Cheese1~入学式~
わたし、立川華。
女子高に通う一年生……のはずだったのだが、近くにある男子高とこの春から合体。そして、今日から共学という恐怖が待ち構えていた。
4月、入学式当日。家を出る前、弟に高校生にもなって恥ずかしいからやめてくれと言われたのを無視し、おばあちゃんに貰った赤くて丸いボンボンの髪ゴムで髪をしばり、わたしは今日から通う高校へ向かった。真新しい校舎の中へ入ると、見知らぬ男子がウヨウヨと歩いている姿が見えた。
華「あ、ありえない!」
わたしは自分のクラス(1年C組)へ行き、黒板に貼り出された座席表を見て、ドキドキしながら自分の名前が書いてあった席に座った。その時、茶色がかった長い髪に瞳がくりくりしていて可愛い一人の女の子がわたしに話しかけてきた。
??「あ、あの」
華「はっはい!?」
??「急に話しかけてごめんなさい。あの、ここ女子高ですよね? どうして男子がいるんですか?」
華「えーっと、今年からこの学校の近くにあった男子高と共学になったみたい、です」
??「そうなんですか。わたし、この街に引っ越してきたばかりで何も知らなくて」
華「そうなんだ……」
??「あ、あの、わたし佐藤雅といいます。これからよろしくお願いしますね」
華「う、うんっ! もちろん。あ、わたし立川華です!! よろしくお願いしますっ!」
雅「はい」
彼女はにっこり笑って返事をすると、小走りに自分の席へと戻っていった。
華(可愛い子だったなぁ。仲良しになりたいなぁ)
せっかく和んだところで、机を叩いたような音とイヤホンから音漏れしているであろう、激しい楽曲が聞こえてきた。
「♪♪♪♪♪♪♪♪」
華(ひっ!? な、なに??)
隣の席をチラッと横目で見ると、茶髪で怖そう(でもちょっぴりイケメン)な男子が机の上に足を乗せ、イヤホンで音楽を聴いていた。
華(うっ、怖いなぁ。ふ、不良??)
不良「……」ギロッ
華(うわわっ!?目が合っちゃったぁ〜!)
すると突然、長い黒髪でスラッとしている綺麗な女の人が、不良男子の座る席の前に立っていた。
女「ねぇ、そこの男子。うるさいから音楽切ってくんない?」
不良「あ゛あ゛? なんだテメェは?」
華(ひぃぃ〜!! 喧嘩はやめてーー!!)
女「入学式の日に音楽なんか聴いてんじゃねぇーよ」
綺麗な女の人がパンツ丸見えで足をあげたかと思うと、隣の机をものすごい勢いで蹴っ飛ばした。
不良「っんだテメェ、やんのかコラ!?」
華(ヒィィィーー!)
まさに一触即発のその瞬間、教室に担任らしき人が入ってきた。黒髪女子と不良男子が睨み合っているのを見て、先生は慌てた様子で駆け寄ってきた。
先生「お、おい! そこ! 何をしてるんだ?」
不良「――チッ」
先生は座席表と手に持った名簿を見比べてから大きく息を吸って口を開けた。
先生「入学式当日から問題を起こすんじゃない! 鈴木と立川!」
華(え゛え゛!? わ、わたし!?)
女子「先生。わたし、立川じゃありません。伊藤です。伊藤玲」
先生「い、伊藤?」
伊藤「はい。ここにいる鈴木くんの態度がどうしても許せなかったんで注意してたんです」
先生「そ、そうか。しかし何も机を倒すほど暴れんでもいいんじゃないのか? ええと、鈴木龍!」
鈴木「倒したのはこの女です」
先生「は? 倒したのは伊藤、なのか?」
状況がまるで掴めていない先生をよそに、別のクラスの担任らしき先生が教室に入ってきた。
別の先生「高橋武先生。そろそろ入学式が始まる時間なので生徒を廊下へ整列させて下さい」
高橋先生「 あ、す、すいません……」
華(なんだか頼りない先生だな)
そして、入学式が始まった。頼りない担任の高橋先生。隣の席は不良の鈴木くん。おっかないクラスメイトの伊藤さん。
はやくもわたし、立川 華は、この先の高校生活に不安を抱き始めていた。
〜入学式〜 完