自動車部 6
輪が笑顔で話し出した。
「いやー、後ろから見ていてさぁ、ブレーキポイントはバラバラだし、体重移動は滅茶苦茶だし、なによりラインが安定していなし、いつか膨らむって思ったんだよね。そこがまさに虎の背で、クリップが早いって思ったんだよ。心の中でキタッって大喜び。おもっきりアウトにふって、クリップポイントをコーナーの出口の方にとると決めて、お前が想像通り外側に膨らんで、その横にピッタリ着けたときには、思わずにんまりしちゃったよ。久々に改心の追い抜きしたよ。ありがとうね。」
と、一気に言った。
理香は一瞬理解できなかった。
理解が出来たとき、さっきの小机よりも比べ物にならないほどに頭に血が上った。
拳を握り締め、歯を食いしばり、体が震えた。
涙がこぼれ落ちる。
右手が輪の頬を叩いていた。
そして、決めた。
「先生、レースやります。いえ、やらせて下さい。こんなヤツに抜かれたなんて屈辱です。」
輪は椅子から立ち上がり、
「痛ってーな。何すんだ、お前。」
「あんた、私はね、一生懸命走っていたんだよ。それを・・・。」
「一生懸命だかなんだか知らねーが、お前は良い練習相手だったって感謝しているんだよ。それなのに叩くか?気ぃ強い女だな。」
「何!!」
再びはたいてやろうと振りかぶったとき、八王子が手首を掴んだ。
「そこまでだ。輪、お前しゃべるな。」
「俺は何も悪いことを言っていない。それより、叩かれたのだから被害者だぞ。」
「そうだ、手を出した鴨居が悪い。しかし、煽ったのはお前だ。」
小机が口を挟みだした。
「自分が何を話していたのかわからないのですか?」
「感謝の気持ちだけど。」
小机があきれたように、つぶやく。
「いやですねー、野蛮な人間は。」
「お前も黙れ。」
と、小机にけん制し、
「鴨居、明日昼休みにサーキットに来い。俺が案内しよう。」
と、八王子が言い、その日は解散となった。