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ようこそ! アレイスター魔術学園へ〜脳筋令嬢の学園再建奮闘記〜  作者: 宵の月


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後始末



 負傷者の治療やら討伐後の後始末やらで、バタバタと騎士団員達が駆け回る中、フィオナは仁王立ちしたファリオルの眼前で正座をさせられていた。

 そんな二人をレオンとヒースが眉尻を下げて見守っている。


「ファリオル隊長」


 駆け寄っていきた隊員が大きな麻袋を差し出し、ファリオルはそれを頷いて受け取るとフィオナの前にドンと置いた。


「フィオナ、取り急ぎ集めた討伐魔獣から採取した魔石だ」


 チラリと袋に視線をやったフィオナは、少し開いた麻袋の隙間から見える量と質に思わず目を輝かせた。そんなフィオナの目の前で、ファリオルはガサっと麻袋に手を突っ込み、一握りの魔石を取り出してフィオナに突き出した。


「こっちがフィオナの取り分になる」

「え……こっちじゃなくて? 少なすぎない? 中規模の群れだったんだよ!」

「フィオナが暴走したせいだろうが! なんでもかんでも燃やしやがって! こっちはフィオナのやらかしの後始末資金だ!」

「は? ファリオルだってしょっちゅうやらかすでしょ! 暴走するななんてファリオルにだけは言われたくない!」

「俺はフィオナほどやらかしたりしない!」


 勝ち誇ったように顎を逸らすファリオルに、レオンはチラリとヒースを見た。ヒースは肩をすくめて、レオンの無言の質問に答えるようにため息をつく。


「……確かにファリオルは騎士団ないでも功績もトップクラスだね。まあ、始末書の数もトップだけど……」


 レオンが渋い顔してコメントを避け、フィオナは鬼の首を取ったように身を乗り出した。

 

「ほら!! ファリオルだってたいがいじゃない!!」


 それ見たことかとファリオルにくってかかるフィオナに、レオンが呆れたようにため息をついた。


「先輩が普段やらかしてるかどうかは重要じゃないだろ。今回やらかしたのはフィオナだって話をしてるんだから……」

「うっ……」

「そうだ! そうだ! 今は過ぎ去った過去である、俺の始末書の話はしていない!」


 ふんぞり返るファリオルを、フィオナは悔しそうに睨みつける。ファリオルがふふんと鼻を鳴らしてフィオナを見下ろした。


「あんな大規模火災を引き起こして、森林を焼き尽くせば生態系は大幅に乱れる。生態系が乱れれば、予測不能な魔獣が発生するかもしれない。よって王宮魔術師総動員で復興するために資金がかかる。不満なら後先考えずにキレた自分を恨むんだな」

「ファリオルのくせに……!!」


 涙目でファリオルを睨みつけるフィオナに、レオンが慰めるように口を開いた。


「……まあ、それでも報酬はもらえたんだし。節約の目的は果たせただろう? 提示されてる分でも結構な金額になる。ここで揉めるのはやめろ」


 ヒースもレオンに同調するように頷いてみせる。

 

「確かにフィオナは盛大にやらかしたけど、死者もなく被害を最小限に抑えられた。それはフィオナおかげなのは紛れもない事実だ。お礼として報酬分とは別に、必要な刻印魔石は僕が別に用意して届けるから。ね?」


 レオンとヒースを見比べ、フィオナはこくんと頷いた。納得したフィオナに、レオンとヒースがホッとしたように胸を撫で下ろす。後始末で忙しいのに、アレイスター同士で決闘を始められたらとても迷惑。


「殿下。甘いですよ。この脳筋はしっかりしつけないとまたやらかします」

「はあ!? だからファリオルだけには言われたくないのよ!!」

「……ファリオル、やめてくれ。君だって十分脳筋だ」

「フィオナ、落ち着けって。怒れば自分が脳筋だって認めたも同然だぞ」


 脳筋が脳筋を脳筋だとせせら笑い、一瞬にして張り詰めた空気に空気にヒースとレオンがすかさず割って入る。ギャーギャー騒ぐファリオルとフィオナを引き離すべく、ヒースは頭痛を堪えるようにこめかみをもんだ。


