第7話
――カーンッ! カーンッ! カーンッ!
年が明けた。
「おめでとうー!」
「今年もよろしく、イサク!」
「おう! ネイサン!」
「式はどうするんだ? おまえがしないと、部下たちも結婚できないぞ!」
「それが……マリアンの書類が揃わないんだ。彼女の村へ申請に行った役人が帰って来ない。失踪届けが出されたそうだ」
「なんだって! どうして? 何があったんだ?」
「吹雪で道に迷い遭難したらしい……馬車ごと行方不明だ。雪解けを待って捜索を開始するそうだ」
「そうか……。だったら……先に婚約式だけ済ましてしまったらどうだ?」
「それもそうだな? じゃあ、ネイサンの助言にありがたく従わせてもらうよ! 結婚の先輩だからな!」
「めずらしく素直じゃないか? 式はうちでやれよ? いいだろ?」
「どうもありがとう!」
わたしの戸籍はいまだに復活していない。
婚約式だけ先に済ませることになった。
式の準備は順調に進んでいった。
忙しさと喜びのなかでわたしは、フランも彼の伯父のことも、完全に忘れていた。
◇ ◇ ◇ ◇
――ワアアアアーッ!
――カンパーイッ!
――おめでとうーっ!
人々から祝福を受けながら、わたしとイサクの婚約式が行われた。
グリーンのドレスにグリーンのリボンをまとったわたしは、いま幸せの絶頂にいる!
いったい誰が予測できたことだろう。
4年前絶望の淵を這い回っていたわたしが、こんな素晴らしい幸せを手に入れることが出来ただなんて!
「マリアン……ドレスを新調するヒマがなかったね……すまない……」
「まあ! なんてことを! このドレス、とっても気に入ってるの! このリボンも! わたしにとっては、世界で一番素晴らしいリボンだわ! イサク……一生、大切にするわね……」
「マリアン、とってもよく似合うよ……。ああ、輪舞がはじまる! 踊ろう!」
「ええっ!」
それはわたしの人生の中で1番しあわせな輪舞だった。
祝福の輪の中でわたしとイサクは回り続けた。
わたしを見つめるイサクの瞳は澄んで美しく、どこまでもまっすぐで誠実だ。
アポロンの鋭い視線も今日はどこにも見当たらない。
わたしたちは、いつまでもいつまでも回りつづけた。
輪舞のようにこの幸せがいつまでも続きますように。
そう願いながら。
◇ ◇ ◇ ◇
踊り疲れたわたしは控え室で休んでいた。
そこへメイドがやってきた。
「マリアンさま、裏庭にいらしてください。お客さまが……」
「わたしに? イサクにではなくて?」
「はい。ご婦人です。昔の知り合いだとか……」
「まあ! 村の人かしら? 裏庭ね? すぐに行くわ」
婚約の話を聞きつけて、わざわざ村から誰かが会いにきてくれたのだろうか。
もしくは、ナタリーか?
ショールを羽織り、夜露に濡れる裏庭にいそいだ。
――ザアアアアーッ……。
「…………!」
「すまない。メイドに金を握らせてウソを吐いてもらった」
裏庭の噴水のそばに、フランが立っていた!




