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★第11話ー8

 外の空気も室内の空気も正常に戻ったので、リュカが立ち上がり窓と襖を閉める。これで時間が経てば暖かくなるだろう。


 ユラハの母は、長い銀の髪の毛を紐で括ると、ベッドから足だけを下ろし座る。


「わたくしは、この青の大陸の女王シラハと申します。この度は、助けてくださりありがとうございます」


 宝石のような紫色の瞳を伏せ、膝を揃えて美しい所作でお辞儀をする。


「お礼は要らないよ! 助ける事が出来て本当に良かった」

「そう言う事なのじゃ。気にするでない」

「あぁ。気にする必要は無い」

「うむ」


 僕たちの言葉に、シラハさんは微笑んでから、もう一度お辞儀をしてから姿勢を正す。


「貴女方のお名前をお聞きしても?」


 もうルデラさんたちも、名前を聞かれても驚く事もなく自己紹介をしていく。一通り、名乗り終えると僕は立ち上がり万能薬を見せる。


「詳しい事は後で説明するけど、街中の人に今から、この万能薬を飲んで貰った方がいいと思う」

「あぁ。今すぐがいいだろう。空気が正常に戻っているからな」


 白の大陸での事が本当ならば、早く正気に戻しておかないと攫われたり、悪用されたりする心配があるからね。


「分かりました。ユラハ、正気を保っている兵士を連れてきてもらえますか?」

「分かったよ! ママ!!」


 ユラハは、立ち上がり部屋から走り出ていった。そしてすぐに10人の兵士を連れて戻って来た。


「お呼びでございますか?」

「えぇ。夜遅くに悪いのだけれど、この万能薬を香を吸い込んだ者たち全てに早急に飲ませてください」

「了解しました。今より取りかかります」

「頼みましたよ」

「は!」


 ビシッと90度のお辞儀をして、万能薬が入った箱を手に持ち兵士たちは部屋から出ていった。


「これで青の大陸は大丈夫そうだね」

「あぁ。だかまだ問題は山積みだ」

「問題と言うのは青の大陸にも関わるのでしょう? その話、わたくしにも聞かせてください」

「分かった。順を追って説明する」


 再びリュカが、始まりの僕の毒殺事件から話し始め、今までの事全てを話終える頃には、窓の外が朝焼けでオレンジ色に染まりはじめていた。


「世界の危機と言う事なのですね。分かりました。わたくしたち青の大陸に住む者たちも協力すると約束します」

「ありがと!」

「あとは、この大陸の核を確かめに行かなければなりませんね。ユラハもいらっしゃい」

「はい! ママ」

「それからアレティーシア、貴女も来て頂けますか?」

「え? でも僕、この大陸の人間じゃ無いよ?」

「ルデラの悪い予感が本当ならば、貴女の力を借りなくてはならないかもしれませんからね」


 シラハさんが、確かめるかのようにルデラさんの方を見る。


「あぁ。連れて行った方が良いだろうな」

「分かった」


 こんな状況で不謹慎かもしれないけど、大陸の核、大精霊に会えるのは楽しみだったりする。なんとなく精霊って何だか美人なお姉さんのイメージがあるからさ。そして男性は絶対イケメンだと思う。




 シラハさんはベッドから立ち上がり、僕とユラハをみて手を差し出す。


「ユラハ、アレティーシア、こちらへ来て、わたくしの手をしっかりと握ってください」


 その手を握りしめると、シラハさんの白く細い指先が力強く握り返してくれた。


「精霊の所まで転移しますから、目を瞑ってくださいね」


 目を閉じた瞬間、地面に穴が空き、まるでバンジージャンプをした時のような急降下する感覚が襲った。絶叫系は苦手なので思わずシラハさんの腕にしがみついてしまった。


「もう目を開けて大丈夫ですよ」


 ゆっくりと目を開けると、濃い霧が立ち込め蔦が地面を這い、苔むした岩がゴロゴロ転がる密林が広がっていた。森独特の植物たちの匂いもする。


「こちらです」


 地面を踏み締め歩きだすと、フカフカと柔らかな感触がする。


 暫く行くと水音が聞こえ始め、滝の水が地上から空に向かって噴き上げている不思議な場所に辿り着いた。上空に滝壺と言うか湖面がキラキラと輝きを放ち広がっているのだ。


「この滝の水が地上の海へ流れて行くのですよ」

「すげーな……」

「うん。初めて見る光景だよね」


 ユラハと僕は、立ち止まって頭上を見上げてしまう。脈打つように大陸から出ていた波の発生源は、この不思議な場所からだったようだ。


「滝の水源を見てください」


 シラハさんが指差した方を見ると美しい女性が横たわっていた。長い薄緑色の髪が地面に散らばり艶は無く、尖った耳の後ろの辺りから生えた大きな葉っぱは少し元気が無く、顔色も悪い。しかも赤い糸が全身に絡まっているのだ。


「もしかして青の大陸の大精霊?」

「えぇ。それにしても、まさか大精霊様のお身体にまで赤い香の影響があるなんて……」


 僕は持って来ていた万能薬を、まずは赤い糸にかけてみる。実はシラハさんの身体に絡まっていた赤い糸を少し貰って試しておいたから効果は実証済みだ。


 少しずつ赤い糸はサラサラと砂のように崩れ消えていく。仕上げにシラハさんに手伝って貰って万能薬を大精霊に飲ませていくと、ゆるゆると瞼が開き深い蒼の瞳が、僕を見つめ手のひらでスルリと頬を撫でてきた。



「真の双子神子よ。そなたらが助けてくれたのかえ?」

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