「……ファリオル。僕は父上に状況を報告して、土属性に長けた王宮魔術師の派遣を依頼してくるよ。ここの指揮は任せるからね」

「わかりました。そこの放火魔も連れ帰ってください。燃やすばっかで土魔術は一個も刻印してないんで!」

「放火魔ですって!? あんただって魔剣でちまちま耕す程度しか役に立たないくせに!」

「フィオナ、もういいから帰るぞ。ここで先輩と揉めてせっかくの報酬を減らしたくないだろ?」

「そうだよ。一旦帰ろろう、フィオナ。ブースト個体の魔石がいくらになるか、早く確かめたいだろ?」


 拳を振り回すフィオナを、レオンとヒースが無理やり天幕から引きずり出す。宥めすかしながら馬に乗せ、ファリオルの追撃が来ないうちにそそくさと出立した。


「レオン、ずいぶん馬術が様になったね」

「まあ、一日中走らせてれば嫌でも多少はな」

「雷撃、改良加えた?」

「ああ、無属性魔力でより圧縮して、貫通力を上げたんだ」

「へー、無属性か……僕も参考にしよう。容量は? 中位魔術のまま?」

「ああ、俺も容量にはもう余裕はない。中位魔術の範囲で威力を上げた」

「騎士団にも貫通魔術は入れたいな。包囲状態でも外から攻撃を通せるようになれば、損害をかなり軽くできるはずだ」

「なら改良型で早めに登録しておく。騎士団利用なら使用料も安くする」

「いや、使用料は正規のままでいいよ。早めの登録は助かるけどね」

「いいんだ。実際の魔獣討伐を初めて肌で感じて改めて思った。少しでも俺の魔術が役に立つなら、討伐の役に立てて欲しい」


 二人の後を不貞腐れながらついていっていたフィオナは、レオンの言葉に顔を上げた。


「え? レオンって魔獣討伐初めてだったの?」

「ん? ああ、結界外に出ることなんて普通はない。魔獣討伐経験者の方が珍しいだろ」

「まあ、そうだね。脳筋アレイスター家はなんか行楽行事のノリで探索とか行きがちだけど、普通は魔獣討伐に出かけたりしないよ。危ないし」

「そうなんだ……でもそっか……ならきっと……」


 ぶつぶつとなにやら考え込み始めたフィオナに、レオンとヒースは顔を見合わせる。


「フィオナ?」


 レオンが呼んでもフィオナは黙ったままで、かといってもう不貞腐れているようには見えなかった。それならいいかとヒースはゆるく掴んでいた手綱を握り直した。


「じゃあ、少し急ごうか」

「ああ」


 雑談しながらの並足を急がせて、一行は一路城門へと馬足を早めた。


「え、本当にこんなに?」

 

 夕暮れ前には王宮に辿り着いたフィオナ達は、そのまま王宮内の魔石取引所に向かった。ドキドキしながら鑑定を終えるのを待っていたフィオナは、提示された金額に顔を輝かせた。


「はい。質も高くブースト個体からの希少な魔石も含まれていましたので。お取引なさいますか?」

「はい! ぜひ!!」


 乗り出す勢いで高速で頷くフィオナに、ニコニコしながら職員が奥に下がっていく。頬を紅潮させ瞳をキラキラするフィオナに、刻印魔石を注文しに行っていたヒースが首を傾げた。


「フィオナ、どうしたの? なんか好物を差し出された犬みたいになってるけど」

「魔石の買取額が想定以上だったんだ」

「ああ、そうなんだ。じゃあ、いくらか返済する?」


 にっこり笑みを浮かべて喜びにすかさず水を差すヒースに、フィオナは伝票を抱きしめて大袈裟に避ける。


「ダメよ! 落ち着いてじっくり使い道を考えてから、返済するかどうかは決めるわ!」

「そう? まあ、僕のお嫁さんになってくれなら、別に返す必要もないしね」

「ちゃんと返すわよ!」


 換金伝票をしっかり抱きしめ、奪われまいと威嚇するフィオナに、ヒースがくすくすと笑みをこぼした。


「それと、はい、これ。今回のお礼として約束してた刻印魔石の注文票。用意出来次第屋敷に届くはずだよ」

「ありがと!」

「こちらこそだ。本当に助かった。じゃあ、僕は父上に報告があるから」

「うん! またね!」

「じゃあな」


 ヒースと別れ魔石を換金した金貨を握り締め、フィオナはホクホク顔で王宮を後にする。にっこにっこでご機嫌なフィオナに、隣のレオンが眉根を寄せた。


「フィオナ、馬から落ちるなよ」

「平気よ。落ちるわけないでしょ」


 鼻歌でも歌い出しそうなフィオナに、レオンが呆れたようにため息をついた。

 

「フィオナ、確かに単なる節約予定だったのが、思った以上の金額にはなった。でも別に学園経営での収入ってわけじゃないんだからな?」

「……分かってるわよ」


 袋いっぱいに金貨が詰まっている幸福感に、レオンが冷静に現実を突きつけてくる。ムッと唇を尖らせたフィオナに、レオンがキッパリと言い渡した。


「いや、信用ならない。絶対金貨に目が眩んでるだろ。いいか、その資金を使って学園経営の健全化するために、なにをするかが大事なんだからな!」

「だからちゃんと分かってるって! 学園経営の健全化になにをするか……そう、なにをするか……そうよ……思った以上の資金になった……それに……」

「フィオナ?」


 うるさそうに答えていたフィオナが、急に考え込み始める。不審そうにフィオナを覗き込むレオンに、フィオナは勢いよく振り返った。


「そうよ! それなら一石二鳥どころか、三鳥にも四鳥にもなるわ! レオン! 急いで帰るわよ! 手伝って!!」

「え? おい、フィオナ!」


 換金額を提示された時と同じくらい顔を輝かせたフィオナは、屋敷に向かって爆走を始めた。急に走り出したフィオナに、わけもわからずレオンは後を追いかけた。

 


  

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