★第11話ー7
万能薬を1000個ほど作ってから休憩をしたんだけど、なんとフィンがホットケーキを持参してくれていた。しかも紅茶付きという豪華さだ。
「なんだコレ! 美味すぎる!! 生きてて良かった〜!」
蜂蜜がたっぷりかかった、ホットケーキを食べたユラハは感動のあまり、涙ぐんで大喜びして5枚完食してた。紅茶も味わってニコニコ顔だ。分かるよ。赤の大陸の食べ物は凄く美味しいから食べだしたら止まらないんだよね。僕も3枚食べてしまった。
「喜んで頂けて私も嬉しく思います」
「フィンは城の料理人が悔しがるほどの腕前だからな」
ルデラさんは、まるで自分の事のように誇らしげだ。フィンは照れくさそうに笑んでいる。
「フィンが作ったのか! すげーな!! あ! もしかして赤の大陸には、美味しいものが沢山あるのか?」
ユラハの大興奮ぶりに、フィンは笑みを深めお辞儀をする。
「ありがとうございます。赤の大陸は食べ物が豊富なので、食にこだわる者が多いんですよ」
「いつか赤の大陸に行ってみてーな!」
「ぜひいらしてください。美味しいお食事をご用意いたします」
「あぁ! 楽しみにしとくな」
僕もまた食べに行きたいとか思ってしまった。
とりあえず今日は食べ過ぎて、夕ごはんは食べられそうにもなかった。
その日の夜遅く、強風を伴ってルルカがドラゴンに乗って城にやって来た。
「タキ! 久しぶりじゃ! 元気にしておったか?」
「久しぶり! 元気だよ! ルルカも元気そうだね!」
「うむ! 妾もハルルも元気なのじゃ!」
ルルカもドラゴンも存在感抜群なので、直ぐに気がついて、僕は窓から身を乗り出して挨拶を交わす。
「今、そっちに降りるのじゃ!」
「早かったね」
「タキは妾の友達じゃから、何処にいても飛んでくるのじゃ!」
「ありがと! ルルカ!」
「うむ!」
ドラゴンを城の屋根に待機させ、ルルカは翼を羽ばたかせ、僕たちのいる部屋の窓から入ってきた。
「む? 血の匂いがするのじゃ。お主ら怪我でもしておるのか?」
ルデラさんたちは気がつかなかったけど、やっぱり魔族は血の匂いに敏感みたいだ。
「ユラハ昨日の事、話してもいい?」
僕の言葉にユラハは少しだけ、ピクリと怯えたような表情をしたけど頷きで答えた。
「昨日の夜、ユラハが襲われたんだ」
「!?」
「商人と取り引きをする3人の人影がいて、ユラハの気配に気がついた2人は素早く逃げてしまったそうなんだけど、残った商人を追いかけて行ったら切りつけられたって事があったんだよ」
僕が簡単に説明をすると、ルデラさんとフィンが頷き合ってからユラハの方をみた。
「そうか。そんな事があったのだな……」
「あたしは本当にもう自分は、このまま死ぬんだなって思ったんだけどさ。タキたちが助けてくれたんだ。感謝してもしきれねー恩がある。だからさ。今度は絶対あたしがタキの力になるって決めたんだ」
ルデラさんの言葉に、ユラハは声を震わせながら返した。
「ツライ事を思い出させる事になるが、一つ聞いてもいいか?」
「いや。大丈夫だ。聞いてくれ」
「その商人は手首の辺りに、腕輪のようなものをしてなかったか?」
「うぅ〜ん……腕輪か……。あっ! もしかして紐のように赤くて細いヤツか?」
「それだ。なるほどな。やはりワシらの捕えた商人と、ユラハを襲撃した商人は同じ組織だな」
「そのようですね」
僕たちの様子を見てルルカが立ち上がる。
「なるほどの。ユラハといったかの、お主が無事で本当に良かったのじゃ。まずは、この地の穢れを吹き飛ばしてやるのじゃ。話はそれからなのじゃ!」
ルルカはユラハの肩をポンポンと優しく叩いてから、窓から飛び出してドラゴンの背に跨る。
「今宵は新月。妾たち夜のモノの力が増しておる。一気に吹き飛ばすのじゃ!」
ドラゴンの耳元ででルルカが何か囁くと、ドラゴンは大きな翼を広げ口を開け息を吐く。すると複雑な模様にも見えるミミズが這ったような文字が円を形作り魔法陣が描かれていく。
完成すると同時に緑色に輝きを放ちドラゴンが天に向かって吠えた。
「ぐおおおーーーん!!」
瞬間、サァーーッと音を立てながら、森の匂いのする爽やかな風が、城を中心に街中に広がっていった。
「これで穢れは消えたはずなのじゃ!」
ドラゴンの背の上で仁王立ちして、Vサインしながらウインクまでしている。僕の記憶を、一体どこまで見たのか一度聞いてみたくなる。
「ママ!!」
ユラハの声に皆んながベッドに注目する。母に駆け寄って身体中に絡まった赤い糸を、ユラハが丁寧に引きちぎっていく。
糸を全て取り去るとユラハの母はベッドに倒れ込む。意識はまだない。
「ユラハお母さんの体を支えてて」
「分かった」
万能薬が飲めるように、ユラハは母の体を起こして肩に腕を回し支える。そして僕は、咽せないように、ソッと万能薬を少しずつ飲ませていく。喉が動き嚥下したのが分かった。ゆっくり時間をかけて、最後の一滴まで飲み干す頃には頬に赤みがさして呼吸も穏やかになった。
「きっと暫くすると目が覚めると思う」
「そっか。早くママが元気になると良いな」
万能薬は性能も抜群だから、大丈夫だと分かっていても緊張してしまう。ベッドで眠るユラハの母を、見つめているうちに手に汗がジワリと滲む。リュカが不安に気づいて、僕の手を握ってくれたので握り返す。リュカが傍にいるだけで力が沸く。
と、その時、ユラハの母の睫毛がピクピク動いたかと思うと、瞼が震えるようにして開いた。
「ママ!! 目が覚めたんだな!! 良かった〜!!」
身体に飛びかかるようにして、抱きしめて泣き出したユラハの頭を母は優しく撫でる。
「心配かけたわねユラハ」
「本当に良かったよう……」




