かつて勇者が使った最初の武器
その昔、ある勇気ある若者が人間の世界に侵攻してきた魔を退けた。その者は後の世で勇者と呼ばれるようになり、称えられた。
勇者はいくつもの武器を扱ったと言われており、勇者が使ったとされる武器は世界の各地で伝説と共に安置されていた。
あるとき、女神から預言者に神託があった。
魔が再び人間の世界へと侵攻しようとしている。そしてそれを退ける勇者もまた再び生まれようとしている、と。
魔を退ける新たなる勇者は、かつて人の世を救った勇者が使った最初の武器を手にして人を助ける、と。
この信託はすぐに世界中に知らされ、世界中に安置されている武器に我こそは勇者だと自認する人々が群がり、三々五々に世界中へと散っていき各々魔を打ち倒そうとしていった。
世界中に自称勇者が数多く現れていたが、そんな騒ぎには無関係な、勇者の武器とは縁のない小さな村である日、幼い兄妹が遊びで森へと入っていった。
村には勇者ゆかりの武器はなかったが、長老たちはこの村こそが勇者が旅立った村であるという伝説を子供たちに語って聞かせ、かつての勇者のように勇気のある人になるように、と言って聞かせていた。
遊んでいる内に兄妹の前に、一匹の蛇が現れる。兄は泣き出す妹を見ると長老たちの話を思い出して妹の前に躍り出た。そして無我夢中で近くに落ちていた古ぼけた木の棒を掴むと、必死になって蛇に向かって振り回す。
その表情には、幼いながらもたしかに、人を守ろうとする勇気が満ちていた。
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