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車椅子盲目の姉と不死の妹  作者: ももんが
2/4

はじまりはいつ?2

「凛子ちゃーん!桃子ちゃーん!お父さんたち帰ってきた?」


家を出て数秒で近くに住む琴音さんに話しかけられる。明るく朗らか騒がしい素敵なお姉さんだ。


「いやーそれがまだ音沙汰もなく、、、」


「えー!もう何ヶ月たつのよ、、、こんな若い子だけ残して何してるのかしら!戻ってきたらおばちゃん怒ってあげるからね!桃子ちゃんの火傷も腕も足もぐるぐる巻じゃないの!凛子ちゃんの病気も大変なのにそばにいてあげないなんてもう!!!」


感情表現の激しい琴音は身ぶり手ぶりを加え激しく喋る。


「本当、私たちついてないよね。だからこれから、アミラ山の神様のところへお参りに行ってきます!」

桃子がそう答えると、琴音は目を丸くした。


「あら!そうなの!邪魔して悪かったわ。山神様によろしくね!夜ご飯良かったら作っておくから帰りに寄ってってね〜!行ってらっしゃい!」



琴音は手を振り踊るように歩いて去っていった。


「お姉ちゃん。」


「なあに?」


「私たち火傷と病気って事にしてるじゃない?」


「そうね、なんか呪いだなんて言えないものね」


「それ信じてるの琴音さんだけじゃね?」


「、、、、、やっぱり、そう思う?」


「うん、、、見てよ、、、あ、見えないか、、、、他の集落の人たち。家から出ないどころか化け物見る目でこっち見てるよ。」



桃子はため息をつきながら、ちらりと周りを見回す。窓や扉の隙間から覗く視線と目が合った瞬間、バタンと閉められた。



「私達も立場が違えばそうなっていたかもしれないわ。とりあえず先を急ぎましょ。」


「はーい。」


初夏の匂いが満ちる山道には、色とりどりの植物が咲いている。

凛子は鼻歌を口ずさみながら、その香りを胸いっぱいに吸い込んだ。


視力を失ったときは絶望した。

けれど、香りや音を楽しむことで、自分をどうにか保っている。

何より妹がいる。立ち止まって嘆いている暇なんてない。



「鼻歌なんていいご身分ですにゃー。こっちはしんどいんだーい!」


凛子の体重&荷物を押す桃子はヒーヒー言っている。


「ふふ!ごめんごめん!あまりにも乗り心地よくて!」


「褒めて貰えるとなんか、頑張れちゃうな!ファイト~自分〜!」



山道が深くなるにつれ、花は減り、緑の濃さが増していく。

生い茂る巨木、絡みつく蔦。木漏れ日が美しく揺れて、桃子の気分も少しずつ軽くなった。


「お姉ちゃん!もうすぐつくよ!門が見えてきた!」


アミラ山の神様が祀られる祠の手前には、自然に生えた巨木の門がある。

根元には、人が三人並んで通れるほどの大きな穴。


通る前には一礼。出るときも一礼。それが礼儀だ。


「いくよ、お姉ちゃん。」


2人は声を揃えて一礼し、巨木の門をくぐった。


……その先に、祠はあるはずだった。


「祠までの距離が延びてる気がするんですけどぉ、、、」


巨木の門を抜けるとすぐに祠のはずなのだが山道が続いている。はるか先に祠が見えた。


「桃子大丈夫?」


その時凛子の椅子がガシャンと音を立てる。


「?!うそ?!壊れた?!なんでなんで!進まないーーー!動かないー!」


押しても引いても椅子はびくともしない。


「本当なんかついてないわね、私たち。。。」


「いや、これはもう山神様の意思でしょ。意地悪されてる感じがする。でもいいや!お姉ちゃん、おんぶするから、しっかりつかまって!」


桃子は長い布を荷物の中から取り出すと器用に凛子の体を支え背中に背負った。


「無理しないでね、、、無理したらまた体千切れちゃう。」


「大丈夫。もうすでに肩千切れかけてる。」


「全然大丈夫じゃない!」



祠へ続く道を歩き出す。

だが、歩けど歩けど距離は縮まらない。


「くっそ……意地悪……。何が山神様だ。こんな可愛い姉妹に試練与えて、何のつもりだ?可愛いからって妬んでるんじゃないだろうな……」


桃子は小声で愚痴をこぼす。凛子は返事をしない。ただ、少しでも妹の負担を減らそうと体を預けていた。


5分、10分と歩き続ける。


「あー、、、ごめんしんどい。ちょっと休憩していいー?」


「うんうん!もちろんだよ!本当ありがとう」


進んだのか進んでないのかわからない山道に凛子を座らせると桃子も隣に腰を下ろした。



「どうしよう。本当に一生、祠に着けないかも」


「不思議ね……。山神様の意思かしら?でも、だったら最初から祠を隠せばいいのに」


「そうだよ!そうしてくれれば楽なのに!」


桃子は大の字になって伸びをする。

その横で凛子は思索を巡らせていた。


「進めない。無限。試してる?……何のために?」

桃子の先ほどの言葉が、頭の中で蘇る。


――『くっそ……意地悪……。何が山神様だ……』


「もしかして、信仰が足りない?」


凛子は祠の方に向かって大声で叫んだ。


「山の神様!こんなことできるなんてすごい力だわ!!!!!信じていたけど、更にお慕いしちゃう!」



すると空間が歪み、祠がグッと近づいた。



「?!近づいた!」


「桃子もなんか叫んで。山の神褒めて。褒めちぎって。」


「え、よーし。山の神本当すごい!信じていたけどもっと信じちゃう!山道のお花や木々も素晴らしかったしやっぱり山の神は違いますわ〜!」


「ほんとね!こんなにも素晴らしい神様に見守って貰えてる私たちは幸せ者よ!」


褒め言葉を口にするたび、祠はどんどん近づいてくる。


「素晴らしい神様に早くお会いしたいなあ、、、」


祠はもう目の前だ。


2人は声を合わせて叫ぶ


「「山神様〜!お慕いしてまーーーーーす!」」



祠から音と共にもくもくと煙が広がって出てくる。

ゆっくりと煙が散っていくとかわいらしいもこもこの体が見えてきた。



「いやーそんなに求められちゃって恥ずかしいなあ。照れちゃうなあ。そんなに俺の事好き〜?」


煙がはれて姿が見える。








「え。もぐら??」



「もぐ、、!!モグラじゃない!俺は山の神!アミラ!!!敬わないと呪うぞ!!!!」






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