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再戦

 変装の効果が解けるまでの時間を有効に使い、護身用と称してしびれ薬を買うことができた。素顔でもハンターの顔でもないから、後々面倒なことにならずに済むわね。

 そして準備が完了し、ひたすらその日を待ち続けた。ファイを倒す瞬間を思い描き、一日一日が長く感じる中でずっと耐え、ようやくその日はやってきた。

 平原で待ち続け、夜が訪れてから数時間が経った。町はところどころ明るく、中でも時計台は一際眩しく照らし出されていて目立つ。その示している時刻を確認すると、間もなく夜の九時を迎えようとしている。

 そろそろ来るかもしれないから、気を引き締めないと。そうよ、今度こそあいつに勝ってやるわよ。私にマジックハンターを辞めさせようだなんて、生意気な発言をしたことを後悔させてあげるんだから。

 時計台へ真っ直ぐ向かって立ち、痺れ薬と『ウィンド』を構える。いくらファイが強くたって、飛んでいる隙を突けばきっと勝てる。

 そう信じながら待っていると、前方に微かな影と光源が見えた。その二つは重なり、そして段々こちらへと向かってくる。間違いない、ファイがマジックを手に入れてこちらへ飛んでいるんだわ。

 目を閉じて深呼吸をし、心を静める。今回は私の勝ちだと言い聞かせ、ゆっくりと目を開ける。

 こちらへ迫ってくる影はどんどん大きくなり、射程範囲も近くなってきた。今が頃合だわ!


「ウィンド!」


 かざしたマジックを発動させ、一陣の風を生じさせる。そして、それに乗せるように痺れ薬をばら撒く。目前に迫ったその影がハンググライダーであると確認できる程の距離になったその時、丁度それを私のマジックが撃ち落した。


「ぐああ! くっ、誰だ!」


 顔を確認しなくても、声でファイだとわかる。そして、地に落ちたハンググライダーのそばで、半透明の球体が光った。

 急いで駆け寄りそれを拾う。鑑定してみた結果、おそらく先程手に入れたのであろう『フロート』のマジックであることがわかった。


「ファイ! 今度は私の勝ちよ!」

「何だと? 力ずくでも返し……ぐっ!」


 どうやら痺れ薬が効いてるみたい。動きが鈍っている今がチャンス!


「観念しなさい! あなたの負けよ!」


 マジックに再び魔力を込め、ファイに照準を合わせる。

 悪いけれど、あなたは強敵だからここで消えてもらうわ。


「うぐっ……テレポート!」

「なっ!?」


 詠唱の直後、一瞬にして姿を眩ませた!? せっかく倒せると思ったのに、逃げられるなんて……。

 まあいいわ、今回は収穫があったものね。この『フロート』というマジック、どうやら空中を歩くことができるようになるみたい。今度からは、建物に潜入する時に一階からご丁寧に入る必要がなくなったわね。

 さあて、人がこない内に帰りましょうか。

 平原から隠れるのに適した森へと移り、誰にも見付からないように気をつける。何者かの気配がないか確認しながら慎重に、なおかつ素早く移動する。

 そうして二十分程走り続け、ようやく家まで着いた。誰も見ていないことを確認してからドアの前まで向かう。鍵を開けて中へ入り、戸締りをしてようやく安心できた。無事にマジックを持ったまま帰還、つまり私の勝利ね。

 ファイの奴、私にマジックハンターは無理だなんて言っておきながら、あっさり負けて逃げ帰るなんてかっこ悪いわ。あんなに自信満々な態度だからこそ、余計にそう思えてしまう。

 けれど、この勝利に酔いしれて油断してはいけないわね。ファイはきっと、奪われたマジックを取り返すために私を狙ってくるはず。怒っているでしょうから、今まで以上に注意が必要になるわね。痺れ薬はまだ残っているけれど、他にも何か対策を用意しておいた方がいいかしら?

 まあ、それはまた明日以降考えることにしよう。今日はもう寝るとしましょう。そう、また明日じっくり対策を立てれば……。

 ……あれ? 私、自分の家で寝ていたはずなのに、どこか知らない場所に立っている?

 知らない場所……? 違う、この部屋はさっき魔女の店でマジックにより見せられた場所だ。そう、ここはファイの部屋。


「他の者にも知られる危険を承知で、それでもお前に告ぐ」

「ファイ!?」


 振り向いた先で、ファイは月明かりに照らされながら真っ直ぐ私を見つめていた。

 これは『ドリーム』を使ってファイが見せているの? 他の者にもって、まさか不特定多数の人に対して同じ夢を!?


「そのマジックは返さなくていい。だから、もうこれ以上関わるな」

「何よ? 私に負けたから怖くなったの? あれだけ偉そうなことを……」

「わかったな? 絶対に来るんじゃないぞ? 来たら死ぬと思え」


 途中で言葉を遮られた? いいえ、この様子……もしかしたら私の声はファイに届いていない?


「言いたいことはそれだけだ……」

「あ、ちょっと待っ……。痛い!」


 また勢い余ってベッドから落ちちゃった。ファイに夢を見せられた時は、あまり暴れないように気をつけないと……。

 随分と寝ちゃったみたいで、カーテンを通して日の光が差し込んでいる。もう朝はとっくに過ぎているようね。

 それにしても、ファイの奴、あんな脅しで私が屈するとでも思ったのかしら?

 その手には乗らないわよ。今日もマジックハンターとして、暗躍してやるんだから!

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