★第11話ー6
「ドラゴンで一体何をするの?」
「ルルカの使役するドラゴンは古龍と呼ばれる上位種でな。全ての属性を操ると言われておる」
ルルカのドラゴンに、普通に何度も背中に乗せてもらっていたけど、そんな凄いドラゴンだったのに驚く。しかも全属性って事は、風もあるよね? そしたらそれで青の大陸の香の匂いを……。
「風魔法で香の匂いを吹き飛ばせる!」
「その通りだ。人が使う魔法より強く繊細だと聞いておるから家屋を壊す事無く、空気を正常な状態に戻せる筈だ」
匂いさえ無くなれば、僕の万能薬が使えそうだ。あとで作っておこう。
「分かった! ルルカに手紙を書くよ」
この場にいる人たちには、僕の力を見られても大丈夫というか、アレティーシアって名乗っているから気にしなくていいのが嬉しい。
『鴉』
鴉を呼び出し、ルルカに今、青の大陸で起こっている事と、ドラゴンの力を貸して欲しいと書いて鴉の足に巻き付ける。
「アワァ!」
「ルルカによろしくね」
「アワァ! アワァ!!」
開けっぱなしになっている窓から飛び立っていった。
その後、昼ごはんを食べたんだけどルデラさんとフィンが、初めて食べる鍋にリュカと同じ反応だったのが面白かった。
けどこの極寒の地で食べる鍋は気に入ったようだった。
食後にルデラさんが「これで酒もあれば最高だったんだがな」なんて言うもんだから、フィンに「遊びに来たわけではありませんよ!」と、怒られたのを見て僕たちは笑ってしまった。
メイドさんたちが、お膳を下げて部屋から出て行くと、ルデラさんがユラハの方を向く。
「この地の異変は、まだあるのだろう?」
「やっぱ気がつくよな……」
「まぁな。以前ワシが、まだ王になる前に、この地に来た時は精霊や妖精の類が沢山いた。だが今は全く見ない。何があった?」
「最初は気がつかないくらいの異変だったと思うんだ。だから精霊たちが居なくなってから初めて気がついたって感じなんじゃないか? ママに聞いただけだけど、この青の大陸は数十年前は、こんなに寒く無かったらしいんだ。と言うか、あたしが生まれる前は4つの季節ってのがあって美しい大陸だったらしい。その季節ってのが無くなるにつれて、寒さが苦手な妖精や精霊は山から降りて来なくなったって聞かされた」
なんだか青の大陸は、本当に日本に似てる。4つの季節って春夏秋冬だよね。
けど以前はこんなに寒くなかったと聞かされても信じられない。
だって今は、メイドさんに火鉢を部屋の四隅に一つずつと、真ん中に一つ、合計5つあってもとにかく寒いんだ。窓が全開だからってのもあるけど、僕を含めた全員が、元々の姿が分からないくらいに毛皮を何枚も着込んでいる。見事に着ぶくれて、まん丸なんだよね。
更に、精霊とか妖精は山に行けば会えるかな? 会ってみたいな! などと考えていたら、僕の目の前でルデラさんが「うぅ〜む」と、唸ってから顔を上げた。
「もしかするとだが、大陸の核に異常が起きている可能性があるな」
「大陸の核? なんだソレは?」
「そんなのあるの?」
初めて聞く話に、ユラハと僕は興味が沸いて思わず前かがみになってしまう。
「ある。大陸の地下深くに眠る大精霊が核だ。王になる契約の儀式も、その大精霊と交わす事になる」
「精霊って事は名前もあるの? まさか青とか白じゃないよね」
「もちろんだ。だが真名を知るのは王のみだ。大精霊の名前には、それ自体に力が宿っているからな。だからとりあえず大陸には色の名前がついてる」
「そうなんだ」
確かに赤や白や青、黒、黄って名前はあり得ないよね。だから少しホッとした。内心、大陸の名前が安易過ぎるように感じてたからさ。
「じゃ! ママが正気に戻ったら見に行くように言ってみる!」
「それがいいだろう。あと王の後継者であるユラハお前も一緒に行くべきだな」
「どうしてだ?」
「念の為だ。何事も無ければそれで良い」
「分かった!」
話が、ひと段落したので「万能薬」を大量に作っておく事にした。ちなみに天音と魔獣契約してから、力が安定して素材が無くても”対象物”を召喚出来るようになった。
例えば万能薬が欲しいなら、脳内で”対象物”のイメージと、文字を思い浮かべるだけで、空中に日本語で文字が現れ「万能薬」が召喚出来るようになった。
もの凄く便利になってしまっていた。レベルって概念は無いみたいだけど、コレってレベルアップしてる感じだよね。なんだか嬉しくなる。
なので何度も作ったことがある万能薬であれば、一気に100個ずつくらいは作れる。
そんな感じに僕がポンポン、万能薬を何も無いところから召喚しまくっていたら、ルデラさんたちが口をポカンと開けて驚き固まっていた。リュカはもう慣れてるから、特に気にする様子はない。
「そのような魔法は初めて見たな」
「えぇ。見た事の無い文字? も気になりますね。一体どのような魔法なのでしょうか?」
「お前すげーな!!」
ルデラさんは感嘆の声を上げ、フィンは僕の魔法の原理に興味津々、ユラハは大興奮している。
「やっぱり僕の魔法って珍しいの?」
僕が聞くと、リュカを含めた、その場にいる全員が頷いた。
そう言えば、母さんも初めて見る魔法って言ってたよね。街中とか人目のある場所では、なるべく使わないようにしようと思った。緊急の時は仕方ないけどね。




