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24話 自分たちは、そんなに

 ぽつぽつと、大まかなことを話した。

 ほたると同じく自分も、ある曲を聴いて感動して、作曲家を目指し始めたこと。

 これまで親の言うことを聞くだけだった自分が、初めて見つけた自分自身でやりたいことだったこと。これしかないと思うくらい純粋に、目指そうと思ったこと。

 ……けれど、思うような結果が出ず。加えて燎が創作の世界に向かうことをよしとしない両親からの妨害にあったこと。


『妨害』の具体的な内容についても、半ばほたるに促されて話した。ピアノやソフトを取り上げられたことから始まって、毎日の食事での否定の言葉に作った作品の徹底的な批判、そして最後の物理的な行動の束縛まで。


「…………そんな」


 一通りを聞き終えたほたるが、震える声で呟く。

 概要はあの日灯が話したはずだが、それを踏まえても色々と予想以上だったのだろうか。呆然とした気配が伝わってきて、燎の背中を掴む手も震えていた。「ひどい」と絞り出すような声も聞こえてきた。

 そう言ってくれること、そしてほたるの性格的に本心からそう思ってくれていることは、とても嬉しく思う。けれど、それに甘えてはいけない。


 確かに、両親が全く悪くないとは思わない。流石にあんな仕打ちをされて両親を庇えるような聖人ではないし、間違いなく今も強く恨んでいる。


 ……でも。

 それでも――一番駄目だったのは燎自身。それだけは、今も強く確信しているのだ。

 そう思う根拠。そしてあの日の夢の続きである彼の懺悔の根幹を、燎は続ける。


「『所詮他人の言葉』。それを、ずっと自分に言い聞かせ続けてきました」

「……うん」

「自分以外の人間の言葉で、事情で、歪められるなんて弱い奴だ。本当に本気で目指しているなら、そんなものには惑わされず自分一人の力でやり通さないと駄目だろう。そう思って、そう信じて、頑張ってきたんです」


 けれど、それは叶わず。結局最後は他人の言葉と周りの重圧に押し潰され折れてしまって、それ以降機械の如く両親に言われるままのことをこなし、きっと早晩それすらできなくなっていただろうほどに消耗したところに。就職活動を終えた灯がやってきて、燎をあの家から連れ出してくれた。

 両親の影響の届かないところにきた、だからこれで余計なことに煩わされることなく、もう一度作曲を再開できる。そう告げてくれ、その環境を用意してくれた灯に心から感謝して。もう一度ここから始めるべく燎はソフトを起動して――



 ――何も、できなかった。

 素晴らしいメロディも、お洒落なコード進行も。何ひとつ曲のアイデアもインスピレーションも浮かばず、どころか譜面を見ているだけで最悪の思い出ばかりがフラッシュバックして、激甚な吐き気と共に蹲って体調を崩した。



「……なんで」

「単純にトラウマになった、ということもあるんでしょうが……多分それ以前の問題で。最大の原因は、俺自身自覚しているんですよ」


 ほたるの問いに、静かに答える。

 そう、それこそが核心。

 自嘲と、自責と、自虐を込めて、彼はそれを告白し。


「中学の頃。作曲することに両親から反対され、制約も受けて。それでも頑張ろうと思いました。あんな人たちの言葉になんて屈しないと思って歯を食いしばって、どんなことを言われようとやめてたまるかと思って」

「……」

「その一心で、曲を作って、作って……作っている、うちに」


 胸を押さえて、吐き出した。



「――両親の(・・・)言うことに(・・・・・)従わない(・・・・)ため(・・)だけに(・・・)曲を(・・)作る(・・)。それしかできなくなっていた」



「…………え」

「音楽は誰かに届けるためのもの。それすら無意識のうちに忘れて、ただ見栄を張るためだけに、反抗のことしか考えず曲に向き合うことすらせずに作っていたんです。んなもん届かなくて当然です、誰にも響かなくて当たり前ですよ。最後に作った曲がボロクソに言われてもなんの文句も返せるわけがない」


 それで、両親から離れた後も作れなくなったのも当然だ。憎悪の対象と同時に、これまで最大のモチベーションすら消失してしまったのだから。


「お笑い種ですよね。『所詮他人の言葉だ』って言い聞かせてたはずの俺が、いつの間にかその所詮他人の……しかも大嫌いな両親の言葉に一番影響を受けて、曲作りの根幹すら歪んでしまっていたなんて」


