Cheese3~変化~
わたし立川 華。高校1年生。女子高に通うはずだったのだが共学になってしまうという憐れな自体に今現在陥っている。
同じクラスの鈴木くんと、高校で初めてできた友達の玲。この2人の喧嘩を止めることが出来なかった自分が今ここにいる。
昼休みが終わり、屋上から1人で教室に帰ると、2人はまだ戻っていなかった。やがてチャイムが鳴り、担任の高橋先生が教室に入ってきて、5時間目の授業が始まった。
華(2人共、まだ帰ってこない……)
高橋先生「ん? 鈴木と伊藤が居ないなぁ。誰か知ってるか?」
クラス女子「知りませーーん」
クラス男子「つーかあの2人、ぶっちゃけ入学式の日から険悪だったし、今頃マジで殴り合ってんじゃねーの?」
高橋先生「ははは。冗談はやめてくれよ? 入学早々から問題だけは――」
ざわざわと話し声のする中、教室の扉から静かに玲が入ってきた。
華(玲!? すごい傷だらけだ……)
高橋先生「お、おい、今まで何処にいた? 鈴木はどうした?」
玲「今まで体育館裏にいました。鈴木は倒しました。」
高橋先生「たたたたたた倒した!? すっ、鈴木は今何処だっ!?」
玲「保健室です。授業に遅れてすいませんでした」
高橋先生「とにかく今から先生は保健室に行くから、みんなはこれから静かに教室で待機するように。事情は後で職員室に来て話してもらうからな。わかったな? 伊藤」
玲「はい」
玲が自分の席に向かおうとしたところで、1人の生徒が立ち上がった。
佐藤「高橋先生!」
高橋先生「ど、どうした、佐藤」
佐藤「伊藤さんも保健室に連れていってあげて下さい。酷い怪我です」
華(佐藤さん……)
高橋先生「そうだな。伊藤も保健室に行こう」
玲「――はい」
先生と玲が出ていくと、教室の中は異様なほど静かになった。
たぶんまだ入学したばかりで、みんな気軽に話せる相手がいないせいだと思った。
佐藤「これからクラス役員と委員会役員、決めませんか?」
教室の中で1人だけ立っていた佐藤さんが、沈黙を破るように言い放った。
クラス女子「なんで今決めるの? 別に先生が戻ってからでもよくない?」
佐藤「もともとこの時間は役員決めの時間ですよね? わたし達だけで進めていてもいいと思います」
クラス男子「佐藤さんに賛成ーー」
華(佐藤さんってすごいなぁ。ちゃんとみんなの前で思ってること発言できて)
佐藤「クラス委員なんですけど、委員長に立候補したいんです。わたし」
クラス男子「佐藤さん美人なんでいいと思いまーーす」
クラス女子「美人でヒイキすんなっ! 男子サイテー」
クラス男子「うっせぇ! ブス!」
クラス女子「マジでムカツク。大体なんで女子高が共学なんかになったんだよっ」
クラス男子「それはこっちのセリフだよ! もともと男子校通うはずだったのに。あ〜あ、うるさい女っているだけで胸クソわりぃ」
クラス女子「その言葉、そっくりそのままあんたに返すわよっ!!」
華(誰か……止めて……)
佐藤「お願いですから静かにして下さい。わたしがこれからこのクラスの委員長として役員決めの進行をします。異論、ありますか?」
クラス女子「……」
クラス男子「……」
佐藤「異論がないようなので、これから役員を決めていきたいと思います」
華(すごい、すごすぎる! たった1人でクラスをまとめちゃった!)
その後、佐藤さん進行のもと、クラス委員・委員会・教科係と次々と決まっていった。
わたしは中学の頃からずっとやっていた美化委員会に立候補し、無事に役員決めが終わった。すべての役員決めが終わったところで、高橋先生が帰ってきた。
高橋先生「みんな、待たせてすまない」
佐藤「先生、すべての役員が決まりました。これで決定しましたからよろしくお願いします」
先生はあっけにとられたような顔で佐藤さんが指差した黒板に視線を向け、書かれた役員と決定した名前を眺めていた。
高橋先生「これ、全部いま決めたのか?」
佐藤「はい。ちなみにわたしはこのクラスの委員長に立候補しました。精一杯努力しますから、よろしくお願いします」
高橋先生「あ、ああ。じゃあ、よろしく頼むよ」
佐藤「はい」
こうしてクラスの委員長は、正式に佐藤さんに決定した。
華(佐藤さんって第一印象は大人しい感じだったけど、本当はしっかりした人だったんだな)
その時、佐藤さんのイメージがしっかり者でみんなを引っ張るリーダータイプに変わったとしかわたしは思っていなかった。
これから想像もしなかった出来事が起こるとも知らずに……
〜変化〜 完