昼休み3
「ま、そうなるな。しかし・・・」
と、八王子は一度言葉をきり、
「あいつはホイールとタイヤという武器を持っている。」
「それ、何ですか?」
「今のエアタイヤの前身だな。もともとは金属のホイールにゴム製のタイヤを着けて車やバイクは走っていたんだ。」
「歴史で教わりました。エアタイヤに変わって100年近くたつと。あたしはゴムのタイヤは初めて見ました。」
「まぁ、そうだろう。飛行機やレースカーなどの特殊なタイヤもエアに変わったからな。俺は運よく乗ったことがある。本当にラッキーだった。それでエアタイヤの弱点を知ることが出来た。」
「弱点?なんですか?」
「それは剛性だ。ゴムタイヤはブレーキングでしっかりと車体の重量を受け止めてくれる。そこで発生した摩擦でコーナリングするからスピードがのるんだ。エアタイヤは固めてあるとはいえ、空気のみだから剛性面ではやはり劣ってしまう。初期にくらべればだいぶ硬くなってきたがな。」
「そうなんですか・・・」
「だから、総合的にもトントンって感じだ。」
2コーナーまでたどり着いていた。
八王子は立ち止まり、
「特にここはタイヤ剛性が重要なコーナーだ。下りでスピードが出ているのでフロントタイヤに全て重量がのってしまう。小机には厳しいコーナーだな。」
理香は振り返り下ってきた坂を見上げる。
「鴨居の優位は変わらないよ。箒は軽いからエアタイヤの剛性で十分に耐えられる。落ち着いて走れば間違いなくトップでゴールだよ。」