 多分、その時点で彼は資格を失った。

 他者の言葉に耳を塞いでいたはずなのに、一番ブレてはいけないところが崩れていた自分は、最初から真っ直ぐ進むなんて土台不可能な話だった。


「だから、作れなくなったのは順当なんです。……何も浮かばなくなったのも、向き合うだけで眩暈がするようになったのも、当然の、罰なんですよ」


 それが、今の燎が出来るまでの過程。一人の少年の、ありふれた挫折のお話。

 これで全て。語るべきことは語った……と思っていたが。


「……」


 ほたるは、それをしっかりと聞き届けた上で数秒、沈黙を挟んでから。


「……うん、分かった。きみに何があったのかも、どうしてきみがそんなに作る側のことをよく分かってくれるのかも、理解したよ。――でも」


 まず感謝を示したのち、静かに走り続ける燎の背中に手を置いて。



「――きみはどう思ってるの?」



 柔らかな口調で、けれどさらに深く。心の奥に切り込んでくる。


「っ」

「出来事じゃない、きみの心。かがり君の過去を、かがり君自身がどう思っているのかは、まだ聞いてない。……よければだけど、それも聞きたい。きみの心は、もっともっと知りたいの」


 心の柔らかい部分を、切り出されたと感じた。

 確かに。今語ったことはあくまでただの過去であり、それに今の燎がどんな感情を抱いているのか。それは語らなかった、多分目を逸らしていたから。

 そして……この後に及んで目を逸らしてしまうほどのもの、それくらいに酷くて、けれどいちばん大事なものが。そこにこそ眠っていると彼女の言葉で自覚する。


「……あたしは、誰かの心はまだ分かんないけど。かがり君の心は、それなりに見てきたつもりだよ。それで……勘違いだったら、本当にごめんなさいだけど」


 自覚してしまった故に躊躇いを見せる燎の背中を押すように、あやすように、ほたるは続けて。


「きみが、本当は話したがってることくらいは、分かる。……違う、かな」


 ……そこまで、言い当てられてしまえば。

 もはや抑えるものは何もなく、抑えることもできず。

 ついに。胸の奥を切り裂いて、封じてきた意地っ張りな少年の心が溢れ出る。



「――放っておいてほしかった」



 震える声で、まずはその言葉が紡がれた。


「別に、応援してくれなんて贅沢なことは言わない。ただ……もう少しだけで良いから好きにさせてほしかったんだ。理解はいらないし、援助もいらないから、せめて……あんなに何もかもをがんじがらめにする必要なんて、ないじゃないか」

「うん」

「そんなに、そんなに気に食わなかったのか。俺が何かを作ることが、俺があんたらの与えたもの以外に目を向けることが。そんなに俺を思うがままに動かしたかったのか」

「……うん」

「親だからって、価値観まで好きに押し付けて良いってのか。何もかも束縛しても許されるのか。そんなんだから姉さんはさっさと出て行ったんじゃないのか、締め付けを強くしても逆効果だって、なんで学習してくれなかったんだッ」

「うん……っ」


 情けない恨み言。どうしようもない文句と不満、そして懇願。

 けれどほたるはそれを受け入れるように、ぎゅうと燎を後ろから抱きすくめる。

 促されるように、燎は続けて。


「初めて、心から自分でやりたいと思ったんだ。どこまで行けるか自分自身で確かめてみたかったんだ。その機会まで、時間まで奪わなくても良いじゃないか! せめて俺が終わりを決めるまでやらせてくれよ、あんな風に途中で無理やり引き千切るみたいに辞めさせなくてもさぁ、それなら……ッ」


 天を仰いで、慟哭するように。

 あの部屋に閉じ込められた過去や、一時感覚すら無くなってしまうほどの閉塞感や、その果てに今も自分を苛み続けるものを思い出し。


「それなら、仮に駄目だったとしても。辞めるとしても、もっと納得する形で……ッ!」


 未だみっともなくしがみついてしまう自分を責めるように、叫びきる。


 しばしの沈黙ののち。


「そっ、か」


 微かな驚きと、大きな納得の表情で、ほたるが告げる。


「きみは――『諦められなかった』んだね」

「……ええ」


 その通りだ。

 あれだけのことがあったのに。自分には才能も資格も意志力も、何もかもなくて苦しみしかないとあれほど理解させられてしまったのに。

 なのに……未だ、曲を作りたいという思いの残滓が捨てられない。何もかもが目覚めたら解決しているという馬鹿げた期待に縋ってまで毎日のようにソフトを起動し、その度に目が眩んで崩れ落ちて、毎度毎度絶望を理解させられて。

 それが、嫌で嫌で。辛くて苦しくて、もううんざりで、だから。

 だから――


「…………ああ、そうか」


 そこで、パズルのピースが組み合わさる。

 彼の中にあった違和感、これまでほたるに抱いていたものの正体。

 言葉にできていなかった思いの形が、ようやく判明する。


 そうだ、自分はかつて曲作りで挫折して。トラウマになって作れなくなって、それでも捨て去ることが出来なかったから、諦めることができなかったから。

 だから、燎は、ほたるに。




「――諦めさせて(・・・・・)ほしかったんだ(・・・・・・・)




