尽神日記~3月10日~
3月10日、晴れのち曇り。
カレンダーの数字がとうとう二ケタになった。
あと4日もすれば運命の日がやってくる。
僕は、最後の審判を受ける。
なんだか実感がわかない。
人は天に召されて後、審判を受けるのだとずっと思っていた。
審判を下すのははもちろん神様だ。
まさか生きているうちに、しかも魔族の美少女に、最後の審判を受けるなんて誰が予想しただろう。
そう、僕は生きている。
ゆえに考える。
現在と、未来を。
『彼女』が僕のお返しをお返しとして認めた場合、僕はこのまま普通の高校生として暮らすことができる。
けれど、『彼女』の望むお返しがはなから物じゃなかった場合、僕はきっと魔界行き。魔界で先も知れない暮らしをすることになるんだろう。
僕の思考は行ったり来たりを繰り返す。
考えたって、どうしようもないことばかりなのに・・・。
でも、考えてしまう。
非現実的だと思っていたことが、現実として僕に降りかかっているから。
現実と、非現実。
たとえ相手が魔族だとしても、普通のホワイトデーと考えていることだってある。
僕は、無事に済むことを切に望んでいる。
けれど望みながら、なぜか、『後者』に思いを馳せている。
もし、魔界へ行くことになったなら。
もしも連れて行かれたら、僕はどうなってしまうんだろう。
僕は僕のままでいられるんだろうか。
『彼女』の僕になるんだろうか。
『彼女』の側で?
僕は
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尽神月流は器用な手つきで装飾を縫い付けている。
時計は夜中の12時を回った。
あまり遅くまで起きているとおばあさまが心配するので、テーブルランプで作業している。
尽神一号機での作業は大方終わり、残るは細かな手作業だけだ。
白熱灯の暖かな光が赤いハートの飾りを照らす。
キラキラと輝く綺麗なハート。
それを見る尽神月流の表情はいつになく穏やかだった。
もうすぐ出来上がる。
『彼女』は、喜んでくれるだろうか。
「今日はここまでにしておくかな」
いつものように布地を行李におさめる。
『彼女』の望みがこれじゃなくても・・・
たとえ魔界に連れて行かれたとしても、
僕は・・・・・
†To be continued.†




