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3年生は終わりの学年(1)
初雪が三年生になった。
三年生――つまりは、最終学年。
『最後の学校生活、ですね』
それで初雪の周囲が、何か劇的に変わったかというとそうではない。
けれど、二年生の時とは確かに違っている。
周りに目を向ければ、東雲という生徒会長が初雪とよく話すようになった。
そのほかの生徒は、確かに初雪を――必要もないのに――怖がっているけど、その生徒会長がよく話すおかげか、以前よりはだいぶましになっていると思う。
『……本当、一般人というのは馬鹿みたいですね。彼は不要な暴力など振るわないというのに』
――まし、という程度でしかないけれど。
それに何より、初雪自身に起きた変化が大きい。
今の初雪には寝床がある。
カンテラというバイト先があり、生活のためのお金に不自由もしていない。
それらはすべて、彼の決意の賜物だ。
『彼は、ゴーストチャイルドとして……』
彼は前の冬に、ゴーストチャイルドとしての決意を固めた。
ゴーストの王様として、私たちの想いのすべてを背負う覚悟を持った。
その覚悟を認めた私たちゴーストは、その総意で彼をホテル「ホッシェンプロッツ」へと迎え入れた。