 本気で、全力で、突き進みたかった。

 どんな困難にもめげず、どんな壁にも挫けず、あらゆることに立ち向かって乗り越える人間。そういう人にならないときっと本気じゃなくて、夢を目指す資格なんてないと思った。

 ……でも、燎はそうじゃなくて。そのくせまだみっともなく、未練がましく創作にしがみついているから。


 だから、『本物』を見せてほしかった。

 燎がかつてかくあるべしと望んだような、こういう人間が上にいく、こういう奴らが成功すると思うような理想像。

 ほたると出会って、彼女はそうだと思って。そんな彼女が、全てを懸けて真っ直ぐに怯むことなく突き進む姿を間近で見せてもらうことで。


 ――ああ、違うんだと。

 こういう人たちが成功して、こういう人たちこそ成功するべきで。折れてしまった自分は紛い物で偽物なんだと、いつまで未練を引きずっているんだと言い聞かせたかった。

 埋火の如く残る情熱の残滓を、踏み潰して、叩き潰して、焼き尽くして欲しかった。

 そうして……諦めて。楽に、なりたかったのだ。


 そう思っていたから、燎はほたるになりふり構わず進む姿を求めて。

 彼女が周囲との関係に悩んでいるときは、勝手にも苛立ちを感じて。

 挙句の果てには、年頃の少女として当たり前の願いすら踏み躙って、自分に都合の良い理想像を押し付けていた。


「自分の未練に区切りをつけるためだけに、先輩を身勝手に使っていたんですね」


 ああ、それは、なんて。



「――最ッ低、すぎんだろ……!」



 自分の手に、自分の心臓を抉るくらいの握力が無くて良かったと思った。

 あったら間違いなく、今度こそ衝動的にそうしてしまっていただろうから。


 全部、繋がった。

 自転車を止めて、サドルに乗ったまま項垂れて胸を掻き毟る。そうしていないと気が済まなかったから、いっそのこと傷ついてしまえとばかりに。


「すみません、先輩……すみません、すみません……ッ」


 自己嫌悪に歯を食いしばり、謝罪を告げるしかできない。

 ――何が、先輩の力になりたい、だ。

 それと真逆のことしかしていなかったくせに。無自覚のうちに支えるふりをして自分の重石を背負わせていただけの分際で、何様のつもりだ。


 自分の都合で、他人に何かを強要する。両親に嫌というほどやられて、絶対に自分はしないようにしようと思っていたことを、よりにもよって彼女に行ってしまっていたという最悪の事実。

 恥ずかしくて、情けなくて、惨めで、無様で。こんな自分、消えてしまいたくて――


「……ううん」


 けれど、そこで、ふわりと。

 柔らかい否定の言葉と共に、ほたるがまた後ろから抱きついてくる。胸を押さえる右手の上にさらに彼女の暖かな手を重ねて、込めた力を溶かす。

 そのまま、穏やかな声で告げてきた。


「悪いのは、あたしも。だってきっと、ううん絶対、少しでもあたしが『そういうのは嫌だ』って言ったら、かがり君はやめてくれたでしょ?」

「……それは」

「あたしも、望んじゃったんだよ。きみが強いあたしを、真っ直ぐ進むあたしを願ってくれることを。あたしもそうならなきゃって、めげずに頑張れるあたしでなきゃって思ってたから……きみの期待が嬉しくて、それに甘えちゃったの」


 それに、とほたるが続ける。


「しょうがないよ、そんなにひどい体験をしてきたなら。聞いてるだけでも思ってたより遥かに辛かった、そんなものを今も抱えてるのなら……楽になりたいって思っちゃうのも、仕方ないと思う」

「っ」


 しょうがない、だなんて。

 言われたくなかったつもりだった。それは同情という名の毒で、救われた気分になるのと引き換えに一生そこから前に進めなくなる類のものだと思っていたから。全部自分で抱えて、自分で飲み下すしかないものだと思っていた――のに。

 それなのに、いつの間にか気付かないうちに誰かに背負わせて。その上許しの言葉をもらって安堵してしまっている自分が嫌で、嫌で。


「……すみません」

「いいよ。だって……あたしも、あたしもさぁ」


 燎の背中に頭をつけるほたるの声にも、再び湿っぽいものが混じり始める。


「ほんとは、全然頑張れてなんかいなかったんだもん。描いてて辛いって思う時なんてたくさんあったし、学校で悪口を聞いただけで一日中筆が進まない日もあった。ともちゃんに見つけてもらって、きみにいっぱいわがままを聞いてもらって、普通の子より――きみがいた境遇よりも絶対ずっと恵まれてるのにそんなので、ひとつも成果を出せなくて! きみが望んでくれて、あたしが目指した『理想のあたし』には全然なれてないの、なれないのっ! ……ごめんね、ごめんねぇ」

