5話 想像以上ですね・・・ハイ
「まったく・・・仕事前に何をしてるかと思っただろ」
「ホントだよ!」
「僕のせいじゃないからね!?」
「ほらほら、もうすぐ時間だよ?警察も集まってきてるんだから静かにね」
「「「お前(リーちゃん)のせいだからな(ね)!!」」」
大変だった・・・。蘭樹はあることないこと口走るし、美奈は僕の話聞かないんだもん。
やっと落ち着いたと思ったら莉那が僕の部屋から出てくるせいで(本人はアルバムをしまってただけと言ってるけど)二人がなかなか落ち着かなかった。
でも、今は嫌でも落ち着かされる。服は黒と白の喪服というかマフィアとかが着てるやつで顔には黒い仮面、場所は標的の店の前の民家の屋根なんだから。
「予告状出したのが昼過ぎなのによくまぁ、こんなに警察呼べたね」
「それも、悪魔の力ってやつかなぁ?」
女の子二人はまだ悪魔の話・・・それより大事な部分があるのに。
「ケン」
「なんだよ蘭樹?」
こいつがまじめな顔して話しかけるなんて珍しいな?こいつも気付いたのかな?
「おかしくないか?誰一人警察官バッジつけてないぞ?」
「そうなんだよ。今まで何度か警察官に化けた危ない見張りとかはいたけど今回みたいに完コピじゃない奴はいなかった」
そう。僕たちが予告状を出して警察を呼ぶのは仕事が終わった後に変装して逃げやすくするため。
そのために警察の衣装などはボスに覚えさせられる。
だからこそ、おかしいことに気付ける。
「もしかして、警察を呼べない理由があるのか?」
「そう考えるのが普通だね。アレだけわざと時間を空けておいたんだから」
「だとすると、あいつらは只者じゃないな。まず一般市民じゃない」
「じゃなきゃ大事な刀奪われちゃうからね」
でも、なんだろう。それだけじゃないんだおかしいのは。でも、何がおかしいのか分からない。
「難しいこと考えてるとこ悪いんだけど、そろそろ時間じゃない?」
「行こうよ!」
僕が考えてると莉那と美奈の声が聞こえた。
「そうだな。時間に遅れちゃ悪いし。しくじるなよケン」
「当たり前!」
何をするかって?そりゃ、僕の一番得意なことだよ!
「いっけー!」
僕は腰に巻いたベルトから二丁の拳銃を引き抜き二人の警備員に向かって撃ち放った。
・・・もちろん外れないよ!
パンッ パンッ
「行くよ!」
「「「おうっ!」」」
莉那の声を合図に僕たちは店の前に降り立った。(もちろん魔術の創造で足場を作ってるから無傷)
「莉那鍵開けて!」
「ハーイ・・・ってえっ?」
「どうしたの?」
「あ、開いてる・・・」
「えっ!?」
泥棒が来るって分かってたのに!?
