元素魔法
婚約破棄される一日前
「またやっちゃった・・・」
朝起きてベットから起き上がる私
布団をめくり、自分の下腹部をみると水分を吸って膨らんだおむつがあった
肌と紙製の生地が水分でべっちゃりとくっついてる
濡れたおむつを取り替えて
私は、朝食をとるためにリビングへ向かう
リビングにつくとそこにはお父様とお母様とお兄様と三人のお姉様が座っていた
おはようございますの挨拶をした後
粛々と朝食を食べ始める私だったけど
ずっと機嫌が悪そうな両親から言葉が放たれた
「これで何度目だ!もう回目だぞ」
「またご破算になったらしいわね、次で嫁げなかったら・・・家には置いておけないわね」
「はい・・・申し訳ございませんお父様お母様・・・」
両親から一方的に告げられた言葉の内容は私の婚約に関すること
簡単に言えば、貴族の末娘として生まれた私は、魔法しか取り柄がなく
どんくさく全てにおいて兄姉より劣っていた
他の有力者の貴族と結婚して子孫を残してディッパー家の繁栄に貢献しなければ
いらない子供として、捨てられる運命にある
私の名前はアクア・ディッパー
桃色のぼさぼさ気味の長髪で子供みたいな低身長、童顔
自分で言って、言お世辞にも美人とかではないと顔です
ただでさえモテないお顔なのに、おむつまで履いてる貴族令嬢を誰が妻に欲しがるのか
逆に聞いてみたいくらいだ
「また婚約破棄されたんですって、どうしようもない妹だこと本当に」
「はは、よせよ・・・こいつまた昔みたいにピーピー泣くぞ」
「お兄様・・・お姉様・・・うう」
そんな私をお姉様とお兄様は嘲笑する
「まったくだ、姉のカタリナは隣国の王子と婚約してるというのに」
私の姉カタリナは、頭が良く魔法の才能があり
兄のノースも家の跡継ぎとして優秀な人物である、数々の戦場で魔族を討ち取ってきた
ただ、その性格は陰湿で嫌味っぽく
こうやって昔から事あるごとに私をいじめてきて泣かされてきた
私がおむつを履いてる理由の半分の訳
犬の真似させられたり、馬みたいに乗っかられて走らされたり、トイレに行かせて貰えなかったり
小さい頃、兄から受けた奴隷のような仕打ちの数々で
極度の人見知りになってしまい
人前で緊張しやすい性格になる
極度の緊張から来るストレスで
私はすっかり尿が近い体になってしまっていた
後、私が住む地域は寒暖差が激しい
昔、悪い魔法使い兄に魔法(呪い)をかけられた
「おもらしはずっとおむつはいてろよ」
「は俺の奴隷なんだよ!逆らえばお仕置きな」
兄の命令には逆らえない、逆らえば殴ってくる
シンデレラのガラスの靴なんか履けない、私がかけられたのはこの先もトラウマで永遠に脱げないおむつ
私にとって姉や兄たちは悪い魔法使いだ
「うう・・・捨てられたら私一人でどうやって生きていけばいいの~・・・」
両親から後一回失敗すれば家を追い出される恐怖で
廊下を歩く足取りは重く、半泣き状態だった
夜の気温はは昼間から10度近く下がる
体が冷えてきた
部屋に帰った私は扉を閉め
「皆・・・出てきて」
「詠唱、開始・・・!」
元素魔法を行使するの詠唱を開始した
体内のマジクフィウムと空気中のマジクフィウムが呼応する
「大気中のH2とO2を分解、分子をH2Oで再構築」
「水の元素精霊達よ・・・主の呼びかけに応えたまえ」
「ハイドロ・アニマル」
マジクフィウムにより酸素が分解され、水の塊となる
現れた水の塊は鹿やウサギやリスの形となっていた
「皆聞いて・・・私また婚約破棄されちゃった」
私は彼等のに語り掛ける・・・
窓の外の景色には蒸気機関車が走り気球が空を飛んでいた
