虎口峠
虎口峠。
学校へと続く峠道で、ここから通ってくる生徒は多い。
通うだけなら、学校のそばまで通っている国道を使って来るのが一番早い。
しかし、自分の愛車のセッティングや調子をみるのに、生徒達はこの峠を通ってくる。
この峠は直線が少なく、森の中をくねくねとした道が続く。
一番の名物は峠の折り返し地点にあるカーブで、ここは逆バンクになっており、さらにトラ模様のようなひび割れができていて、峠の難易度を高くしている。
虎の背、と生徒達は呼んでいた。
この峠は信号もなく、15分も走れば学校の裏手にたどりついた。
理香は峠の入り口に入ったところで箒を止め、ディスプレイを操作して足回りのセッティングをソフトにした。
一度手袋をはきなおして、ひとつ深呼吸をし、アクセルを握った。
「よし」
と、声を出してからアクセルを捻った。
理香はくねくねとした、この峠を進んでいく。
特に朝は対向車も少ない。
アクセル、ブレーキ、そして体重移動。
一つ一つ丁寧にこなしていく。
足回りをソフトにしたので、せっかくの官能感が欠けていた。
しかし、ハードだと虎の背では跳ねてしまい、春休みに怖い目に合っていた。
虎の背が近づいたとき、乾いた甲高い音が後ろから近づいてきた。




