#29 事務所に入ろう 1
ノスビーが目を開けると、そこはダンジョンとはどこか違う、建物の廊下らしき空間。
直前までいた冒険者協会よりもずっとゴチャゴチャしてて、なんだか狭苦しい。
「ここが運営のいる場所。いわゆる『事務所』だ」
「事務所……」
もうちょっといい感じのネーミングはなかったのか。
「お疲れ様でーす」
モビィを先頭に、入口になぜか下がったのれんをくぐる。
「うわあ……」
のれんの奥に広がってたのは、廊下の狭さからは想像もつかない広大な空間。
その空間が廊下以上にとっ散らかってるせいで、余計に狭苦しさを感じさせる。
無数に並ぶデスク。積み上がった書類。散乱するライフポーションの空き瓶。ホワイトボードに書かれた文字は、何度も書いては消してを繰り返した結果、解読不能な暗号と化してる。
ある意味ダンジョン以上にダンジョンっぽい空間の隙間を縫うようにして、小型のモンスターが何体も駆け回る。中にはキトンインプやアクアブラウニーもいる。
「仕様変更したら仕様書に反映しとけよ! これじゃデバッグできねえだろ」
「ここのバランスおかしくない?」
「ずれてる! 番号1個ずつずれてる!」
辺りに響くのは、モンスターの怒号とか悲鳴とか絶叫。
それぞれが石板に何かを掘りつけたり書類の山を引っかき回して何かを捜したりデスクに突っ伏したまま泥みたいに爆睡したりしてる。返事はないけど、どうやら屍ではなさそうだ。




