尽神日記~3月9日~
3月9日、曇り。
今日も作業が忙しかった。
こうして日記を書いているが、余裕があるわけじゃない。
あまり根を詰めすぎると精神が参ってしまうので、あえてものを書くという行動をとっているに過ぎないのだ。
書いて、気を鎮め、また新たに作業の意欲を燃やす。
これが僕のやり方だ。
その日あったことや、夢、いろんなことを書く。
今までにあった出来事やそれに対する考察・・・。
例えば僕は振り返る。
あの日・・・。
聖バレンタインデーの夜。
月がやけに明るかったっけ。
あの夜。
僕は小腹が空いた。
はじめにおばあさまからいただいた甘い大福を食べた。
空きっ腹に甘いものは心地よかったが、続いて無性に塩分を欲した。
甘いものの後に塩分。
我慢する事は不可能だった。
だから、コンビニエンスストアに行ったんだ。
大好きなうす塩味のポテトチップスがちょうど切れていたから・・・。
おばあさまが夜道はいろいろ出てきて危ないから明日にしなさい、と忠告してくれたのに、僕は・・・
―大丈夫ですよおばあさま!今は現代、科学の時代ですよ!!心配ありません!!!―
こう答えて玄関を出て行った。
お年寄りの言う事は聞いとくものだ。
いつか誰かに聞いた言葉が蘇る。
今となってはもう遅い。
結果、僕は『彼女』という魔族女子に出会い、チョコレートをもらい、あげくの果てにそのチョコを食し、回避できたかもしれない『契約』を完全に成立させてしまったのだから。
お返し。
取り返しのつかない軽率な行動をとった僕。
悔やんでも悔やみきれない。
チョコと引き換えに、僕は・・・・・・
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「自分の魂を売り渡したんだアアアアアアアアアアア!!!!」
書くんじゃなかった!
思い出すんじゃなかった!!
こうして日記に記し、振り返る事で忘れていた恐怖が蘇る。
作業をし続けていればランナーズハイみたいな具合になれて、なにもかも忘れていられたのに!!
「書く事によって現実と向かい合ってしまったアアアアアアアアア!!!」
こうして、尽神月流は激しい後悔に押しつぶされるのだった。
†To be continued.†




