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当日・午前4
小机は、淵野辺の走りを見ても驚くことはなかった。
思っていた通りタイムが出ていないのだ。
淵野辺はサーキットの走り方を知らない。
普段、公道を走っているので安全マージンを残すようにしている。
サーキットでそれは不純物でしかない。
排気量が多いだけではタイムは出ないのだ。
「やっぱりな」
つぶやいてタイムの表示された画面から離れた。
椅子に座り飲み物を口にしたとき、歓声が上がった。
「少しはマシになってきたかな」
と、思ったものの少しも興味が湧くこともなく、
自分の走りを録画したビデオを見始めた。
このままでは素人の鴨井に負けてしまう。
他人のことにかまっている場合ではないのだ。