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★第10話ー1、新たな旅立ち。絶壁の中に宿泊するのも悪くない!

 前回とは違い夜に出発、しかも曇っているので月明かりさえ届かない。甲板にいても何も見えないくらい真っ暗で、塩の匂いと波の音しか聞こえない。


「今のうちに母さんに手紙を書こう!」


 甲板に座り込んで、リュカにペンを借り羊皮紙に、これまでの事と赤の大陸に渡る事を書いた。ルルカに言われた話は心配をかけたくなくて書くのをやめてしまった。

 立ち上がって鴉を呼び出し、僕とリュカの手紙を足に巻き付ける。


「よろしくね!」

「カァ!」


 真っ暗な夜空に、羽ばたき飛んで消えていった。


「危ないから、あまり身をのりだすなよ。明日の早朝には赤の大陸に着く。とりあえず部屋に案内するからついてきてくれ」

「分かった。今日はよろしく頼む」

「よろしくお願いします」

「にゃん!」


 船内は一定間隔に配置された燭台に魔法で光が灯され明るい。板張りの床は歩くと、ギシギシ音が鳴り、波で船体が揺らされユラユラした感覚もある。


「1日だけだがよろしく。部屋はここだ。あと便所は突き当たりを左に行けばある」


 まさに海の男という感じの筋肉隆々のがっしりした船員さんに鍵を渡されて、今日の宿となる部屋に案内された。木製の2段ベッドがあるだけだけど、小さな丸い窓まであるから閉鎖感は無い。


 けどさ。


「暗くて何も見えないのが残念」


 窓に張り付き外を見ながら、思わず言葉に出てしまう。


「早朝に着くと言っていたから、朝日は見られるかもしれないな」

「だと嬉しいな」

「だかまだ寝るには早いな」

「だよね。でも甲板にも出られないし……」


 暇を持て余す僕の隣で、リュカがカバンをゴソゴソさせて紙袋を2つ取り出した。


 小さな紙袋からネズミのおもちゃを出して「天音にはこれだ」と言って床に放り投げる。すると尻尾をフリフリ前足と後ろ足を踏んばってからネズミに飛びかかる。「うにゃにゃ!」と全力で戯れまくって楽しそうだ。


「タキ、これを貰ってくれないか?」


 反射で、紙袋を受け取る。


「開けていい?」

「もちろんだ」


 何だろ? とワクワクしながらガサガサ音を立てて紙袋を開き、中のモノを見て嬉しくなってしまう。


「コレって!」

「あぁ。万華鏡だ」

「貰ってもいいの?」

「あぁ」

「ありがと! リュカ! 凄く嬉しい!!」


 思わずリュカに飛びかかると優しく抱きとめてくれる。リュカの腕の中で、筒の部分に色とりどりの草花が描かれた万華鏡を撫でる。中を覗くとキラキラと美しい模様が、筒を回すたびにクルクル表情を変える。

 

「懐かしいなぁ……。倉田木シンだった時なんだけど子供の頃、近所のお祭りに行ったんだ。その時出店で見た万華鏡が凄く綺麗で父さんにねだって買って貰ったんだよね」

「タキにとって大切な思い出なんだな」

「うん! そしてリュカに貰った万華鏡は僕にとって凄く大切な宝物だよ! 本当にありがと!」


 リュカに擦りよると、頭をクシャリと撫で微笑む。




「タキ。着いた。起きろ」

「……おはよ」

「おはようタキ」


 優しく肩を揺すられ目が開く。暖かいリュカの腕の中で、万華鏡を見ている内に眠ってしまっていたようだ。しかも同じベッドで寝ていた。たぶん僕を起こさない為だと思うけど、目が覚めて目の前にリュカがいると何だかドキドキして照れる。


 着替えて部屋から出ると、既に船員さんたちがバタバタと忙しそうに、積荷を下ろす作業中だった。

 

「一日世話になった」

「おぅ! よく眠れたか?」

「あぁ! 本当に助かったありがとう」

「そりゃ良かった」


 昨日、部屋に案内してくれた船員を見つけ鍵を返すと「気ぃつけて行けよ!」と、リュカの背中をバンバン叩いて送り出した。はっきり言って痛そうだ。




 船を降りて桟橋を渡ると、今まで訪れた大陸とは全く違う風景が広がっていた。

 街の周りは森になっている、と言うより森の中に街がある感じだ。


「もしかして大陸の殆どが森なのかな?」

「そうかもしれないな」

「でも緑に囲まれてると気持ちいいね」

「風も爽やかだな」


 そよそよ通り抜ける風は涼しくて心地よい。


 あと右を見ても左を見ても90%が獣人だらけだ。


「ルルカの街でも見かけたから、獣人がいるのは知っていたけど沢山いるね!」

「にゃにゃん!」


 ウサギや猫、トラやオオカミっぽい人もいる。天音は嬉しそうにピョンピョン跳ねている。と言うのも街中の人々全員、天音みたいな猫と一緒だったり、鳥を肩に乗せていたり、熊の様な大きな動物を連れている。


「なんか凄いし可愛いね」


 思わず、つぶやくとリュカも頷く。


「アンタたち初めて見る顔だね! 旅行かい?」


 街をキョロキョロ見渡していたら、後ろからやってきたキツネの獣人が声をかけてきた。首には黄色い蛇が巻き付いている。



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