「それは、当然です。当たり前のことです。……そんなことにも気付かなかった俺が馬鹿だったんですよ。連載会議に落ちた日も、ちゃんと先輩は辛いって言ってくれていたのに。あの時に気付くべきだったのに、自分のことを優先して違和感を無視した俺がッ」

「それを言うならあたしだって――!」


 そこからは、走るどころではなかった。

 自転車を降りて、二人で近くに座り込んでただひたすらに吐き出す。

 懺悔を、謝罪を。至らなさを、弱さを。彼ら二人の不思議な関係が始まってから、少しずつ溜まっていた暗いものを全て洗い流すように。

 晴夜の藍空の下、星と二人しか聞いていないこの空間で。今だけは、互いの弱さを分かち合う。


 ――自分たちは、そんなに強くなかった。

 どんな困難にも負けずに進むことなんて出来ず、すぐに迷うし惑うし、あっという間に答えを出すことなんてできないし。辛いことからも苦しいことからも簡単には立ち直れないし、時として自分の心すら暗闇の中で見失ってしまう。

 物語のような天才は、現実にはそうおらず。

 そして――物語のような心の強い人間も、またそう現実にはいないのだ。


 それがお互い、本当の意味では分かっていなかったことを認めて。

 言って、吐き出して。謝られて許して、謝って許されて。


 そうしてやがて、お互いに言うことが減ってきて、口数が少なくなり、程なくして。



「……」

「……」



 静かな夜に、ただ二人。

 全てを言い切った末の沈黙。緩やかで涼しくて何処か心地よく、決して気まずくはないそれが二人の間に流れる。

 ……あれほど、激しく言い合ったのに。自分の抱えた自責とか罪悪感とかそういうものをどうしようもなく無様に吐き尽くしたのに。

 夜の街は、相も変わらず穏やかで。初夏の夜空も腹立たしいほどに何も変わらず、静かに彼らを見守っていて。それを理解すると、何だろう――


「なんていうか、さ。……悪い意味じゃなくて、ばかみたいだよね」


 不思議と、ほたるも同じことを考えているのが分かった。

 少しだけ掠れた声で告げた彼女にゆるりと頷いて、先を促す。


「あたしさ。この悩みは、辛いのは、もっと大きいものだと思ってた。こんなの乗り越えられっこない、もう動けない、あたしの人生はこのまま終わりなんじゃないか、このまま全部抱えて世界ごと終わってしまえばいいんじゃないか――なんて」

「……ええ、俺も同じです」

「でも、こうやって一緒に話して。溜まってたものを全部吐き出したら、それでも悲しくて虚しくて一歩も動けずうずくまっちゃうものだとてっきり思ってたんだけど……」


 そこで、彼女は夜空に細い両手を伸ばし。呆れたように柔らかい苦笑を見せ。



「……参ったなぁ。ぜんぜんあたし、元気じゃん」



 全くもって、同意だった。

 彼らの抱える問題は、何一つ解決なんてしていないのに。それが解決しない限り、自分達は抱えた悩みの重さに潰されて、一生どこにも進めないとすら思っていたのに。


「『悩みは話すだけでも楽になる』って論に、実は俺懐疑的だったんですけど……本当だったんですね」

「だねー」


 繰り返すが、何一つ解決はしていない。

 お互い吐き出しただけで、ほたるの悩みにも燎の葛藤にも答えは出ていない。彼女の身の回りに関する問題は何も変わっていないし、解決の糸口すら掴めてはいない。


 ……でも。

 悩みを話した。弱さを知った。お互いの至らないところ、駄目だったところを開示して、謝り合って許し合った。


 まだ、前に進むことはできそうにないけれど。

 少なくとも――前に進むための準備は今できたんだと、そう感じた。


 どうしようもない悩みを抱えても、答えの出ない時に蹲っても。重たい何かを抱えていても、時に立ち止まっても。

 それでも、笑えるほどに手足はまだ動くから。

 なら……やるべきこと、やりたいこと。できることは、今ここにある。


「先輩」

「ん?」

「――走りましょうか」

「……うんっ」


 ここはまだ、道半ばだ。

 こんな自分でも、気が済むまでペダルを漕ぐくらいはまだできる。

 それなら、行こう。何もかも吐き出し切って空っぽになった自分達で、もう一度頭の中まで空っぽにして。行けるところまで、後先考えず、馬鹿馬鹿しいくらいただ真っ直ぐに。

 今は、どうしてか無性にそうしたい。


 立ち上がる。手を伸ばす。彼女も嬉しそうに可愛らしく笑ってその手を取り、荷台に乗って先ほどよりも強く背中にしがみつく。

 まずはまた走ろう、夜明けに向かって。そう思って、もう一度彼らは漕ぎ出した。


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