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とろけるCheese  作者: KoKoRo
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Cheese5~委員会~

高校で玲という美人なお友達ができたわたし、立川 華。これから楽しい高校生活が送れそうな予感でいっぱいです。そんな中、わたしは同じクラスの池本淳(いけもとじゅん)くんという人と、美化委員会の活動に参加することになりました。



華(ええと、持ち物はこれだけでいいかな)



放課後、わたしはメモ帳とボールペンを取り出し、少し緊張しながら最初の委員会活動に向けて準備をしていた。その様子に気づいてか、玲がわたしの席まで来てくれた。



玲「華はこれから委員会?」



華「うん! あ、玲は役員決めのとき保健室にいたから、まだ何処にも所属してないよね?」



玲「……」



玲は下を向き、複雑そうな顔をしていた。



華「玲?」



玲「あたしと龍は先生の雑用係だって」



華「ざ、雑用?」



隣の席でイヤホンを耳に付け、音楽を聴いていた鈴木くんがフッっと鼻で笑った。



龍「お前達はクラスのみんなに迷惑かけたから、その罰として今日から俺の下部になってもらうとか訳のわからねぇーこと言ってやがったな。あのクソ野郎」



玲「ちょっと! 乙女の会話に口挟まないでくれる?」



龍「はあ? 何処に乙女がいんだよ? 笑わせんな」



玲「あたしのことはともかく、華は乙女でしょーが!」



龍「立川が乙女だぁ?」



鈴木くんはわたしの顔を見たかと思うと、再び鼻で笑った。



龍「微妙じゃね?」



がーーん



玲「あたしの友達になんてこと言うんだよ! このブサイクッ!!」



龍「んだとっ!? このブスッ!!」



華(微妙って、なんかちょっとショックだなぁ)



わたしが1人で凹んでいると、背後から控えめな声が聞こえてきた。



「立川さん?」



華「へ?」



振り向くとそこには黒髪でメガネをかけた見覚えのない男の人が立っていた。



メガネ「あの……さ、美化委員ってどの教室で活動するか知ってる?」



華「――誰?」



メガネ「うわっ、酷っ! 俺、君と一緒の美化委員に入った池本ですが?」



華「あっ、あなたがいっ、池本すん!?」



池本「そうだよ。そんな噛みまくるほど俺って存在薄いのか?」



華「ごめんなさい。えーっと、美化委員が集まるところはえぇ〜っと」



池本「まさか立川さんも知らないとか?」



華「――すみません」



玲「華、そろそろ委員会始まる時間だけど大丈夫?」



華「大丈夫じゃないかも!?」



1人でわたわたと慌てていると、肩をポンと叩かれて思わず変な声が出てしまった。



佐藤「そんなにびっくりしなくても。それより、家庭科室」



華「え?」



佐藤「美化委員会は家庭科室に集合だから、早く行ったほうがいいと思うよ?」



華「ありがとう!! 佐藤さん!」



池本「ど、どうも」



佐藤「どういたしまして」



佐藤さんから集合場所を聞いた私達は、全速力で家庭科室に向かい、勢いよく家庭科室の扉を開けた――まではよかったのですが、もうすでに来ていた金髪の人にいきなり指を差され、わたしは思いっきり怯んでしまった。



金髪「あ゛あ゛〜!! 高橋先生のクラスの生徒が今頃来ましたよ〜?」



華「スイマセンスイマセンッ!!!」



わたしはものすごく悪いことをしたんだと思い、何度も何度もその場で頭を下げて謝った。



池本「いや、立川さん、そこまでしなくても……」



高橋先生「立川、池本! 君達はなんで先生が担当する委員会にわざわざ遅れてくるんだっ!?」



池本「高橋先生がちゃんと委員会やる場所言わなかったからですよ。それに、美化委員担当だったなんて、たった今知りましたよ」



高橋先生「そ、そうか。先生が悪かったんだな。よ、よし、もういいから席に着きなさい」



高橋先生は遅刻した私達を席に座らせると、今日の美化委員会の内容を話し出した。どうやら今日は美化委員の委員長が決まる次第、解散できるとのことだった。わたしはたった今開いたメモ帳を閉じて、隣にいる池本くんに話しかけてみることにした。



