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 そして、翌日、伊煮にはちょっと散歩に行ってもらって、ぼくら三人で話し合った。平和教徒を倒す力をもっているのは無神論者だけだ。無神論者の力を借りなければ、平和教徒は絶対に倒せない。世界を統治する平和教徒を倒すには、圧倒的な力の差が必要だ。無神論者は圧倒的な力をもっている。

「復讐するだけなら、棄教すればよかろう。もう家族も親戚もない我らだ。迷うことはない。だが、このキアゲゴー、復讐のために贖罪教徒を辞めるには絶望しすぎている。絶望こそが贖罪教徒の本質だと考えているため、この絶望したキアゲゴーには贖罪教徒を棄教するという選択肢はない」

「そんなこといったって、平和教徒に好きにさせておいていいのか。無神論者は、世界政府が無神論者なら、小さな地域の信仰を弾圧しないかもしれない。平和教徒のいけないところは経典である詠唱集にはっきりと「多神教徒と無神論者は殺せ」と書いてあることだ。読み書きを覚え、経典を読んだ平和教徒は神の啓示を受けたかの如く、どんどん、多神教徒と無神論者を弾圧していく。このまま歴史が進めば、多神教徒と無神論者の文化は完全に消し去られてしまう。それよりは、無神論者の論理的な統治の方がいい」

 真佐紀がいう。

 ポコは黙っていた。

「マルクス主義者のことを知っているか。平和教徒よりずっと新しく生まれた教義だが、教義にあやまちがあったらしく、百年余りで滅びてしまった。なんでも、先進的ならよいというものではない。古代の宗教は、極大について考えた。その極大への信仰を失って、それが果たして正しい道なのかということだ」

「そんなことをいうなら、キアゲゴーは平和教徒になったらいいじゃないか」

「それではダメなのだ。おおおお。おれの絶望を、罪を罰せられる者が必要なのだ。おれには必要なのだ。それはかつて過去に罰せられたイエス以外に他にない」

 真佐紀は間を置いた。

 長い間、間を置いた。ずっと黙っていた。

 充分に三人とも考える時間があったと思ってから、口を開いた。

「なら、嘘をつくしかないな」

「嘘?」

 キアゲゴーが怪訝に聞き返す。

「伊煮や無神論者に嘘をつくんだ。おれたち三人は棄教して、無神論者になったと思わせるんだ。それで、無神論者を利用して、平和教徒を倒せばいい。平和教徒をやっつけてから、この続きは考えよう」

 キアゲゴーとポコはしばらく黙っていたが、

「それしかないな」

「はい」

 といってまとまった。


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