「流石におかしすぎるでしょ」
「罠・・・だろうな」
「でも、中入らなきゃ話進まないよ?」
「だけど、コレは危険だよ・・・」
どうしよう・・・。罠だって分かって「さっ、行こっか」流石、莉那だよ。
「お邪魔しまーす」
「泥棒するときの感覚じゃないよな」
「確かにね」
三人が中に入ると五人の警備員が一斉に襲い掛かってきた。
あーあ。
「ここは催眠針かな。ちょっと寝ててね」
「メリケンサックの準備は万端。ワンパンKOといこうか」
「創造【魔法の杖】ごめんね、お仕事だから」
この三人相手に勝てるわけないよ。そして、僕の予想通りに
莉那はキレイに針を相手に突き刺し
蘭樹はメリケンサックであごを打ち抜き
美奈は魔法の杖で完全に凍りつかせた。
残り二人?僕の弾食らってのびてるよ。
「コレで終わりかよ。意外にあっけなかったな」
「そうだね。ボスも警戒しすぎだね」
「さ、二階行こっか」
確かに、ボスが言うほど大変な仕事じゃないだろうけど・・・なんだろう。
なんだか嫌な予感がする。
「ねぇ、皆この人達・・・ってもういない!?」
僕は慌てて二階へ上がった。
「あんたらが最近噂になってる泥棒か。うちになんのようだ」
当たり前だけど、神木 武が二階で僕達を待っていた。
「アンタのお父さんが持ってる七つの短剣あるだろ?アレもらいに来た」
「元々、アレはあなたのものじゃないから取り返しに来たが正解なんだけど」
「下の奴らは?」
「残念。下で全員身動き取れなくなってるよ」
「そうか」
「もう諦めなさいよ。流石に四人相手じゃ選ばれし七人と言われているアンタでも無理がある」
「・・・くっ」
神木は下を向いて何も諦めたような言葉を吐いている。まぁ、流石に無理だよな・・・。
そう思ってたのに・・・神木は諦めていたわけではなかった。
「くっくっ・・・あっはっはっは!」
「な、何がおかしい!」
「お前ら何勝った気でいるんだよ!身動きできなくした?そんなわけないだろうが!なぁ、親父?」
「そうだな。ありえない」
「後ろ!?」
そんな!僕が上がってくるときに人の気配なんて感じなかったのに!外にいたの!?
「撃破【キャノン】!」
そういった瞬間、神木の手から実態のない直径十五センチ程の弾丸が放たれた。な、何!?
「しまっ・・・がはっ!」
「ら、蘭樹!美奈お願い!」
「わ、分かった!」
こ、こいつ撃破は下手すると命を刈り取る可能性もあるって言うのに何の躊躇もなく放ちやがった!
「あ、アンタ自分が何したか分かってるの!?」
「お前らは悪だろ?命なんかどうなったっていいだろ」
「このっ・・・!」
「落ち着けって。乗せられたら相手の思う壺だって」
「分かってるけど!」
「だから、ここは僕に任せろって!」
くそっ・・・。選ばれし七人ってのは伊達じゃないわけかよ。だけどな・・・
「僕も、仲間撃たれて黙ってられないんだよ!」
僕はアイツの心臓めがけてゴム弾を放つ。
「はぁ!」
もちろんそれは撃ち落とされる。だけど!
「狙いはそこだよ!」
そっちに気がいっている間に僕はまわりこんで神木の目の前から心臓めがけて撃ち込む。
「しまっ・・・」
神木がその場に倒れこむ。よし!
「さて、後はアンタだけよ!」
莉那が神木父に麻痺針を向ける。
「蘭樹、行けるよ!」
「ナイス美奈!」
蘭樹も美奈の治癒のおかげで怪我が治ってる。コレで勝った!
「まったく、こんな大きい店でも俺らには狭いんだよ。あんなに暴れられちゃ。おとなしく奪った七つの短剣を返してもらおうか」
「アレはアナタのものじゃない!元の持ち主に返すだけだから素直に渡しなさい!」
蘭樹と莉那が決め台詞と言わんばかりにかっこよく決めた。
「かっこいいねぇ二人とも」
「僕らもあんなふうに決めてみたいよね」
だけど、神木父は諦めることなく僕らに言い返してきた。
「お前ら、人間があの短剣を持っていくだと?ふざけるな!」
「何言ってるんだよ。お前も人間だろうが」
「私は違う。私は神になる者だ!あの短剣に眠る悪魔を取り込んでな!」
「お前頭大丈夫?僕でよければ精神科紹介するよ?」
「なんとでも言え。お前らに現実を教えてやる!暴れろお前ら」
「お前らって、誰ももういな・・・ってえっ?」
美奈が驚くのも当然だった。僕達だって振り返って驚いた。
「「「・・・・・・」」」
そこには、さっき皆で身動きを封じた内の二人がいたんだから。
同時刻 ベルブ上空
「ついに[堕神]が動き始めたか。いったいあいつらはどうするか。見ものだな」
空の上に何も使わずに立っている人影は一人でつぶやく。