言うと物質の強化みたいなものです。今回の場合は木を強化することで燃えるという状態にならないようにする感じです。付加できる物質には特に限りはないですー人にもかけることができるみたいです」
「なるほどね。これが『聖』スキルの力ってことか。納得したよ」
「ありがとうございます。あ、でも当然力を加えていたら剥がれてしまうこともあるみたいです。つまり・・・」
そう言って四万十さんは薪のほうに目を向けるそこでは周りを囲っていた台に火が燃えうつっていた。どうやら限界を迎えたらしい。
「これは要検証だね。僕らの限界はともかく知っておかないと色々と不便だ。今はまだ目があったからいいけどもし誰もみていないときに燃えてしまってどんどん広がっていったら悲惨だからね」
「そうですね。皆さんがよろしければ明日にでも検証したいのですがよろしいでしょうか?」
これには特にみんな反対意見がないみたいだ。それにそろそろお腹がすいてきた。湿っぽい話はそろそろ打ち止めにして楽しい・・・楽しい食事の時間としましょうか。
「これちゃんと焼けてるのか?」
「うーん見た目はちゃんと焼けているから大丈夫じゃないかな」
「そうだな・・・もういいじゃん美味しそうだし食べようぜ。ということで」
「「「「「いただきまーす」」」」」
食べ方なんてよくわからないけど・・・見よう見まねでかぶりついてみる。・・・うんおいしい。調味料なんてものはないから魚の味そのものだけどすごくおいしい。空腹だったのが影響しているのかな?いや、これは仕事をしたからかな。今日1日を振り返ってみると、しばらくの間森の中を歩くという運動に火を起こす作業をしたわけだ。これでおいしくないわけがない。仕事を終えてくる大人たちが「仕事後に飲むビールは最高だぜ」とか言いながらビールを美味しそうに飲んでいるわけだ。まさか17歳にしてこんなことに気づくとは思わなかったけども。それでもおいしい。
「塩が欲しいわね」
「そんなことを言うなよ山胡桃さん・・・・紅をみろ。あいつあんなに幸せそうに食べてるぞ」
「ほんとうまそうに食べてるよな。まあわからなくもないが。仕事後の飯はうまい」
「そうかしら・・・」
山胡桃さんは少し不満そうだな。五十嵐さん、四万十さん、米柔、角先、麺山の五人が特にリアクションなし。そして僕と同じように感動しているのが天衣か。あいつらめ、仕事をあまりしなかったからこそこの味を堪能することができないのだぞ。と謎の優越感に浸ってみる。
「美味しかったな」
「まあ空腹は凌げれたかしらね」
「さて、夜になったわけだが、ここで一つ提案がある、夜は見張りを立てておくべきだと思うんだ。交代で」
それもそうか。幸いにして今の所とくに襲われることは起きていないがここは異世界、異世界おなじみのモンスターとの戦闘があるかもしれない。夜に襲われた時に全員寝ていましたというのは非常に危険だ。
「そうだな。でも一人だと危ないし二人一組にしないか?」
おー麺山のやつ初めてまともな意見を言ったな。「お前それはさすがにひどいぞ」でも二人一組とすると、どうやってわけるんだ?
「まあ無難に適当にわけるかどうせどう組んだって変わんないし」
「そうだな。あ、そうだ五十嵐さんもしよかったら俺とペアに「ごめんなさい米柔くん。私は聖奈ちゃんと組むわ」そ、そんな〜」
米柔・・・お前この状況で誘うってメンタル強いな。ある意味尊敬できるんだが。まあこの状況だからこそ期待したくなるって気持ちもわからなくもないんだけどな
「でも女子二人って危なくないか?何かあった時のために男子は常に一人は起きているようにしたほうがいいんじゃないか?」
「角先くんの言うことも一理あるわね・・・ねえじゃあさ。組まない?」
「ん?いいよ。よろしくな山胡桃さん」
山胡桃さんと角先がペアを組むと、そして・・・ああ、麺山が米柔を慰めてる。ここはあいつらで組ませたほうがいいかな。それだと確実に僕が女子と組めるって打算もあるからね・・・。ま、でもとにかく正直な話山胡桃さんと組まなくてよかったな。夕方のことでちょっと気まずいし。
「なら私は天衣くんにしましょうか。ちょっと気になることもあるし・・・いい?聖奈ちゃん」
「大丈夫ですよ。では、一緒に頑張りましょうね。紅くん」
「あ、うん。頑張ろうね」
こういう時って男よりも女の子のほうがテキパキ決めていくんだな。さて、見張りの組も決まったことだし寝るとするか。今何時なのかなむちゃくちゃ眠たい・・・色々と忙しい一日だったからかな
「おーい、紅・・・って寝てる。たく、こっちで勝手に順番とか決めるからな」
・・・まだ1日は終わってなかったな