華「委員長って、三年生の先輩の中から決めるんだよね?」



池本「おそらくそうだろうね。まぁ、冷静に考えると、俺達が今日ここにいる意味ってないよね」



華「そう、だね」



冷静に考えてみると、わたしがあんなに必死になって謝った意味ってあったんだろうか。ちょっと涙が出そうになった。



高橋先生「じゃあ、委員長候補はいるかー?」



「はあ〜〜い」



やる気のなさそうな返事が聞こえたが、声のトーンで判断するのはよくない。立候補するだけでもすごいこと。むしろ委員長さえ決まってしまえばすぐに帰れるんだ。わたしはメモ帳を再び開き、たぬきだかなんだかわからない落書きをしてやり過ごそうとしていた。



高橋先生「お? 偉いぞ〜! 立候補者は2年生の薄井翔(うすいかける)か。しかしなぁ、委員長は普通、3年生がやるべきだろう」



薄井「先生、そんなこと常識だろ〜んって口調で言わないでくださ〜い!」



高橋先生「だろ〜んって……」



落書きをしながらふとわたしは、この声をどこかで聞いたことがあるような気がしていた。さっきの金髪の人の声、あの姿、肩にかかるかかからないかというほどの髪の長さ、あの口調……



野高「馬鹿なこと言うのはよせ! 薄井!!」



急に席を立った1人の先輩が金髪の人に向かって叫んでいた。茶髪で色白で整った顔をしているこの人を、わたしは確かに覚えていた。



薄井「うるさい! メダカは黙ってろ!」



メダカ「メダカじゃないっ! 野高だっっ!」



華(あれ? あの先輩、この前保健室にいた先輩だ)



金髪の人の顔もよく見てみたら、いつぞやのチーズパン泥棒です!!



薄井「薄井 翔です。今日から美化委員長です。よろしくお願いします!」



薄井と名乗った先輩は、高橋先生の立つ教壇の前まで出てきたかと思うと深く頭を下げて言った。



高橋先生「おいおい、何を勝手に……」



銀髪の3年生「別にいいんじゃないですか? 俺は賛成ですけど」



銀色の髪をした1人の3年生が周りを見ながらそう言うと、一瞬空気が変わったように静かになったが、すぐに賛成の声が挙がった。



3年生女子「はーい! わたしも賛成~! 委員長決まったんだから解散ってことで!」



3年生の先輩たちは次々と帰る支度をし始め、席を立ち上がっていた。



高橋先生「コラコラ、まだ帰るな3年生!」



3年生「お疲れ様でーす」



高橋先生「……」



最後まで席に残っていた1人の3年生がゆっくりと立ち上がった。最初に発言した銀髪の男の人。鋭い目つきが印象的で不良のボスみたいな雰囲気を醸し出していた。高橋先生に近づくとにっこり笑ってお辞儀をした。



銀髪の3年生「あなたのような教師では俺たちをまとめるのは無理ですよ」



高橋先生「ま、待て……」



高橋先生の呼びかけも虚しく、3年生の美化委員たちは一人も残らず家庭科室から出て行ってしまった。



薄井「ああ~あ、完璧に馬鹿にされてますねぇ? せんせ~」



高橋先生「……」



華(先生がしょげてる……)



池本(この人、なんでもっと怒らないかな。あんな勝手なことされたら普通怒鳴るところだよ)



静まり返った家庭科室にパンパンッと手を叩く音が響き渡った。



薄井「さあ〜て、僕の自己紹介も終わったところで、次は君達の番だっ!」



華「君達って、誰のことかな?」



池本「いや、俺に聞かれても……」



今度はパチンと指を鳴らし、残った1年生の顔をなめ回すように見たかた思うと先輩はにたりと笑った。恐怖すぎます。



薄井「じゃあ端から始めよう! 1年諸君!! まずは1年A組から名前と好物を答えいっ!」



華「もしかして、1人1人自己紹介しないといけないの?」



池本「らしいね……」



困惑する1年生を余所に、先輩はA組の生徒の腕を強引に引っ張っていた。



薄井「ほらほら〜! 遠慮せずに立って発言したまえ♪」



先輩は再びにやりと不敵な笑みを浮かべていた。その瞬間、わたしは目が合ってしまった。



華「う゛っ、やっ、なんか嫌だ。あの先輩が委員長だとなんかヤダッ!!!」



池本「今頃否定しても“時既に遅し”だよ。立川さん」



華「うぅ」




この時、わたしは美化委員会に入ってしまったことを早くも後悔していた。








〜委員会〜 完

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