#2 ストーリーを聞こう
「悪しき魔王は倒され、世界は光を取り戻した」
いきなり声のトーンを落として、重苦しい口調に変わるモビィ。何その小芝居。
「魔王の居城があった呪われし島クバモリーゲには、新天地を求める冒険者たちが次々と訪れ、残ったモンスターと戦いながら開拓を続けている」
「は、はあ」
ノスビー自身が別の大陸から船でここまで渡ってきたばかりだから、その辺は言われるまでもなくわかってる。
この人何を言ってるんだ、って表情。
「そして今!」
「わあ!」
いきなり目の前で叫ばれて、驚いてひっくり返りそうになるノスビー。
けれどモビィはそんなリアクションさえスルーして、サクサク続ける。
「ひとりの冒険者が、この島の歴史に新たなページを刻もうとしている。前途に何が待ち構えているのか、その目で確かめてみるがいい!」
カウンターに片足乗せて、今にも飛びかかりそうな勢い。おまえは獲物を狩る猛禽類の仲間か。
「いざ行かん、冒険の新天地へ!」
「……」
「……」
沈黙。
やり切った感丸出しのモビィと、すっかりドン引きしたノスビーの温度差が半端ない。
「あっ、ごめんなさいね? 新規の冒険者さんには、必ず1回これをやる決まりになってるんです」
元のテンションに戻ったモビィが、何事もなかったように言う。
「……必要なんですか、その決まり」
ノスビーのもっともな問いをこれまたスルーして、モビィはバックヤードへ何かを取りに行った。




