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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

無情の愛

作者: すみ

「ううっ...うぅっ...」

静かなこの空間にこだまするのは

抑えようにも抑えることの出来ない、

人が鳴らす悲しみの音だけだった。

その中でも一際大きく、辛く、悲しい音を

あげていたのは、他の誰でもない…





新しい制服にも馴染み新しい生活にも慣れ始めていた

暖かく、優しく包み込むような春。


外では鳥がなき、桜はゆっくりと散っていく。

そんな背景を照らしている、青が映る窓を

僕はいつものようにだらけながら見ていた。

「...しだ、ここ説明してみ」

学校というものは憂鬱である。

全生徒が思いそうな事を僕は真面目に考えていた。

突然頭に重みがかかる。

「おいコラ。吉田。話聞いとかんかい。」

頭に教科書を乗せてきたそいつは担任の山本だ。

山本は国語科の教師でとても眠い授業をする。

「すいません、寝てました。」

(こいつ。頭にもの乗っけやがった...俺の脳細胞ちゃんが......。)

「次寝てたら鼻にチョーク刺す」

くそ見たいな教育だなと心にかみしめて広い世界に目を離す。


この閉鎖的な社会の象徴ともとれる学校という空間に

出席番号という首輪をつけられた僕たちは決められた位置に座り

仮想の自由を見せつけられ、それに尻尾を振り過ごす。

そんな生活に気づいたのは一回目に心が壊れた時だ。


心が壊れるとき胸がきゅっと締め付けられ

冷たくなりそのまま消えてなくなるのだ。

壊れた原因は人間関係。

世の中ヒトという生き物の悩みは大抵が人間関係である

「いなくなればいいのに」

なんて言葉を無駄に吐きながら。

社会の騒音にかき消されてその声は消える。


心が壊れる音がしたのは3回

一回目は人間関係

二回目も人間関係

三回目は自己嫌悪


一回目で人間不信に、二回目で社会不信に。

三回目で感情が壊れた。


感情の修復には時間がかかった。

その修復にはヒトが必要だった。

社会や他人に不信感を募った僕には無理難題であった。


だがある人に出会って僕は治った。

ヒトというのは単純で

信頼できる人に出会えれば。

それが難しいだけである。

それがという言葉で納めるのも嫌だが。

信頼できる唯一の人は真花(まなか)という存在である。

真花はいい子で何も言わずそばにいてくれた。

孤立した時も

「大丈夫か」と見るからに大丈夫じゃない僕に声をかける友達(ナニカ)

きれいごとしか言わない子供のような大人(ナニカ)とは違い

何も言わずにそばにいた。

知らない間に周りから付き合っていることにされ

真花もなにも言わないから本当にそういうことになってしまった。

そのうちに僕は好きになってしまった。

そりゃこの世に人間が二人しかいなかったら。

それが異性同士なら好きにならざるを得ないだろう。


社会にもまれ決められたレールにそって生きる、

ほかない僕の唯一の糧が彼女であった。

ナニカがしゃべる言葉はすべて自分への悪口に聞こえる。

辛い、つらい、ツライ。

どの言葉も違う気がしてならない。

「今日はなにしよっか?」

彼女が僕に声をかける。

世の中への不満や、考え事をしている間に学校は終わっていた。

「なんでもいいよ、まなかの好きなところへ行こうよ」

僕は彼女対しては本心でしゃべっていた。

僕を救ってくれた彼女には幸せになってほしかった。

好きなことをしてほしかった。

それが僕の願いだった。

「ならここに行ってみようよ」

口と同時に出してきたケータイには

映画館という文字が書かれたマップが表示されていた。

「いいよ、何が見たい?」

彼女はケータイをいじりながら言う

「これが見たいかな」

見せてきたのは()()と書かれた題名と

月の絵の写った映画の広告だった。

暗らそうな明るそうな、月の静かな冷たそうで実は暖かい。

そんな不自然な雰囲気を(かも)()していた。

月は冷たいイメージを世間では持たれているかもしれないが僕は逆だ。

太陽が冷たく感じる。

太陽は明るくて暑いが当たり前に明るいヒトビトしか照らさない。

人のことは考えず、時には人を殺す。

それと違って月はいつも暗いなかを照らしてくれる。

太陽の無駄遣いである光を再利用し

傷ついた僕たちにやさしく付き添ってくれる。


休日に映画を見に行った。

でも僕の月とはやはり違い、社会の月であった。

彼女は感動していた、僕は感傷していた。

僕は冷たい陽に照らされて帰った。


「今日はどこに行こうか?」

今日も声をかけられた。

「君の好きなところでいいよ」

「ならここに行こう」

画面に表示されたのは水族館だった。

水族館は海洋生物の学校のようなところだ。

どこかから無理やり連れてこられた魚たちが

そこに幽閉されて、ほとんどの魚が何も気づかずにそこで一生を過ごす。

彼女は「綺麗」だと目を輝かせて言った。

僕はその言葉に吐き気がした。


「今日は家に帰ろうか。」

「君がそうしたいなら。」

その日は何もなく一人で過ごした。

一人の時は音楽を聴いたり、作詞したり。

自分の気持ちを投げ打つかのように文字を連ねる。


とうとう彼女は来なくなった。

彼女は何も言わずに帰っていく。

僕は声をかける。

「どこにも行かないの?」

「好きな人ができた。」

僕は悲しかった。だけど壊れたことのある心だ。

すぐに感情を消すことができる。

ほんの一瞬でなぜ悲しいのかわからなくなった。

「好きじゃなかったの?」

「好きじゃなかったよ、一人だったから。」

それは月だった。その言葉は月を表していた。

月に振られてしまった。

僕には何もなくなってしまった。


「あー…そっか。」

僕は笑えてない笑顔を見せながら答えた。

すぐに帰る彼女は新月かと思った。

明日になればまた現れると信じていた。

来る日も来る日も信じては現れることはなかった。


僕は太陽と月が同時に出る日、新月の日に僕は自ら命を尽きた。

そこに彼女が顔を出し。

僕は聞こえない心の音を響かせた。





















この世の中は作られた自由でできている。

きれいごとはきれいごと、でもそんな世界でも生きていたら

なにかあるかも。そんな気持ちで頑張ってみましょう。みんなで頑張ろう。


作中の言葉に気を付けて書きました、

いろいろ考えながらもう一度読んでみてください

とらえ方変わるかもです、。

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― 新着の感想 ―
[一言] 作中の言葉の使い方が非常に繊細で、印象的でした。 主人公の未来は喪われてしまったのでしょうか。 唯一の光が離れてしまったことの哀しみは理解しつつも、真花の気持ちも十分に理解できるので、なんと…
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