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保護してもらおう!

 地下で目覚めたガリアとセーナ姫、ふたりとボクは向かい合っていた。灯台の魔術という光を灯す類の魔術で、地下室を照らしている。目に優しい緑色の光球をボクらが囲んでいる形だ。


「……助けていただいてなんですが、マオ殿は味方という認識でよろしいかな」


 ガリアの確認にボクは頷く。


 ボクはガリアからボロボロのマントをもらって首に巻いていた。ジャージがもう使い物にならないレベルになっており、肌が出るからとマントで隠してもらったのだ。紳士だ、ガリア。


「ひとまず、ね。ボクが喚ばれた原因がキミらにあるのなら」


 ボクの言葉にセーナ姫が俯く。


「あのよくよく考えたら、すごく迷惑なこと、ですわよね」

「何が、でしょう。お姫様」

「あなたの事情も全く鑑みずに連れ込んだわけで。しかも死地に」

「その通りです」


 ボクは姿勢を正して、真っ直ぐに言う。


「ボクでなければただ死人が増える可能性のほうが高かったわけですから」

「うっ」

「しかし責めるつもりはありません。暗闇の中で奇跡を願った。そして叶っただけです」


 意図的に異世界から召喚して「帰る方法ありまセーン」とか言われたらなんだこいつとはなるが、このホロービタンダ王国において唯一生き残った騎士ガリアとセーナ姫だ。絶望の中藁にもすがる想いだっただろう。もしテンチョーが持っていかれたらボクは怒っていたのかもしれないがボクだしね。


 ボク自身だけの不都合なら魔術でなんとかすればいいのさ! いくらでも時間はあるからね。


「おそらく、ボクははるか遠い国の住人です。食い扶持が見つかるまで、ひとまず協力します。その後は状況次第です」

「一時とはいえ、非常に心強い」


 ガリアは目を細める。


「今後の方針は決まってる?」

「ふむ。こうなった以上、同盟国であったアーティンベル国に保護していただくしかないでしょう。姫様とアーティンベル国の姫であるラスティ様はご友人でありますからな」


 ラスティ姫。デザイアメイロにて魔王に攫われる姫の名前だ。アーティンベル国は代々、必ず姫が生まれる。そして「アーク」と呼ばれる特殊な力をその身に宿している。親から子へ引き継がれるその力はデザイアメイロでもどんな力なのか明確な説明がない。


 それを魔王が手に入れようとして姫を攫うというのがゲームの冒頭だ。主人公は幼馴染で姫を助けるために送り出される。


 ゲームのメインキャラと出会えるのは幸運だ。しかも、本当なら死んでいるはずのガリアとセーナ姫を助けられたから何かしら変化があるかもしれない。少なくとも生きていて損はないはずだ。ガリアは戦力になるのだろうし。


「で、アーティンベル国までは」

「ここから十三日かかります」

「……食料と水は」


 ガリアは俯いた。


「この通り全て燃やされているので」

「……死ぬのでは」


 二人でセーナ姫を見る。何かしら英才教育は受けているのかもしれないが、とてもサバイバルができるとは思えない。


 ぐぅーと見つめられたセーナ姫のお腹がなる。セーナ姫は顔を真っ赤にしてお腹を抑えた。瞳を潤ませてこちらを見る。


「その、聞かなかったことにしてくだしゃい」


 可愛いので脳内保存しました。


 可愛いは正義。ボク自身も可愛いけどね!

 お腹空いてるなら何か食べさせてあげたいけど……うーん。


「三人分の食料確保が優先か」

「いや、ボクは必要ない。いざとなれば土食べるし」

「つ、土……?」


 ボクの返答にセーナ姫が青ざめる。


「た、食べれるのですか」

「飢えを凌ぐために村人が食べるときがあります。私も飢えたときは頼れるよう、一応調理方法は知っていますが、実際には」

「ボクはあるよ、最終手段だね」


 土食文化は世界的にある。この世界は知らないけど、ミネラルが豊富だから、本当に飢えたら頼りにはなる。ボクは食べなくても生きていけるし、本当はいらないんだけどね。


 ちなみに土料理は無味無臭で凄い時間がかかる。道具がなさすぎるから魔術で作ってもそこそこかかるかな。


「移動手段が徒歩で、姫様の休憩も考えると十三日どころじゃない気がするんだけど」

「ふーむ」

「ご、ごめんなさい足手まといで」

「姫様が気に病む必要はありませぬ」

「そうです、姫様は可愛いから何でもいいんです」

「いや、何でもいいというわけではないが……」


 なるべく移動を短縮しないと、せっかく助けたのに餓死してしまう。


「よし、時間をもらうよ」

「何をするつもりで」

「転移魔術を使う」


 ボクはあぐらをかいて膝の上に腕を乗せる。目を閉じて深呼吸を始めた。


「転移……そんなことが可能なのか」

「ボクを信じてくれるなら」


 失敗したら体が真っ二つとか色々リスクあるけど餓死するよりは希望があるだろう。長距離の転移は魔力がかなり持っていかれるからたぶん数日寝る羽目になるけど。


「方角を教えてくれるかい、ガリア」

「西だ」


 魔王の根城が東の方、西から東へ向かうデザイアメイロの進行を考えるとホロービタンダの西がアーティンベル国なのはゲームと同じだ。


 魔王が世界に宣戦布告をして、ホロービタンダを滅ぼしたあとから話が始まるわけだし、デザイアメイロのストーリー通りに魔王が動くとすればさっさとアーティンベル国に移動したほうがいい。


 主人公と合流できるし、元の世界に帰るために情報を集めないといけないから各地をまわる必要がある。魔王が世界征服をしてしまうとホロービタンダのように無茶苦茶に破壊される可能性もあるし、魔王を協力して倒せるなら倒してしまおう。


 ボクがいくら強くても、強くなってもできることは限られるからね。


 ――ま、何はともあれ、とりあえず転移を成功させようか。

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