登校
朝7時30分。
理香は、昨晩は興奮して眠れなかった。
1年間バイトに励み、お年玉を全部つぎ込んで買った、「FUJISAWA」製「中型」魔法の箒。
決して速い箒ではない。
加速は出だしが悪くノロノロとしているし、減速も良いとは言えず、始めは「アレッ」と思うほど効かず、ワンテンポ遅れて効いてくる。コーナーワークだけは路面を掴む感覚が良く官能的だ。
これが春休み中に乗り込み理香が得た箒の印象だった。
理香は朝食を済ませ、制服に着替え、教材とかの準備も終わらせた。
「行ってきまーーす!」
玄関で元気な声で言い、手にカバンと箒とヘルメットを持って家をでた。
玄関先の壁に箒を立てかけてからエンジンを掛けると、「シュロロロ」と小さな音でアイドリングを始めた。理香はその間に、ヘルメットと手袋をつけ、カバンを背中に背負った。制服はスカートにしたので、下にはストッキングを履いてきた。
軽く屈伸と柔軟運動をし、箒にまたがり鐙に足を掛けた。
箒の先端から画像が出て、エネルギーゲージとスピードメーターが表示される。
足が20cmくらいフワッと浮く。
理香は右手のアクセルをゆっくりと捻り、家の門を出てから、体を傾けて曲がり路地に出た。
路地を走り、国道にに出ると、アクセルを大きく開けた。ゲージ表示が一気に上がり、メーターの数字が大きくなっていく。60kmまでノロノロと加速し、そのまま車の流れにのった。ノロノロと言っても車の加速よりは早い。他の箒やバイクと比べると遅いだけだ。
理香は「虎口峠」の道路標識を見つけ、その信号を左折した。




