★第12話、真の双子神子と偽りの双子神子
「薬を持ってきてたからね。それより真の双子神子って何?」
首を傾げると、大精霊は魂まで見透かすような鋭い視線を僕に向ける。美人の睨みは迫力があるから後ずさってしまう。
「そなたも気がついておろう? 身の内に魂が2つある事に……」
たしかに”僕では無い魂”アレティーシアが、この肉体には眠っている。とはいえ天音と契約してから、その存在に初めて気がついたから知ったのは最近なんだけどね。それでも知ってる事には違いないので頷きで答えた。
「本来は一つの肉体に、清浄なる魂が2つ結びつき一つになる事こそが、双子神子であり世界を救うとされておる」
僕の胸の辺りを優しい手つきで撫でて、大精霊は目を伏せ話を続ける。
「2つの世界の架け橋となり得ただろう倉田木シンの魂と莫大な力を、魔力があって当然のこの世界で何も持たずに生まれたアレティーシアの身体と魂が、結びつき魔力の全てを受け入れたのは運命と言っていい」
母さんも、アレティーシアは魔力は殆ど無かったって言っていたけど、気になるのは……。
「僕は召喚されて、この世界に来たわけじゃないから双子神子じゃないと思うよ?」
僕が違うと言った言葉に、大精霊は動じる事なく、ゆったりとした動きで立ち上がる。
「ほほほ! 偽りの情報が伝わっておるようだの」
口元を手のひらで隠し笑いながら僕を見下ろす。
「偽り?」
「双子神子は召喚される者では無い。しかも滅多に”生まれない”からの。とはいえ、そなたらの様な不可思議な状態は、妾もみるのは初めてで興味深いの」
「う〜ん……よく分からないけど、もしかして本来の神子は、この世界の母親から双子が産まれてくる感じなのかな?」
「ほほほ! それも少し違う。母から肉体を貰い産まれるのは1人。けれども魂は2つ持って産まれてくるからの。それぞれの魂は別の力を持っておるの」
「なるほど。2人で一つって感じなんだね。それで別の力ってどう言う事?」
大精霊は「ふむ」と頷き、僕の頭に優しく手で触れ微笑む。
「力は魂からくるもの。倉田木シンは魔力、アレティーシアは体術としての力といった所かの。それぞれの力が強すぎるゆえ支え合って生きていく事になるの」
アレティーシアは眠ったままだけど、僕の強すぎる魔力を受け止めて、更に魂そのものを守ってくれてると言う事なのかもしれない。そう思うと”この命が愛おしい”と感じて暖かい気持ちになる。
「はぇー……お前そんな凄いヤツだったんだな」
それまで大精霊と僕との会話を隣で聞いていたユラハは、僕を上から下までじっくり観察するように見つめてくる。お転婆娘だけどユラハもエルフの女の子、可愛い顔立ちをしているので、あんまり見つめられるとドキドキしてしまう。
「ユラハ。はしたないですよ」
「ごめんなさいママ」
「ほほほ! 良い良い。久しいのシラハ。今宵は妾を助ける為だけに来たのでは無いのだろ?」
「えぇ。この世界に危機が迫っているのです」
シラハさんは、リュカから聞いた今までの事を大精霊に話した。
「ふむ。そのような事になっておったのか……。だがシラハそなたは妾と契約しておるから、この青の大陸からは動けぬからの。そなたの娘ユラハに加護をやろう」
「ありがとうございます」
「あ! ありがとうございます!!」
お礼と共に深くお辞儀をするシラハさんに習って、ユラハも慌ててお辞儀をする。
大精霊が滑るようにしてユラハの前に移動して、額に人差し指を置き呪文の様な言葉を口ずさんだ。次の瞬間ユラハの身体が淡い青のオーラに包まれ次第に収まっていった。
「妾の力は浄化。白の大陸に渡った時、必ず役に立つであろうの」
「これでおまえたちの力になれるんだな!」
ユラハは嬉しそうに僕に駆け寄って抱きついた。
「ほほほ! シラハそなたの娘は元気がいいの」
「お転婆娘で困っております」
「良い良い」
大精霊がユラハを愛おしそうに見つめている。既に王の後継者として認めてるのかもしれない。




