アトランティス その1
「Is that so?」
(そうなのか?)
二人組の会場内を見回りをしていたテロリスト集団が、11番倉庫の前で立ち止まり訝しんだ。
―――
11番倉庫内
「あ! やばい! みんなテロリスト集団が倉庫の外にいる。こっちに来そうだよ」
推し活の一人。ひょろ長い男は、通常の人間の数十倍の聴覚だった。外の危険に気が付いて、みんなに知らせた。
「みんな! やっつけてやりましょうよ!」
「いや、イヤー! 恵美ちゃん! 相手が武装してたの見てるんだよ」
「それが何?」
「撃たれると痛いじゃん」
「……」
推し活のもう一人。その男は短髪で、スポーツタイプのがっしりとした男だった。
「もーう。恵美。涙が出そうよ」
「そんなこと言ったってー」
強気の恵美のキツい言葉に短髪は、涙ぐんだ。
「あ、ねえ。こんなのはどう?」
太った男は、みんなに青色のフィールドを展開した。
そのフィールドは、みんなを音もなく優しく包んでいった。
途端にゆっくりと、倉庫へ通じる扉が開いて、テロリスト集団の二人が、そっと入って来た。銃口は今のところ倉庫を向いていない。テロリスト集団の二人は、中の様子を探るために、銃を下へ向けて入ってきていた。
「There's no one there?」
(誰もいないぞ?)
「Are you sure you thought you heard a scream?」
(確かにはしゃぎ声がしたと思ったんだ)
「we are tired」
(俺たち疲れてるんだよ)
「Isn't it unreasonable? It was quite a long journey.」
(無理もないか。かなりの長旅だったからな)
テロリスト集団の二人は、覆面マスクの顔をお互いに見合わせてから、そのまま帰って行った。
しばらくして、青い色のフィールドが倉庫内一杯を包み、それと同時に、20名のファンと恵美が現れた。
「やったね! ありがと!」
恵美がみんなにウインクして回る。
「ここにいる21人を、一度に能力で隠しやがったぞ。お前も凄いなあ」
「すげえ!」
「ふぅー、疲れたよ」
太った男は、この異能の力を風呂敷包みと呼んでいる。
いわゆる空間などを擬態する能力者だ。