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とろけるCheese  作者: KoKoRo
2/23

Cheese2~友達~

入学式が終わった翌日。わたしはついに6時間もこの不安要素タラタラのクラスメイトと共に授業を受けなければならない。



華(――恐怖です)



朝、教室に入る前に大きく深呼吸をし、いざ自分の席に着こうとしたとき、誰かが近寄ってくる気配を感じた。



佐藤「立川さん」



華「はっ、ハイッ!」



佐藤「お、おはよう」



華「おっ、オハヨー!」



昨日のくりっとした瞳の子が挨拶をしてきてくれたのが嬉しくて、思わず手をあげて挨拶してしまった。そうしたら、クラスの人たちの目線がこちらに向いたので、恥ずかしくなってそそくさと手をおろした。



佐藤「………」



華「あ、あれ? どうしたの? 佐藤さん」



佐藤「あのね、よかったらわたしと……」



華「??」



佐藤さんが何か言いかけたところで、昨日机を蹴っ飛ばした本人が教室に入ってくるや否やズカズカと足音を立ててこちらにやってきた。



伊藤「立川さん!」



華(ううっ!? おっかない人がこっちにキターーー!?)



佐藤「あ、わたし、席に戻るね」



華「え、う、うん」



佐藤さんはわたしに背を向けて自分の席に着いてしまった。



伊藤「あ、ごめん、邪魔しちゃった?」



華「いいえ、大丈夫……ですよ?」



伊藤「そ? よかった!」



華(わたし、この人に何かしたかな……でも、おっかないから怒らせないようにしなきゃ。怒らせないように――)



伊藤「ねぇ、あたし、あなたが好き!」



いきなり告白されて、わたしはこれ以上開かないほど目を見開いた。



華「なっっっ!?」



伊藤「ああ、変な意味で取らないでよ? あたしが好きなのは、あなたのその髪形だから☆」



華「か、み?」



伊藤「そう、そのボンボリ! 今時そんな古風なボンボリ付けてる人みないからさぁ〜! なんか小学生みたいで可愛い」



華「小学生……ですか」



伊藤「ねぇ! 今日、あたしとお昼一緒に食べない?」



華「えっええぇ!?」



馬鹿にされたかと思えば急なお誘いにわたしは戸惑いを隠せなかった。



伊藤「ダメ?」



華「いえっ! 滅相もないデス!!!」



伊藤「じゃあ決まりね! 昼、屋上集合ってことでよろしくぅ♪」



華「いっ伊藤さん!! あの、屋上って開いてるんでしょうか?」



伊藤「開いてるよ? 昨日行って調べたから」



華「そう、ですか」



伊藤「――ねぇ、あたしのこと怖い?」



ずずいと顔を近くに寄せられ、伊藤さんのまつげの長さにドキドキした。



華「ななななななぜですか!?」



伊藤「だって同い年なのに敬語だし、それにさっきから伊藤サンって」



華「すいません……」



伊藤「これからは敬語使わなくていいし、それに名前で呼んでくれていいから」



華「名前って?」



伊藤「玲。覚えてよ?」



華「ハイッ! 玲……さん」



玲「呼び捨てでいいって! じゃあね、立川 華サン」



華「う、うんっ!」



華(玲さんって意外といい人だぁ!!)



佐藤「…………」



そのとき、わたしは佐藤さんの視線がずっとこちらに向いていたことに気づいていなかった。そして、長い授業を終え、お昼休みとなった。



華(ふぅ〜、やっと午前の部、終了っと! 購買でパンを買って屋上へ行こう!)



一言パンを買いに行くことを玲さんに伝えてから、わたしは小走りで1階にある購買へと向かった。すると、大勢の先客で廊下が埋め尽くされているのを見て、不覚にも一瞬ひるんでしまった。




華(うわぁ! すごい人だなぁ。ちゃんと買えるかな?)



列の後ろに並ぼうと一歩を踏み出した直後、後方からドタドタと誰かがものすごい勢いで走ってきた。わたしは思わず道をあけ、走ってきた人物に目をやると、背が高くて金髪、男子制服ズボンのチェック柄が青いから、おそらく2年生の先輩だということはわかった。




金髪「どぉ〜けえぇぇぇぇ!!!!」



華(ヒィィィ!?)



金髪の先輩は列に並びもしないで先頭に割り込み、レジの前に立ってるおばちゃんに話しかけていた。



金髪「あ、おばさ〜ん、チーズパンってありますか?」



おばさん「ハイハイ、あと3つ残ってるよ」



金髪「じゃあ、それ全部僕に下さい」



華(チーズパン!? うそっ!! 食べたい!)



おばさん「はいよ〜」



金髪「あはっ、ありがとう!おねぇさん♪」



華(チーズパンが割り込み先輩に取られた……)



金髪「よぉ〜し、Breakfastゲットだ☆ 帰るぞ! メダカ!!」



パンが入ったビニール袋を誇らしげに掲げている金髪先輩のすぐ横で、細身で長身、色白で優しそうな男の人が大きなため息をついていた。



メダカ「あのさ、『Breakfast』って朝食って意味じゃないっけ?」



金髪「そんなことはどっちでもいい。帰るぞえ〜〜!」



メダカ「はぁー……」



金髪先輩は再び走り出し、居なくなったかと思うと、まるで嵐が過ぎ去ったかのような沈黙がその場に広がった。



華(今の人たち、一体何者? 変わった先輩もいるんだな)



わたしは律儀に列の最後尾に並び、残り物のパンを買って急いで屋上に向かった。



華(すっかり遅くなっちゃった。玲さん怒ってないといいな)



屋上の扉を開けると、玲さんが見えたので安心した。声を掛けようと屋上に出ると、もう一人いたことに気づく。隣の席の鈴木くんが玲さんを睨みつけて立っていた。



鈴木「………」



華(あれ? 鈴木くん??)



鈴木「まさかお前とこんなところで会うとはな」



玲「ようやく思い出したか。泣き虫の龍」



龍「うっせぇ。もう俺はガキの頃とはちげぇーんだよ」



玲「フン。そのセリフ、あたしに勝ってからいいな」



龍「望むところだ」



華(この2人って知り合いだったんだ )



2人の様子に怖くなって後ずさりした瞬間、持っていたパンを落としてしまった。



玲「――華?」



華(あ、どうしよう。見つかった……)



龍「立川」



華「ハイッ!!」



龍「わりぃ。この女、少し借りてくぜ」



華「え? え?」



玲「ちょっと用事できちゃったから先に食べてて? ごめん。華」



玲さんはそう言い残して、屋上から鈴木くんと一緒に出て行こうとしていた。



華「ふっ、2人ともこれから何処にいくの??」



玲「……内緒」



華「喧嘩ならやめて!!!」



思わず大声で叫んでしまった。



玲「!」



龍「――なんだ、わかってんじゃん。立川」



華「お願いだから喧嘩はやめてください」



玲「お願いならあたしもあるわよ。友達なら、見守って?」



華「とも、だち」



玲「ね?」



玲さんはわたしの手を握って、やさしく微笑んでくれた。



華「うん。わかった。わかったよ、玲」



玲「サンキュー」



そう言って笑った玲は、鈴木くんと共に屋上から出て行った。

独りぼっちになったわたしは、なぜだか急に寂しくなって、悲しくなって、お昼を食べることなんて忘れてしまっていた。




〜友達〜 完。


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