この国の名前はギリアス共和国、時は魔法産業革命の時代
この世界は科学と魔法と共存し、世界を征服せんとする第三帝国が存在する世界
共和国の町では魔法蒸気機関車と魔法熱気球飛行船が空を飛び、箒で飛ぶ魔法使いが存在し
戦争では魔法を用いて鉛の銃弾を撃ち出すボルトアクション式小銃や機関銃が使われる
古代文明の遺産を利用し天使を捕らえ、機械人形を使役し戦争の先兵とする
神を冒涜する異端の国々が多数存在する
第三帝国はその悪の同盟国の旗頭的な存在である
この世界はそういった様な世界だ
この世界で魔法を操る魔法使いという存在は
魔法の強大な破壊力に加えて広域範囲を攻撃できることから、銃より貴重な存在とされ重宝される
その中でも魔法は才能あるものしか使えないとされる
魔法は太古の昔から存在していて精霊や神の奇跡が起こす現象だと定義される物だったが
近年になって科学的に解明され始めた
新たに発見された元素「MP」の発見である
MPは空気中に気体で存在し、沸点や凝固点が低い
MPは他の元素を自在に分解・結合することが出来る
例えば水を分解するとき電気が必要で
逆に水素と酸素から水を作る時、燃焼や衝撃などの結合エネルギーが必要だが
MPはそれらの役割を一つでこなす
MP自体が集合することでエネルギーとなり、電気や燃焼など様々な作用を起こすことが出来る
また物体を浮かせたり、引き寄せたり、電撃を放つ発火させるといった行為も可能で
そのMPで作用で産み出した火の燃焼で機関車や気球を動かしている
この世界では石炭や火薬は超古代機械文明が堀尽くしている、その代替えが新元素MPであり魔法である
今しがた私が行った魔法もその一つだ
空気中の酸素をMPで分解して
分解した酸素と水素を再構築して水を作った
その水の塊が、動物の形となって顕現している
その元素MPを操れる素質を持った人間を元素使いと呼ぶ
それらはこの世界では科学魔法や元素魔法と呼ばれている
では何故元素を操れる人間が存在するのか?
それは、人間の体にもMPが存在するからだ
MPを操れる素質を持つ人間は、体内のMPの量が多く
MPを幼き頃から操ることが出来る、そして微弱ながら意思の疎通が出来る
そうこの元素は意思を持ち、使い手の意思に答える
素質を持つ人間は大気中のMPの喜怒哀楽の一部を感じ取ることが出来る
故に元素魔法は自然が多いとこで力を発揮し、環境の汚染が酷い場所では制限される
古来から魔法が何故存在するか、妖精や神の仕業かもしれない
その考えに対する、この世界の科学の一つの推論だ
故に動物をかたどった元素魔法で作り出した水の塊の鹿達は
言葉こそ発しないものの、こうして私の話相手になっている
そして、おむつを履くもう半分理由
私は元素魔法の才能こそ持つものの
MPと体の相性が悪く
体内のMPの調整が下手くそで、MPを行使する副作用で
体内にも水分が生成されてしまい
体に水分が貯まりやすい体質なのである
その為に、私はおむつが必須だった
決してちょっと癖になってたりするわけじゃない・・・そう思ってるだけかもしれないけど
あーあ、きっとこれから先もこんな私を好きだと言ってくれる男性なんて現れないんだろうなぁ・・・
私は水で形成した動物達に一言謝って分解してから、ベッドで眠りにつく
薄れゆく意識のな中、昔のことを思い出していた10歳の頃だっただろうか
海辺で魔法の練習をしていて
私は自分の夢を誰かに語っていた
「いつか、魔法で空を飛んで冒険して人を助ける素敵な魔法使いになるの!」
それが私の夢だった
そういえば・・・その時男の子がいたような・・・